―地上侵攻巡り強弱観が対立、「有事の金」は再び史上最高値更新へと輝き増すか―
24日の東京株式市場は日経平均株価が一時400円を超す急落となった。ニデック <6594> [東証P]の決算を嫌気する売りなどが膨らみ3万500円台まで売られる場面があった。しかし、下値には買いが入り結局、前日比62円高で取引を終えた。決算動向とともに、市場の関心を集めているのが中東情勢だ。イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突を背景に、リスクオフムードが浮上。原油価格が上昇し、安全資産の金も買いを集めている。市場には「イスラエルとハマスの衝突が更に激化すれば、原油・金相場は一段高に向かう」との観測は根強い。その一方、足もとでは緊張緩和に向けた動きも浮上しており、市場には強弱観も対立している。中東情勢緊迫化を背景にした原油・金相場の行方を探った。
●原油価格は一時90ドル台に上昇、中東産油国への飛び火を警戒
原油相場は荒い値動きとなっている。9月にはサウジアラビアとロシアの減産を背景にした需給逼迫観測で米原油先物相場はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で一時1バレル=95ドル台まで上昇した。その後、一服場面となったが、10月に入りパレスチナのイスラム組織ハマスが、イスラエルに対する大規模な攻撃を仕掛けたことから戦闘が激化。その対立は中東情勢を緊迫化させるとの懸念を背景に原油価格は19日には再び一時90ドル台に乗せた。
市場では、イスラエルとハマスの衝突が中東の産油国に飛び火することを警戒している。イスラエルと敵対するイランが周辺のイスラム諸国にイスラエルに対する石油禁輸制裁を呼び掛けたことも警戒感を強めさせた。とりわけ、イスラエル軍のガザ地区に対する地上侵攻は「中東情勢全体を揺るがすことにつながりかねない」(アナリスト)と懸念する声が市場には広がっている。
こうしたなか、安全資産と呼ばれる金にも資金が流入し、20日にニューヨーク先物市場で1トロイオンス=2000ドル台に上昇した。金は、2020年8月につけた最高値(2089.2ドル)にも接近している。
●米政府の仲介で情勢好転へ期待も、状況は予断許さず
その一方、米政府はイスラエルに対してガザ地区への地上侵攻を控えるように助言しているとも23日に報道された。これを受け、中東情勢緊迫化への警戒感が後退し同日のWTI価格は85ドル台に下落。金価格も1987ドル台まで軟化した。市場には、中東情勢が落ち着くことへの期待感も浮上している。
イスラエルとハマスの紛争は過去にも発生している。ただ、今回の衝突による被害は最大級だ。その背景には、ガザ地区住民の困窮やイスラエルのネタニヤフ政権の右傾化など複数の要因が絡まっているとみられる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「イスラエルとハマスの抗争を含め、いまの中東情勢は過去にたまった膿(うみ)が噴出している状態。不透明要因は多いものの、状況は深刻であまり楽観視することはできない」と警戒感を示す。
●中東情勢の緊迫度示す金価格動向
やはり大きなポイントはイスラエル軍の本格的な地上侵攻があるかどうかだ。地上侵攻があった場合、レバノンの親イラン組織ヒズボラとイスラエルによる戦闘の激化なども予想されるなか、対イラン制裁を強化する動きも起こり得る。それだけに「原油価格は100ドルを再び目指すような動きとなってもおかしくない」と芥田氏は指摘する。
また、「中東情勢の緊迫度を示しているのは原油より金価格かもしれない」と同氏は言う。原油相場は中国の景気低迷によって価格が押し下げられている面がある。その一方、金価格は金利上昇・ドル高という本来なら金にとって逆風となる状況のもとで最高値に迫る水準まで値を上げている。足もとでは、「有事の金」に対する需要は高まっているというわけだ。中東情勢がより緊迫化した場合、金価格は2100~2200ドルに上昇する事態もあり得そうだ。
●中東リスクは根強く下落局面は買い場に
「イスラエル軍の地上侵攻が回避できるか否かは、遠からず判明するのではないか」(市場関係者)ともみられている。もし地上侵攻が回避されれば、原油や金価格は下落することが予想される。INPEX <1605> [東証P]や石油資源開発 <1662> [東証P]といった石油株、SPDRゴールド・シェア <1326> [東証E]や純金上場信託(現物国内保管型) <1540> [東証E]といった金ETFなどはいったん売りも見込まれる。その一方、リスク資産である株式は上昇しそうだ。
ただ、中東リスクは根強く残ることも予想されるだけに、INPEXやSPDRなどの一服場面は格好の拾い場となることも見込まれる。
株探ニュース
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