―寿命を迎えた処理問題が急浮上、再資源化を担う各社の取り組みがカギ―
太陽光パネルの大量廃棄時代が近づいている。2012年に始まった 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)をきっかけに 太陽光発電の設置が活発化し、導入量は11年度末の531万キロワットから22年度末には7394万キロワットまで拡大した。ただ、一般的な太陽光パネルの寿命は20~30年といわれており、今後は使用済みパネルが大量に発生する見通し。多くが産業廃棄物として埋め立て処理されれば、処分場の逼迫が懸念され大量のパネルをどう処理するかが課題となっており、 リサイクルに取り組む企業への関心が高まっている。
●リサイクル義務化の議論加速
経済産業省と環境省は10月28日、太陽光パネルのリサイクル義務化を議論する有識者会合を開いた。このなかで全国解体工事業団体連合会(東京都中央区)は、太陽光発電設備の撤去・リサイクル費用についての現状や課題を説明し、太陽光パネルの設置場所や処理施設などの条件から「パネル撤去・リサイクル費用の平準化は困難と考えている」として柔軟な費用算出や不適正施工業者へのペナルティーなどを要望。また、太陽光パネルリユース・リサイクル協会(同区)は、リサイクル推進には「製造業者だけでなく、サプライヤー全体で適切に情報を共有することが必要」だと指摘した。
また、経産省が同月29日に開催した太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度の義務化に関する有識者会議では、再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(東京都港区)が実施したアンケート調査で「リサイクル義務化」の賛否について発電事業者の88%が賛成と回答した一方、リサイクルの実施状況については16%がコストを理由に断念し、64%が実質的に検討していないことが分かった。
政府は50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しており、目標を達成するためには発電時に温室効果ガスを排出しない太陽光発電の更なる拡大が欠かせず、そのためにはリサイクルの促進が不可欠。環境省の試算によると使用済み太陽光パネルの廃棄量は30年代から増加し、年間50万~80万トンに達する見込みで、各企業の取り組みがカギを握っている。
●ビジネスチャンス広がる銘柄群
AGC <5201> [東証P]は10月21日、子会社のAGCガラス・ヨーロッパが太陽光パネルのリサイクル技術を開発・保有するフランスのROSI社と戦略的パートナーシップを締結したことを明らかにした。両社による太陽光パネルからリサイクルガラスへのバリューチェーン構築により、パネル廃棄に伴う環境負荷低減だけでなく、ガラス製造におけるバージン材料の使用量節減や原燃材料使用量及び二酸化炭素(CO2)排出量の削減につなげたい考えだ。
JR九州 <9142> [東証P]とJR九州サービスサポート、三井物産 <8031> [東証P]子会社の三井物産プロジェクトソリューションは10月4日、太陽光パネルリサイクル事業実現に向けた共同検討に関する覚書を結んだと発表。「廃棄太陽光パネル排出量及び排出時期」「候補地・搬送ルート」「リサイクル設備比較検討」「処理価格、処理後有価物の売却単価」「事業性・経済性の検討」を行うとしている。
ジェリービーンズグループ <3070> [東証G]は9月5日、近畿電電輸送(大阪府寝屋川市)とサステナブル事業協業に向けた業務提携に関する基本合意書を締結したことを明らかにした。廃棄太陽光パネルの運搬回収・リユース・リサイクル事業で協業を進めるとしており、近畿電電輸送の太陽光パネルを2次製品化した商品「POROUSα」を活用した飲食店などにおける清掃委託先の紹介取り次ぎ業務や、同商品の一般ユーザー向けの共同開拓などを行うという。
TREホールディングス <9247> [東証P]は9月2日、子会社のタケエイが福島県相馬市で太陽光パネルリサイクル事業を開始すると発表した。グループ傘下の信州タケエイは既に同事業及びリユース販売事業を展開しており、グループを挙げて注力する構え。処理能力は順次拡張する予定で、30年ごろに耐用年数を迎えて大量廃棄されるとの予測や、地震や風水害といった自然災害による破損などにも対応できるように備える。
ウエストホールディングス <1407> [東証S]は8月29日、近畿電電輸送と使用済み太陽光パネルのリユース・リサイクルに係る業務委託基本契約を締結したことを明らかにした。具体的には、ウエストグループが施工した発電所や保守契約を結んでいる発電所に対して、リパワリング(太陽光発電の各種機器のアップグレードやリプレイス、新規導入などを行うことで発電能力を高めること)の需要を獲得した場合の太陽電池モジュールの破棄、自然災害による発電不良の太陽電池モジュールの廃棄などの情報を収集し、近畿電電輸送にリサイクル・リユースを委託。近畿電電輸送を一元窓口として適切なリサイクル処理を実現し、ウエストグループでは環境の負荷を抑えた資源の再利用を展開するという。
●サニックス、エヌピーシーなどにも注目
これ以外の関連銘柄としては、太陽光発電設備のデューデリジェンス事業を展開するSDSホールディングス <1711> [東証S]、太陽光パネル処理を総合的にサポートするダイセキ環境ソリューション <1712> [東証S]、鈴木商会(札幌市中央区)と北海道における使用済み太陽光パネルのリサイクル事業について連携スキーム構築の検討を図ることで基本合意書を締結しているトクヤマ <4043> [東証P]、中期経営計画で使用済み太陽光パネルのリサイクル事業参入を掲げているサニックス <4651> [東証S]、不要になった太陽光パネルをリサイクルするための中間処理サービスを提供するエヌ・ピー・シー <6255> [東証G]、テラレムグループ(東京都中央区)と使用済み太陽光パネルの適切なリユース・リサイクルにおける事業スキームの構築を含む資源循環の共同事業化に関する基本合意書を締結しているミダックホールディングス <6564> [東証P]、子会社が使用済み太陽光パネルの国内販売及び再利用を行っているオリックス <8591> [東証P]など。
加えて、23年にJFEホールディングス <5411> [東証P]グループのJ&T環境と提携し、太陽光発電の設備の設計から施工、運用メンテナンス、太陽光パネルのリサイクルまでを一貫して提供できる体制を構築しているJESCOホールディングス <1434> [東証S]にも注目したい。
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