【日銀追加利上げ決定】タカ派姿勢と「政府備蓄米放出」の点と線
日銀は24日まで開いた金融政策決定会合で、0.25%の追加利上げを決めた。政策金利は0.5%となり、2008年以来およそ17年ぶりの高水準となる。利上げそのものは事前報道通りの結果となったが、25年度の物価見通しの引き上げ幅から、多くの投資家は日銀がタカ派的な姿勢を示したと受け止めた。そして、この決定に先立つ形で江藤拓農相が政府備蓄米の放出に向け準備に乗り出す意向を示した。「令和のコメ騒動」の影響が加わるインフレ圧力を放置すれば、国内景気はもちろん、政権基盤が揺らぎかねず、マーケット環境に暗い影を落とすこととなる。2つの事象のタイミングは偶然なのか、それとも必然なのか。
●観測報道通りでも日経平均は荒い動きに
同日の日経平均株価は、日銀の追加利上げがアナウンスされた後、4万0200円台後半まで上げ幅を拡大したものの、後場中盤以降に売りの勢いが強まって小幅安で終了した。債券市場で長期金利は一時1.235%に上昇。ドル円相場は1ドル=154円台まで円高方向に振れる場面があった。個別銘柄の動きをみると、三井不動産<8801.T>など不動産株は朝高後に伸び悩み、メガバンクは三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>が前日比変わらず。引け後の植田総裁の記者会見を見極めたいというムードが次第に強まるなかで、金融株に関しては方向感が定まらなかった。
これに対し東証グロース市場250指数は2.5%を超す上昇となった。「米国株の上昇により投資家のリスク許容度が回復するなか、グロース指数は相対的に出遅れており、25日移動平均線などチャート上の節目を上抜けたことで買い戻しが一段と強まった」(中堅証券アナリスト)との指摘があり、朝方から強い動きとなっていた。
日銀が声明文と同時に公表した経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、昨年10月時点の予測と比較して、政策委員の経済成長率見通しの中央値に大きな変化はみられず、25年度はプラス1.1%で据え置かれた。半面、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の見通しは引き上げられ、25年度はこれまでのプラス1.9%から、プラス2.4%に大幅に引き上げられた。円安に伴う輸入物価の上振れに加えて、コメ価格の上昇の影響が反映される形となった。展望レポートから日銀のタカ派姿勢を感じ取った投資家の存在が、円買いを後押し、日経平均の上値を抑える形となった。
●「コメ価格」の評価には難しさも
日銀は政策金利変更後も「実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持される」と声明文で表明し、タカ派的な姿勢が強まらないように配慮した。植田総裁は記者会見で、今後の政策判断は「経済・金融情勢次第」としたうえで、物価の見通しについては今年の半ば以降は「落ち着いてくる」との見解を示している。
マーケットの最大の関心事は、0.25%の利上げ後の、追加利上げのペースである。ここにトランプ米政権の関税政策などの海外要因や、それに呼応するドル円相場の水準が大きく関わってくるのは間違いないだろう。日本側では制御できない部分である。国内要因はどうか。賃上げのモメンタムなどが該当するが、そのなかに物価を左右する要素としてコメ価格という変数が存在することをどう評価すべきか、難しい面がある。
偶然にも政府サイドは24日、備蓄米放出に向けたポーズを示した。しかしよくよく考えると、昨年にコメが「大不作」だったというわけではない。作付面積の減少に伴うコメの供給量の減少が根本的な要因との指摘もある。戦後の農業政策を含めた構造的な問題が存在するのであれば、そこに手を付けない限り、コメ価格に上昇圧力が掛かり続けることとなり、備蓄米放出の効果は一時的なものになりかねない。もっとも、農政に関しては日銀マターではなく、政府の対応に委ねるしかない。
日銀は法律で独立性が定められながらも、特に政府からの圧力にさらされることとなる。ある意味で理不尽な立場にあるが、1月以降の追加利上げの市場への織り込み方には舌を巻くものがあった。決定会合についても総括すると、株式市場を極端に冷やすことなく、うまくタカ派的な姿勢を示した、ということになるかもしれない。国内の長期金利の上昇と、トランプ大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力が続くのであれば、教科書的な発想となるが、ニトリホールディングス<9843.T>や神戸物産<3038.T>など円高メリット関連株や、金融株の今後のトレンドが注視されることとなりそうだ。(長田善行)
出所:MINKABU PRESS
●観測報道通りでも日経平均は荒い動きに
同日の日経平均株価は、日銀の追加利上げがアナウンスされた後、4万0200円台後半まで上げ幅を拡大したものの、後場中盤以降に売りの勢いが強まって小幅安で終了した。債券市場で長期金利は一時1.235%に上昇。ドル円相場は1ドル=154円台まで円高方向に振れる場面があった。個別銘柄の動きをみると、三井不動産<8801.T>など不動産株は朝高後に伸び悩み、メガバンクは三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>が前日比変わらず。引け後の植田総裁の記者会見を見極めたいというムードが次第に強まるなかで、金融株に関しては方向感が定まらなかった。
これに対し東証グロース市場250指数は2.5%を超す上昇となった。「米国株の上昇により投資家のリスク許容度が回復するなか、グロース指数は相対的に出遅れており、25日移動平均線などチャート上の節目を上抜けたことで買い戻しが一段と強まった」(中堅証券アナリスト)との指摘があり、朝方から強い動きとなっていた。
日銀が声明文と同時に公表した経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、昨年10月時点の予測と比較して、政策委員の経済成長率見通しの中央値に大きな変化はみられず、25年度はプラス1.1%で据え置かれた。半面、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の見通しは引き上げられ、25年度はこれまでのプラス1.9%から、プラス2.4%に大幅に引き上げられた。円安に伴う輸入物価の上振れに加えて、コメ価格の上昇の影響が反映される形となった。展望レポートから日銀のタカ派姿勢を感じ取った投資家の存在が、円買いを後押し、日経平均の上値を抑える形となった。
●「コメ価格」の評価には難しさも
日銀は政策金利変更後も「実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持される」と声明文で表明し、タカ派的な姿勢が強まらないように配慮した。植田総裁は記者会見で、今後の政策判断は「経済・金融情勢次第」としたうえで、物価の見通しについては今年の半ば以降は「落ち着いてくる」との見解を示している。
マーケットの最大の関心事は、0.25%の利上げ後の、追加利上げのペースである。ここにトランプ米政権の関税政策などの海外要因や、それに呼応するドル円相場の水準が大きく関わってくるのは間違いないだろう。日本側では制御できない部分である。国内要因はどうか。賃上げのモメンタムなどが該当するが、そのなかに物価を左右する要素としてコメ価格という変数が存在することをどう評価すべきか、難しい面がある。
偶然にも政府サイドは24日、備蓄米放出に向けたポーズを示した。しかしよくよく考えると、昨年にコメが「大不作」だったというわけではない。作付面積の減少に伴うコメの供給量の減少が根本的な要因との指摘もある。戦後の農業政策を含めた構造的な問題が存在するのであれば、そこに手を付けない限り、コメ価格に上昇圧力が掛かり続けることとなり、備蓄米放出の効果は一時的なものになりかねない。もっとも、農政に関しては日銀マターではなく、政府の対応に委ねるしかない。
日銀は法律で独立性が定められながらも、特に政府からの圧力にさらされることとなる。ある意味で理不尽な立場にあるが、1月以降の追加利上げの市場への織り込み方には舌を巻くものがあった。決定会合についても総括すると、株式市場を極端に冷やすことなく、うまくタカ派的な姿勢を示した、ということになるかもしれない。国内の長期金利の上昇と、トランプ大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力が続くのであれば、教科書的な発想となるが、ニトリホールディングス<9843.T>や神戸物産<3038.T>など円高メリット関連株や、金融株の今後のトレンドが注視されることとなりそうだ。(長田善行)
出所:MINKABU PRESS
この銘柄の最新ニュース
日経平均のニュース一覧- 来週の株式相場に向けて=FOMCとトランプ株高相場を睨む展開に 2025/01/24
- 東京株式(大引け)=26円安と小幅に5日ぶり反落、日銀利上げで後場値を消す 2025/01/24
- 東京株式(後場寄り付き)=日経平均株価は上昇幅拡大 2025/01/24
- 東京株式(前引け)=前日比233円高、米株高受け4万円台で推移 2025/01/24
- 東京株式(寄り付き)=続伸、NYダウ上昇で4万円乗せスタート 2025/01/24
#日銀 の最新ニュース
マーケットニュース
おすすめ条件でスクリーニング
日経平均株価の株価を予想してみませんか?
ネット証券比較
みんかぶおすすめ
\ 投資・お金について学ぶ入門サイト /