―主要企業が相次いで過去最高益更新を計画、単価上昇×数量増で事業規模もサイズアップ―
食品株の業績面での強いモメンタムに投資家の関心が集まっている。原材料高に苦しむ局面から一転、今期は値上げ効果を発揮する企業が多く、経済活動の正常化も相まって、外食向けを含む販売数量の回復が見込まれている。日本の食品・食材への海外需要も一段と高まっている。「食べ頃」が到来した 食品関連6銘柄をピックアップしていく。
●4月CPI、食料は8.4%上昇
企業業績と株価は、物価変動の影響を考慮した「実質」ではなく「名目」ベースだ。物価が上昇したとしても、一定の利幅を乗せて販売価格に転嫁し、販売数量を維持すれば、企業収益と株価は底上げされる。
あらゆるモノやサービスの価格が上昇する今、とりわけ目を引くのが、食品価格だ。総務省が公表した4月の消費者物価指数は、総合が前年同月比3.5%、生鮮食品を除くコアは同3.4%の上昇となった。内訳をみると「食料」の上昇率は8.4%。更に細かくみると、鶏卵は33.7%、ハンバーガー(外食)は18.2%、生鮮魚介の「さけ」は24.4%と、高騰ぶりが際立っている。
直近の食品価格の高騰は、多くが原材料価格や人件費、光熱費といった企業のコスト負担分を製品価格に転嫁する「コストプッシュ」型の上昇だ。需要の拡大を受けて上昇する「デマンドプル」型と異なり、ある程度の期間を経て沈静化に向かうとされている。そうはいっても、国内では今のところ値上げラッシュに終止符が打たれる気配はない。
●味の素とニチレイは過去最高益の計画
東京商工リサーチが主要飲料・食品メーカー200社を対象に実施した調査によると、今年1月以降の出荷・納品分の製品の値上げを公表した企業は150社(前回分の3月調査は141社)。対象品目数は2万1998品と前回調査から3667品増えた。6月は51社が3886品の値上げを公表しているという。この調査は4月25日までの発表分をもとにまとめたものであり、実際はこれよりも品目数は多くなる可能性が高い。個別の商品レベルで値上げの程度に違いがあるのは確かだが、食品全体での値上げとなれば、消費者はどうしても受け入れざるを得ない。
当然ながら、値上げがもたらす業績浮揚力は大きい。食品セクターの主要企業に目を転じると、24年3月期は味の素 <2802> [東証P]が最終利益で、ニチレイ <2871> [東証P]は経常利益で過去最高を更新する見通しだ。山崎製パン <2212> [東証P]も前期比2割の最終増益を見込む。味の素は「クノールカップスープ」など、ニチレイは家庭用冷凍食品のほぼ全品、山パンは食パン「超芳醇」などについて、それぞれ値上げを実施、または表明をしている。
●日本の食品・食材は海外で成長余地
和食の「国際化」もトップライン(売上高)の伸びに寄与する要因として無視できない。農林水産省によると、2022年の農林水産物・食品の輸出額は前年比14.3%増の1兆4148億円となり、過去最高を記録した。円安による価格競争力の上昇に加え、海外での日本食レストランの増加も輸出拡大に寄与したようだ。
回転ずし大手のFOOD & LIFE COMPANIES <3563> [東証P]の場合、海外の「スシロー」事業の売上収益は、23年9月期第2四半期累計(22年10月~23年3月)で全体の2割を占めるまでに成長した。外食企業の海外事業の拡大は、国内の食品メーカーの業績にも恩恵をもたらすはずだ。
もっとも、食品関連の代表格となるアサヒグループホールディングス <2502> [東証P]や味の素の株価は年初から3割を超える上昇となり、すでに高値圏に位置する銘柄も散見される。照準を定めるとするなら、比較的出遅れ感があり、かつ今期以降の業績拡大に期待が持てる銘柄となるだろう。これらの観点で投資妙味のある銘柄を選別していく。
●投資妙味の食品関連6銘柄
◎東洋水産 <2875> [東証P]
即席めん大手で24年3月期の売上高は前期比6.9%増の4660億円、最終利益は同25.3%増の415億円の見通しと、前期に続き過去最高の更新を見込む。けん引役は海外事業。昨年4月と10月に価格改定を行った米国・メキシコでは、顧客離れはみられず数量を順調に伸ばし、前期は大幅な増収・営業増益となった。海外の成長ポテンシャルの高さに加え、創業70周年を迎えた同社は「赤いきつね」も発売45周年となり、記念企画の実施などによる国内事業の底上げ効果が期待される。コロナ禍の局面で巣ごもり特需の期待が高まった20年7月の高値6580円を突破すれば上値余地が一段と広がるだろう。
◎亀田製菓 <2220> [東証P]
「柿の種」や「ハッピーターン」を手掛ける国内米菓最大手。23年3月期最終利益は前の期比57.2%減の18億9200万円と大幅減益だった。米連結子会社であるメアリーズゴーンクラッカーズ(MGC)の収益悪化に伴う減損損失の計上が主因。一方、MGCの再建効果が見込まれる今期の最終利益は前期比74.3%増の33億円と底入れを計画する。ロート製薬 <4527> [東証P]の副社長などを歴任したジュネジャ・レカ・ラジュ会長兼CEO(最高経営責任者)のもと、グローバル事業の拡大による成長期待は根強い。
◎やまみ <2820> [東証P]
中四国地方を地盤とする豆腐メーカーで関東圏にも商圏を拡大する。23年6月期第3四半期累計(22年7月~23年3月)の単体売上高は前年同期比15.0%増の119億9300万円、最終利益は同21.7%増の6億2900万円と大幅な増収・最終増益となった。国産大豆使用の豆腐の好調な販売のみならず、単価上昇と数量増を両立させている点は目を引く。豆腐製造業者の廃業が増加の一途をたどり、大規模事業者への集約が進んでいるのも、成長要因となっているもようだ。流通株式時価総額などで東証プライム市場の上場維持基準達成のメドが立たず、スタンダード市場への移行を発表したことが、直近の株価の上値を重くしたが、適正利益を確保しながらシェアアップを図る同社のビジネスモデルへの評価は不変と言えよう。
◎STIフードホールディングス <2932> [東証S]
セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]の「セブンプレミアム」商品など、コンビニエンスストアで販売されるおにぎりや総菜、缶詰に向けた水産加工品を手掛ける。セブン─イレブン・ジャパンの月次既存店売上高は増収基調を続けており、STIFHDの事業にも追い風が吹く状況だ。滋賀工場の建設計画の見直しに迫られながらも、23年12月期の最終利益は前期比14.3%増の11億5000万円と2期ぶりの過去最高益更新を計画。北米進出の準備などを重点施策に掲げるなど、中期的なトップラインの伸びしろも意識させる。
◎ヨシムラ・フード・ホールディングス <2884> [東証P]
同社のビジネスモデルは、食品系の中小企業をM&Aによりグループ化して成長を目指すもの。前期はシンガポールのホテル需要の回復で水産加工品の販売会社が大幅に増収となったほか、マレーシアでのホテル・飲食店向け厨房機器の販売も回復した。既存企業の成長とM&A効果により、24年2月期の売上高は前期比33.6%増の466億7900万円、営業利益は同2.3倍の15億7400万円と、過去最高を見込む。M&Aの積極展開で有利子負債が膨らんだものの、営業面でのキャッシュ創出力の強さが確認できれば、評価余地を更に広げそうだ。
◎西本Wismettacホールディングス <9260> [東証P]
日本食を中心とした食品・食材を、海外のレストランやスーパーに供給する商社事業を展開する。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから今年で10周年となる。政府は海外での日本食のPR活動を積極化しており、同社には間接的な業績押し上げ効果が期待できそうだ。23年12月期第1四半期(1-3月)の経常利益は前年同期比5.4%増の33億7000万円で、中間期の計画に対する進捗率は約65%と順調。北米地域向けの販売状況は堅調に推移しており、業績上振れシナリオが横たわる状況と言えるだろう。
株探ニュース
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