*12:09JST テノックス Research Memo(9):第2四半期は増収大幅増益、中計は好調にスタート
■テノックス<1905>の業績動向
1. 2025年3月期第2四半期の業績動向
2025年3月期第2四半期の業績は、売上高が12,115百万円(前年同期比24.5%増)、営業利益が442百万円(同105.6%増)、経常利益が480百万円(同94.5%増)、親会社株主に帰属する中間純利益が293百万円(同50.1%増)と大幅な増収増益となった。通期予想に対する進捗率も、例年下期偏重となるのだが、売上高で48.5%、営業利益で49.8%と非常に順調だった。持続可能な100年企業を目指す中期経営計画の初年度として、順調に立ち上がったと言えよう。
日本経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などを背景に、引き続き景気は緩やかな回復基調で推移した。しかし、台風や酷暑などの天候不順、不安定な国際情勢の拡大、円安の長期化、継続的な物価上昇など、内外の経済環境の先行きは依然として不透明な状況が続いている。建設業界においては、引き続き公共投資、民間投資ともに緩やかながら増加することが見込まれ、建設需要全体としては底堅く推移している。しかし、高止まりする建設資材価格や現場従事者の慢性的な不足に加え、2024年問題(建設業における時間外労働の上限規制の強化)への対応など多くの課題を抱えた状態である。また、建設資材価格の転嫁や2024年問題による工期の長期化などを考慮すると、同社が比較的得意とするデータセンターや半導体関連工場などを除いて、実質ベースの需要は厳しいと言わざるを得ないと考える。
このような環境下、同社は中期経営計画に沿って、事業別戦略、開発戦略、環境・デジタル戦略、経営基盤の強化、資本効率経営の推進という5つの重要戦略を展開した。この結果、受注は北海道新幹線延伸事業の大型杭工事がピークアウト、リニア中央新幹線への移行期となるため減少したが、受注残高は引き続き高水準を持続した。売上高は、大型の工場や物流施設が遅延したこともあり地盤改良工事が減少したが、最盛期を迎えた北海道新幹線延伸事業や順調に立ち上がったベトナムが寄与した。利益については、土木杭工事が増えた反面好採算の地盤改良工事が減り、全般的に労務費が上昇したが、北海道新幹線延伸事業のなど土木工事の収益性改善、稼働率向上など増収効果、販管費が賃上げによる人件費増を含めておおむね想定通りに着地したことから、営業利益は大幅な増加となった。
セグメント別では、建設事業は売上高が12,041百万円(前年同期比24.5%増)、セグメント利益が520百万円(同78.7%増)となった。売上高は、工場関連や物流施設の大型の地盤改良工事が減少したものの、前期に引き続き北海道新幹線延伸事業の大型の杭工事が増加、セグメント利益は、好採算の地盤改良工事での着工時期の遅れ、全般的な労務費の上昇の影響はあったが、北海道新幹線延伸事業で先行していた費用の回収が進んだ。土木建築コンサルティング全般等事業は、道路や鉄道の解析業務の増加により売上高が60百万円(同34.3%増)となったが、労務費などの増加もあってセグメント損失は82百万円(前年同期は80百万円の損失)と例年の上期同様に損失計上となった。その他の事業は、川崎市に所有している不動産(特別養護老人ホーム)の賃貸で、額は小さいが収益は安定している。
なお、建設事業の詳細について、土木杭は、施工が最盛期を迎えた北海道新幹線延伸事業が、工期が遅れた関西の大阪湾岸道路と一段落した関東の圏央道をカバーし、大きく増収増益に貢献した。建築杭は、耐震性の高いTN-X工法が好まれる大型のデータセンターが好調で、増収増益に貢献した。地盤改良は、前上期に完工した名古屋の超大型物件の反動に加え、案件が下期に偏ったことなどにより、減収減益となった。ベトナムは、経済の底打ちを背景に工場投資が増加したこと、事業買収によって2024年7月に工事業者となったことから売上高は急増したが、工事向けに先行費用が発生したため利益は低い伸びにとどまった。
上期の好調や下期の採算改善見込みから考えると保守的な印象
2. 2025年3月期の業績見通し
中期経営計画の初年度となる2025年3月期業績について、同社は売上高25,000百万円(前期比23.7%増)、営業利益890百万円(同70.8%増)、経常利益930百万円(同66.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益650百万円(同67.5%増)と見込んでいる。第2四半期はおおむね想定範囲とのことで期初予想を変えていないが、第2四半期の進捗率が高かったことや下期の採算改善を考えるとやや保守的な印象である。
日本経済は、緩やかな回復が続くことが期待されるものの、長期化するウクライナ情勢など地政学リスクや円安による物価高騰に伴う個人消費の減速などが危惧され、先行きは依然として不透明な状況が続くと見られている。建設業界においては、公共事業は引き続き防災・減災・国土強靭化対策などを背景に底堅く推移すると見込まれる一方で、民間投資は建設資材価格や金利上昇リスクなどに対する慎重姿勢が懸念される。そのうえ、現場従事者の慢性的な不足や2024年問題などもあり、業界を取り巻く環境は厳しくなることが想定される。このような環境の下、同社は100年企業を目指したサステナビリティ経営を実現するため、引き続き中期経営計画で掲げた5つの重要戦略に取り組む方針である。
この結果、同社はセグメント別の通期売上高について、国内建設事業が23,590百万円(前期比22.2%増)、海外建設事業が910百万円(同111.2%増)、土木建築コンサルティング全般等事業が500百万円(同4.8%増)と見込んでいる。下期の売上高に関して、土木杭工事は、北海道新幹線延伸事業の施工が徐々に減少する想定となっている。建築杭工事は、耐震性からデータセンターなどの杭工事が安定的に受注できていることに加え、鋼材価格の先高観が薄れていることで全般的に受注が強まりそうだ。地盤改良工事は、大型物流施設や半導体・薬品関連工場が下期に集中しているため北海道新幹線延伸事業(土木工事)をカバーする見込みである。海外建設事業は、引き続き大型工場の施工が見込まれている。なお、基礎的な受注残高はしばらく安定した状態が続く見通しだが、足もとは高水準の受注残高から施工機械の稼働率なども高まっており、さらに受注残高を伸ばすためには施工力の拡充が必要となる。そのためにもM&Aは欠かせない戦略と言え、下期に案件が急浮上する可能性もあると考える。
一方、利益面で同社は、建設資材価格の高止まりや労務費・物流費の上昇、2024年問題による工期の長期化、2025年に向けて値上げ観測が出ているセメント価格などから収益環境を慎重に考えているようで、営業利益率は上期に比べて低下する予想となっている。しかし、適切な価格転嫁、施工機械の高い稼働率、好採算な地盤改良工事が下期に回復することによるミックスの改善、土木建築コンサルティング全般等事業の利益計上、さらに、人件費は増加するものの、PCの入れ替えコストなどがなくなるため販管費が抑制含みとなることを考慮すると、下期の営業利益率が上期に比べて低下するという予想は保守的と考えざるを得ない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2025年3月期第2四半期の業績動向
2025年3月期第2四半期の業績は、売上高が12,115百万円(前年同期比24.5%増)、営業利益が442百万円(同105.6%増)、経常利益が480百万円(同94.5%増)、親会社株主に帰属する中間純利益が293百万円(同50.1%増)と大幅な増収増益となった。通期予想に対する進捗率も、例年下期偏重となるのだが、売上高で48.5%、営業利益で49.8%と非常に順調だった。持続可能な100年企業を目指す中期経営計画の初年度として、順調に立ち上がったと言えよう。
日本経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などを背景に、引き続き景気は緩やかな回復基調で推移した。しかし、台風や酷暑などの天候不順、不安定な国際情勢の拡大、円安の長期化、継続的な物価上昇など、内外の経済環境の先行きは依然として不透明な状況が続いている。建設業界においては、引き続き公共投資、民間投資ともに緩やかながら増加することが見込まれ、建設需要全体としては底堅く推移している。しかし、高止まりする建設資材価格や現場従事者の慢性的な不足に加え、2024年問題(建設業における時間外労働の上限規制の強化)への対応など多くの課題を抱えた状態である。また、建設資材価格の転嫁や2024年問題による工期の長期化などを考慮すると、同社が比較的得意とするデータセンターや半導体関連工場などを除いて、実質ベースの需要は厳しいと言わざるを得ないと考える。
このような環境下、同社は中期経営計画に沿って、事業別戦略、開発戦略、環境・デジタル戦略、経営基盤の強化、資本効率経営の推進という5つの重要戦略を展開した。この結果、受注は北海道新幹線延伸事業の大型杭工事がピークアウト、リニア中央新幹線への移行期となるため減少したが、受注残高は引き続き高水準を持続した。売上高は、大型の工場や物流施設が遅延したこともあり地盤改良工事が減少したが、最盛期を迎えた北海道新幹線延伸事業や順調に立ち上がったベトナムが寄与した。利益については、土木杭工事が増えた反面好採算の地盤改良工事が減り、全般的に労務費が上昇したが、北海道新幹線延伸事業のなど土木工事の収益性改善、稼働率向上など増収効果、販管費が賃上げによる人件費増を含めておおむね想定通りに着地したことから、営業利益は大幅な増加となった。
セグメント別では、建設事業は売上高が12,041百万円(前年同期比24.5%増)、セグメント利益が520百万円(同78.7%増)となった。売上高は、工場関連や物流施設の大型の地盤改良工事が減少したものの、前期に引き続き北海道新幹線延伸事業の大型の杭工事が増加、セグメント利益は、好採算の地盤改良工事での着工時期の遅れ、全般的な労務費の上昇の影響はあったが、北海道新幹線延伸事業で先行していた費用の回収が進んだ。土木建築コンサルティング全般等事業は、道路や鉄道の解析業務の増加により売上高が60百万円(同34.3%増)となったが、労務費などの増加もあってセグメント損失は82百万円(前年同期は80百万円の損失)と例年の上期同様に損失計上となった。その他の事業は、川崎市に所有している不動産(特別養護老人ホーム)の賃貸で、額は小さいが収益は安定している。
なお、建設事業の詳細について、土木杭は、施工が最盛期を迎えた北海道新幹線延伸事業が、工期が遅れた関西の大阪湾岸道路と一段落した関東の圏央道をカバーし、大きく増収増益に貢献した。建築杭は、耐震性の高いTN-X工法が好まれる大型のデータセンターが好調で、増収増益に貢献した。地盤改良は、前上期に完工した名古屋の超大型物件の反動に加え、案件が下期に偏ったことなどにより、減収減益となった。ベトナムは、経済の底打ちを背景に工場投資が増加したこと、事業買収によって2024年7月に工事業者となったことから売上高は急増したが、工事向けに先行費用が発生したため利益は低い伸びにとどまった。
上期の好調や下期の採算改善見込みから考えると保守的な印象
2. 2025年3月期の業績見通し
中期経営計画の初年度となる2025年3月期業績について、同社は売上高25,000百万円(前期比23.7%増)、営業利益890百万円(同70.8%増)、経常利益930百万円(同66.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益650百万円(同67.5%増)と見込んでいる。第2四半期はおおむね想定範囲とのことで期初予想を変えていないが、第2四半期の進捗率が高かったことや下期の採算改善を考えるとやや保守的な印象である。
日本経済は、緩やかな回復が続くことが期待されるものの、長期化するウクライナ情勢など地政学リスクや円安による物価高騰に伴う個人消費の減速などが危惧され、先行きは依然として不透明な状況が続くと見られている。建設業界においては、公共事業は引き続き防災・減災・国土強靭化対策などを背景に底堅く推移すると見込まれる一方で、民間投資は建設資材価格や金利上昇リスクなどに対する慎重姿勢が懸念される。そのうえ、現場従事者の慢性的な不足や2024年問題などもあり、業界を取り巻く環境は厳しくなることが想定される。このような環境の下、同社は100年企業を目指したサステナビリティ経営を実現するため、引き続き中期経営計画で掲げた5つの重要戦略に取り組む方針である。
この結果、同社はセグメント別の通期売上高について、国内建設事業が23,590百万円(前期比22.2%増)、海外建設事業が910百万円(同111.2%増)、土木建築コンサルティング全般等事業が500百万円(同4.8%増)と見込んでいる。下期の売上高に関して、土木杭工事は、北海道新幹線延伸事業の施工が徐々に減少する想定となっている。建築杭工事は、耐震性からデータセンターなどの杭工事が安定的に受注できていることに加え、鋼材価格の先高観が薄れていることで全般的に受注が強まりそうだ。地盤改良工事は、大型物流施設や半導体・薬品関連工場が下期に集中しているため北海道新幹線延伸事業(土木工事)をカバーする見込みである。海外建設事業は、引き続き大型工場の施工が見込まれている。なお、基礎的な受注残高はしばらく安定した状態が続く見通しだが、足もとは高水準の受注残高から施工機械の稼働率なども高まっており、さらに受注残高を伸ばすためには施工力の拡充が必要となる。そのためにもM&Aは欠かせない戦略と言え、下期に案件が急浮上する可能性もあると考える。
一方、利益面で同社は、建設資材価格の高止まりや労務費・物流費の上昇、2024年問題による工期の長期化、2025年に向けて値上げ観測が出ているセメント価格などから収益環境を慎重に考えているようで、営業利益率は上期に比べて低下する予想となっている。しかし、適切な価格転嫁、施工機械の高い稼働率、好採算な地盤改良工事が下期に回復することによるミックスの改善、土木建築コンサルティング全般等事業の利益計上、さらに、人件費は増加するものの、PCの入れ替えコストなどがなくなるため販管費が抑制含みとなることを考慮すると、下期の営業利益率が上期に比べて低下するという予想は保守的と考えざるを得ない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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