1. 2023年3月期の業績動向
日本電技<1723>の2023年3月期業績は、受注高39,064百万円(前期比14.8%増)、売上高34,308百万円(同8.3%増)、営業利益4,502百万円(同10.5%増)、経常利益4,613百万円(同11.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,167百万円(同4.5%増)と営業利益と経常利益が2ケタ増益となるなど好調で、中期経営計画の営業利益目標を1年前倒して達成した。また、期初の予想に比べて、受注高で6,564百万円、売上高で808百万円、営業利益で402百万円、経常利益で463百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で297百万円の超過達成となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益の増益率が1ケタにとどまったのは、前期に特別利益に計上した固定資産売却益がなくなったことによる。
日本経済は、世界的な金融引き締めによる海外景気の減速や物価上昇など、依然として先行き不透明な状況が続いているものの、ウィズコロナのなか各種政策の効果などにより緩やかな回復基調で推移した。建設業界は、公共投資は補正予算の効果もあって底堅く推移、民間設備投資も情報化投資や脱炭素に向けた環境対応投資などを中心に持ち直しの動きが見られた。このような環境下、同社は、空調計装関連事業の新設工事においては「全社最適方針の徹底及び既設工事に繋がる物件の受注」、空調計装関連事業の既設工事においては「エネルギー課題に則した提案型ビジネスおよびメンテナンスビジネスを両立させる事業展開」、産業システム関連事業においては「収益基盤の確立およびグループ企業と一体となった業容拡大ならびにそれを可能とする事業体制の構築」をテーマに、積極的に事業展開を推進した。コロナ禍をきっかけとする半導体など部材不足に関しては、影響が一部残ったものの、アズビルから100%仕入れる特約店というメリットを生かして設計段階から手当しているため、最小限にとどめることができた。
売上高に関して、上期は部材不足の影響から一部工期が遅延となったことで減収となり、やや厳しい展開となった。しかし、売上・利益の比重の重い下期に入って、首都圏再開発や半導体工場など大型案件の売上計上、公共施設や工場などの既設工事の確保により、上期の減収をカバーして通期では2ケタ近い増加とすることができた。受注高は、産業システム関連事業が前期の反動で減少したが、空調計装の案件が非常に好調に推移したため過去最高を記録、受注残高も過去最高となった。空調計装が好調だった要因は、首都圏再開発が予定通りに進捗したことに加え、半導体工場の新規建設や地方の都市再開発が全国的に活発化したこと、既設工事で自動制御システムの改修や省エネ提案の採用が増加したこと、データセンターや商業施設など様々な分野で案件が堅調に推移したことなどによる。
利益面では、選別受注は鋭意推進したが、採算が低い傾向のある大型案件の割合が多くなったため、売上総利益率は若干低下した。しかし、増収効果に加え、ウィズコロナにシフトするなかで経費がコロナ禍以前に戻りきらなかったことで、営業利益は前期比2ケタの伸びとなった。なお、期初計画比で超過達成となった理由は、売上高が特に下期に入ってからの空調計装の大型案件と既設工事の好調で、営業利益はそうした増収効果に加え、選別受注により新設工事における採算性の向上、コロナ禍以前の水準に販管費が戻らなかったこと、想定したほど人員を採用できなかったことなどによる。
今後に向けての課題としては、売上総利益率については、大型案件の受注採算が徐々に改善してきているものの、ゼネコンの業績が厳しく改善が一直線に進むと想定できないことから、引き続き選別受注を推進して対応していくことになると思われる。また、販管費の伸びが低かったのは、同社は人手不足がボトルネックとなっており、想定より人件費が増加しなかったためである。現状、採用状況が芳しくないが、2030年に予定している1,100人体制を考慮した場合、人員確保は是が非でも解消しなければならない課題である。これに対しては、新卒採用などでしっかり人員を確保すると同時に、本社での集合研修を充実して対応していくことで採用・教育を充実していく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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