「キプロス問題を楽観視、上方の窓埋め」
ただ、日経平均の日足チャートでは、上方の窓(12522.05円―12586.06円)を単に埋めただけ。「窓理論」の法則2の売りのパターンであり、弱気形状に変化はない。依然として12650円付近にファンダメンタルズの壁(割高の壁)が存在している可能性があり、これが上値を抑えるかもしれない。
マーケットはかなり楽観的なムードに傾いている。「キプロス問題が合意」と伝えられたことで、安心感が広がっているからだ。「もともと経済規模が小さく、影響は限定的」とみられていただけに、予想通りの結果になってひと安心といった感じだ。
だが、このキプロス問題。「完全に決着した」とみるのは時期尚早だろう。なぜならば、大口預金者のカット率が40%にも達する可能性があり、預金者からの猛反発が予想されるからだ。特にロシアからの資金流入が多く、ロシア政府の対応が気になるところ。「キプロス市民の預金は保護し、ロシア富裕層には課税」という方針が、うまく行くとも思えないのだ。今後も紆余曲折が予想され、決着には一定の時間を要するだろう。
そして今回の「預金課税」という対応も、禍根を残すことになりそうだ。「他のユーロ導入国でも同様の措置がとられる」という連想が働けば、南欧諸国からの預金流出のきっかけになりかねないからだ。今は平静を保っているイタリア、スペインなどで預金引き出しが加速すれば、取り付け騒ぎが大きくなる。そういった大きなリスクを抱えることになり、そのような意味でユーロ圏は「良からぬ前例」を作ったと言えよう。
もちろんこういったユーロ圏の混乱はシナリオ通りの内容。ユーロ圏を強固にするための準備運動みたいなものだ。将来的な「世界統一通貨」に向けて、ユーロは着実に歩みを続けている。ユーロはその準備通貨のひとつであり、結束することはあれど、基本的に崩壊はあり得ない。そういった“眼”でユーロを見る必要がありそうだ。本当にヤバイのはドルの方である。ドルは最終的に崩壊する通貨であり、その崩壊を避けるために米国は延命措置を続けている。日本の安倍政権はそのドル延命に協力しているのだ。TPP参加はその一例であり、近い将来、米覇権維持のために戦争をさせられるかもしれない。そのためにはどうしても憲法改正が必要であり、7月の参院選で3分の2の議席を確保しなければならない。アベノミクスはまさにそのためのエサなのである。
週末の世論調査では、安倍内閣の支持率が69.6%と非常に高かった。民度の低いB層が景気回復ムードや株高に浮かれており、その後の副作用を一切気にしていないということだろう。参院選までバブルが継続すれば、自公が勝利し、憲法改正が実現する。同時に消費税増税が確定的となり、安倍政権は国民に対してキバを剥くことになるのだ。このとき政策がアメからムチへと劇的に変化するのである。投資家は相当、覚悟しておいた方が良い。