市場に“恐怖の足音”が近づいている
ただ、昨日もそうであったが、安値圏では根強い押し目買いが優勢。3月末の配当・優待取り狙いの買いが期待できるほか、株価が下落すれば、日銀がすかさずETFを買ってくる。そういった安心感が市場には漂っており、簡単に下落する環境にはない。3月末を意識したドレッシング買いも期待でき、もみ合いスタート後は相変わらずしっかりとした値動きとなるだろう。場合によっては昨年来高値を更新するかもしれない。
そのようななか、本日の日経新聞では「日銀保有の株式時価が10兆円を超えた」と報じられた。いわゆる買い付け単価である「簿価」は5.7兆円ということだから、この株高で実に4.3兆円も儲かっていることになる。一見、このニュースは「日銀が儲かっているのだから、いいことじゃないか」と思われがちだが、「そもそも論」で考えてほしい。日銀は「日本円」の通貨発行権を有しており、その円の裏側にあるのが、この株式(主にETF)ということになるわけだ。本来ならば円という我々日本人にとって交換・貯蓄などに使われる“絶対的な存在”が、「株価の値動きに影響を受けている」ということであり、これが健全であるわけがない。にもかかわらず、日銀は株価が下落すると、毎日のようにせっせせっせとETFを買っている。日銀が国債を年80兆円のペースで買っていることと比較すれば“微々たる額”だが、日銀の執拗な資産購入は着実に自身の健全性・信頼性を損ねている。秋には日本郵政が上場すると言われており、国債を保有するいわゆる「国のオーナー」の環境が変化する。上場を機に国債保有比率が低下すれば、国債下落を引き起こし、日銀の財務体質にも少なからずとも影響を与えることになる。今のアベノミクスが“日銀頼み”となっているなか、その日銀へ信頼が徐々に揺らいでいるのだ。市場に“恐怖の足音”が近づいていると言えよう。