「悪い経済指標で株高へ」
日経平均の日足チャートでは、上ひげが出現。上値の重さを示しており、戻り売り圧力の強さを示唆している。ただ、強弱の判断ポイントとなる前回の窓(20425.69円-20443.89円)を下回っておらず、強気相場が継続していることを意味している。
株価が下落したとはいえ、比較的底固い動きとなっているのは、来週の政策期待もあるのだろう。月曜日には4-6月期のGDP速報値が発表され、これがかなり悪いとの見方が浮上しているのだ。前期比年率でマイナス2%もありうる状況となっており、日本経済の落ち込みが鮮明になりそう。政府関係者からは「マイナス成長ならば補正予算も」との声が聞こえており、そのような期待からゼネコン株がしっかりしている経緯がある。「経済が悪くて株価が上昇」――そういう質の悪い相場展開になっているのだ。
もちろん、補正予算にとどまらない可能性がある。日銀が追加金融緩和に踏み切るとの観測が高まる可能性があり、それも相場を下支えしそうだ。そもそも日銀は「通貨・物価の番人」であって、景気や経済成長の番人ではない。だから、「GDP速報値をみて、日銀が動く」というのはお門違いなわけだが、投資家たちは「政府=日銀」のように見ている。日銀総裁が安倍政権の申し子ということもあり、同一視しているのだ。
だが、実際にはいくら「異次元緩和」を実施しても、景気は浮上しない。なぜなのか。それは銀行システムが不完全だからだ。日銀が金融緩和すれば、当然そのお金は銀行に流れる。そしてそのお金が国民へと行き渡るはずなのだが、実際には庶民の手元に届いていない。融資を受けられるのは経営が盤石な大企業が中心であり、その大企業はといえば、過剰なほどの手元流動性を抱えている。必要な人にお金が届いておらず、どこかで眠っているのだ。
同時に、過度な金融緩和は、為替を円安にシフトさせている。それが輸入物価の上昇へとつながり、必ずしも国民の利益になっていない。確かに輸出企業は儲かる。でも、それ以上に円安による輸入コストが大きく、国益としてはマイナスとなっているのだ。だから、景気は良くならないし、物価もそれほど上がらない。内需に積極的に働きかける政策をしておらず、それが景気停滞の要因になっているのだ。
悪い言い方をすれば、株高が安倍政権の支持率上昇に使われただけである。その結果、原発が再稼動され、安保法案が成立しそうになっている。将来、株高のツケを必ず払うときがくるはずであり、その足音は着実に近づいている。安倍首相のおなかが再び緩み出したら、株価は即座にネガティブな反応をしめすだろう。