14日の米株式市場でNYダウは続落し、165ドル安となった。金融大手ゴールドマン・サックスの市場予想を上回る決算が好感されたものの、民主党のペロシ下院議長と協議を継続しているムニューシン財務長官が追加経済対策の大統領選前の合意成立は困難との見方を示すと下落に転じた。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで78円安からスタート。ただ前日までと同様、これから国内でも発表が本格化する企業決算、それに米政治情勢などを見極めたいとのムードが強く、寄り付き後は23500円台でもみ合う展開が続いた。この日の安値圏で前場を折り返しているが、ここまでの上下の値幅は67円弱にとどまった。
個別では、ソフトバンクG<9984>とエムスリー<2413>が2%前後の下落となっており、ZHD<4689>は3%超下落するなど、値がさグロース(成長)株を中心に軟調。その他売買代金上位では任天堂<7974>、東エレク<8035>などがさえない。決算発表銘柄ではサイゼリヤ<7581>が今期の連続赤字見通しを受けて急落。また、トランザク<7818>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、前日は携帯電話料金の新プランを受けて売り優勢だったソフトバンク<9434>が反発。ファーストリテ<9983>は小幅ながらプラスで前場を折り返した。官民5行で4000億円の融資を行うと報じられたANA
<9202>は買い優勢。また、S Foods<2292>やJESHD<6544>は決算が好感されて急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、医薬品、精密機器、水産・農林業などが下落率上位。半面、空運業、鉄鋼、保険業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は28%となっている。
追加経済対策の早期成立期待が後退したことで前日の米国株は続落し、本日の東京市場でもやや売りが先行する展開となった。やはり与野党両陣営の候補が激しく対立する大統領選を前に、協調的な動きはなかなか期待しにくいのかもしれない。米国では金融大手などから決算発表が本格化しており、その内容を見極めたいとのムードもあって、NYダウの上昇は9月3日の取引時間中に付けた直近の戻り高値29199.35ドルを前に一服といった様相だ。海外情勢を巡っては、欧州で新型コロナウイルスの感染拡大と規制再強化の動きが相次いていることも気掛かりではある。
国内でも6-8月期決算の発表が最終盤に入ったが、先に発表された小売り大手の決算がコロナ禍からの回復を期待させる内容だったのに対し、前日発表の外食各社はサイゼリヤを中心に回復の鈍さが意識される内容となった。今月下旬から発表が本格化する7-9月期決算もセクターや個別企業で明暗が分かれるだろうことを窺わせる。
しかし、日米株ともさほど大きく売り込まれているわけでない。米大統領選及び議会選を民主党が制する「トリプルブルー」で、将来的には大規模な財政出動が実施されるとの期待は持続しているようだ。それに日経平均はNYダウに比べ値動きが小さく、高値圏でこう着といった様相だが、やはり日銀による上場投資信託(ETF)買い入れの影響が大きいだろう。前日は9月29日以来、およそ半月ぶりに日銀のETF買いが実施され、海外勢の東証株価指数(TOPIX)先物売りを吸収する格好となった。金額が前回の801億円から701億円に減額されたのはやや気になるが、現物株・先物とも様子見ムードから売買低調となっているだけに、相場の押し上げ効果は小さくない。本日もここまでの東証1部売買代金は8000億円半ばにとどまっている。
本日はTOPIXが0.47%の下落で前場を折り返しているため、ETF買いが実施されるかは見通しづらく、後場やや下げ幅を広げる場面が出てくるかもしれない。それでも積極的に売り込もうとする動きは出てきにくいだろう。従来当欄で予想しているとおり、日経平均はまだまだ高値もち合いが続くとみておきたい。
一方、新興市場では前日にマザーズ指数が2018年1月の直近高値を上回り、06年以来およそ14年ぶりの高値を付けた。さすがに本日は達成感もあって反落しているが、朝方の売りが一巡した後は下げ渋っている。業績上方修正を発表したラクス<3923>が朝方に上場来高値を付けてから伸び悩んでいるところを見ると、先行して株価上昇してきたマザーズ銘柄が目先の成長期待を織り込み済みという指摘は正しい。しかし、GMO−FG<4051>やGA TECH<3491>が大きく値を飛ばしており、政策期待や個別材料を手掛かりとした新興株物色はなお活発だ。
最近、筆者のところには各種メディアから新興株企画での取材・寄稿依頼が相次いでおり、個人投資家の新興株への期待の強さ、また投資家のすそ野の広がりを実感できる。一方、証券各社からは「過去の推移からみてマザーズ指数の上昇は続かない」との見方が出ており、ラクスのような先行上昇組についても、前述の企画のような場でご一緒する市場関係者はおおむね「上値余地が乏しい」との見方で一致している。
こうした市場の評価は全く無視できるものではないし、筆者も一部で実態からかけ離れた盛り上がりが見られることは認める。しかし、ラクスのようなマザーズ主力級の銘柄は株価上昇すべくして上昇してきたのであり、短期的あるいは中長期的に投資魅力が減退したとも思わない。特に「時間を味方にできる」個人投資家にとってはそうだろう。長くなってきたので、このあたりの説明はまた次回以降としたい。
(小林大純)
<NH>
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