*10:21JST 神戸製鋼所:素材逆風下でも収益基盤は堅調、財務安全性指標は中計前倒し達成視野
神戸製鋼所<5406>は、1905年創業の大手複合メーカーであり、鉄鋼やアルミ・銅、溶接などの素材系事業、建設機械・産業機械・エンジニアリングを担う機械系事業、さらに電力事業を展開する点に大きな特徴がある。国内鉄鋼大手の中では規模よりも高付加価値分野に軸足を置き、「線条の神戸製鋼所」と称されるように、自動車向けばね鋼線などの線材分野で高い競争力を有する。また、鉄道車両用アルミ形材では国内トップシェアを持ち、輸送機器向け素材に強みを発揮している。
2026年3月期第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高1兆1,814億円(前年同期比5.4%減)、営業利益625億円(同19.5%減)と前年比で減収減益となった。主因は素材系事業を取り巻く市況悪化であり、加えて鉄鉱石価格下落等に伴う在庫評価影響が約105億円のマイナスとして表面化した。もっとも、この在庫評価損は総平均法による一時的な要因であり、原料価格がさらに大きく下落しない限り、来期以降に同程度の悪化が継続する可能性は低いとしている。電力事業については燃料費調整の時期ずれによる増益影響の剥落により前年比減益となったものの、事業自体の収益安定性は維持されている。
為替影響について、機械系事業は海外向け比率が高く円安により競争力が高まる一方、鉄鋼事業では輸入超過構造であるため、短期的には円安がマイナスに作用する局面がある。ただし、顧客との紐付き取引の比率が高い同社は、原材料を含む為替の変動を顧客に転嫁する仕組みがある他、ウェイトの大きい自動車メーカーの収益環境が良好な局面では固定費上昇分の価格転嫁の交渉余地もある。原材料価格についても期ずれは避けられないが吸収可能との認識を示している。
通期では2026年3月期の売上高2兆4,650億円(前期比3.5%減)、営業利益1,300億円(同18.1%減)を見込む。足元の進捗を見る限り、計画に対して大きな乖離はなく、下期では在庫評価影響はあるが堅調な業績見通しだ。ROICは5%程度を見込むが、中期経営計画で掲げる自己資本比率等の安全性指標は1年前倒しでの達成が視野に入る水準で推移している。需要環境では、自動車向けは主要顧客である日系自動車メーカーの動向を注視していく必要があるが造船分野は政策面での後押しを背景に回復期待があり、航空機向けは引き続き需要拡大が見込まれる。IT・半導体関連は緩やかな回復局面にあり、今後の改善が期待される。
中期経営計画(2024~2026年度)において、素材系事業では「稼ぐ力の強化」、機械系事業では「成長追求」を掲げている。素材系では国内需要の縮小を前提に、東南アジアなど成長市場での地産地消モデルを検討するほか、アルミ板事業では中国鉄鋼最大手グループ傘下の宝武アルミとの合弁会社を通じて中国市場への足掛かりを整えた。設立初年度のため立ち上げコストが先行するが来期以降の収益拡大を視野に入れ、将来の収益の柱とする構想だ。また、機械系事業では米国の100%子会社であるMidrex社がCO2排出を抑制できる直接還元鉄技術において世界トップクラスのシェアを持つ。脱炭素投資は一時的に減速傾向にあるが、中長期的には再び加速する可能性が高く、この技術は同社の重要な成長ドライバーと位置付けられる。
株主還元については、23年度に配当性向を従来の15~25%から30%程度へ引き上げた。2026年3月期の年間配当は80円(配当利回りは約4.0%)を予定しており、前期の100円からは減配となるものの、大規模投資を控える中で財務体質の強化と株主還元のバランスを重視する姿勢がうかがえる。電力事業による安定キャッシュ創出を背景に、将来的な還元余地も残されている。
総じて同社は、短期的には素材市況の逆風を受けているものの、機械系事業と電力事業が収益の下支えとなり、構造的な赤字リスクは低下している。高付加価値素材への集中、機械系事業の成長、安定的な株主還元を組み合わせた中長期視点での再評価余地に注目したい。
<NH>
2026年3月期第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高1兆1,814億円(前年同期比5.4%減)、営業利益625億円(同19.5%減)と前年比で減収減益となった。主因は素材系事業を取り巻く市況悪化であり、加えて鉄鉱石価格下落等に伴う在庫評価影響が約105億円のマイナスとして表面化した。もっとも、この在庫評価損は総平均法による一時的な要因であり、原料価格がさらに大きく下落しない限り、来期以降に同程度の悪化が継続する可能性は低いとしている。電力事業については燃料費調整の時期ずれによる増益影響の剥落により前年比減益となったものの、事業自体の収益安定性は維持されている。
為替影響について、機械系事業は海外向け比率が高く円安により競争力が高まる一方、鉄鋼事業では輸入超過構造であるため、短期的には円安がマイナスに作用する局面がある。ただし、顧客との紐付き取引の比率が高い同社は、原材料を含む為替の変動を顧客に転嫁する仕組みがある他、ウェイトの大きい自動車メーカーの収益環境が良好な局面では固定費上昇分の価格転嫁の交渉余地もある。原材料価格についても期ずれは避けられないが吸収可能との認識を示している。
通期では2026年3月期の売上高2兆4,650億円(前期比3.5%減)、営業利益1,300億円(同18.1%減)を見込む。足元の進捗を見る限り、計画に対して大きな乖離はなく、下期では在庫評価影響はあるが堅調な業績見通しだ。ROICは5%程度を見込むが、中期経営計画で掲げる自己資本比率等の安全性指標は1年前倒しでの達成が視野に入る水準で推移している。需要環境では、自動車向けは主要顧客である日系自動車メーカーの動向を注視していく必要があるが造船分野は政策面での後押しを背景に回復期待があり、航空機向けは引き続き需要拡大が見込まれる。IT・半導体関連は緩やかな回復局面にあり、今後の改善が期待される。
中期経営計画(2024~2026年度)において、素材系事業では「稼ぐ力の強化」、機械系事業では「成長追求」を掲げている。素材系では国内需要の縮小を前提に、東南アジアなど成長市場での地産地消モデルを検討するほか、アルミ板事業では中国鉄鋼最大手グループ傘下の宝武アルミとの合弁会社を通じて中国市場への足掛かりを整えた。設立初年度のため立ち上げコストが先行するが来期以降の収益拡大を視野に入れ、将来の収益の柱とする構想だ。また、機械系事業では米国の100%子会社であるMidrex社がCO2排出を抑制できる直接還元鉄技術において世界トップクラスのシェアを持つ。脱炭素投資は一時的に減速傾向にあるが、中長期的には再び加速する可能性が高く、この技術は同社の重要な成長ドライバーと位置付けられる。
株主還元については、23年度に配当性向を従来の15~25%から30%程度へ引き上げた。2026年3月期の年間配当は80円(配当利回りは約4.0%)を予定しており、前期の100円からは減配となるものの、大規模投資を控える中で財務体質の強化と株主還元のバランスを重視する姿勢がうかがえる。電力事業による安定キャッシュ創出を背景に、将来的な還元余地も残されている。
総じて同社は、短期的には素材市況の逆風を受けているものの、機械系事業と電力事業が収益の下支えとなり、構造的な赤字リスクは低下している。高付加価値素材への集中、機械系事業の成長、安定的な株主還元を組み合わせた中長期視点での再評価余地に注目したい。
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