・規模では勝てそうにない。AIのプラットフォーム作りで、米国の大手は圧倒的である。AIの学習のしかた、データの量、モデル化のパラメータはいずれも大規模化している。あるレベルを超えると、とんでもない能力を発揮するようになる。計算、推論、創発へ飛躍的に能力を高めていく。
・そのことは素晴らしい。人の能力を超えいくので、それをうまく使いこなせば、これまでできなかったことが、どんどんできるようになる。大いに活用して、新しいビジネスを作り、新しい生活を楽しみたいと思う。
・しかし、巨大な新産業の勃興期には、危ういことも多々発生する。不正を働くことが跋扈し、競争を制限して寡占化を図ろうとする企みが横行し、社会的価値のよしあしの前に、経済的価値のみが優先してしまうことが起こりうる。
・一方で、イノベーションの勃興期に、それを制約するだけでは発展はない。さてどうするか。なにより若い人々を中心に、AIを学ぶ機会を増やすことであろう。早く学べば、AIに対する知見が身に付いて、それを使いこなすことや、あるべき価値について判断できるようになろう。
・コンテンツについて、何がオリジナルか。どこがオリジナルか。何を盗作したか。データかアイデアか。オリジネーター・プロファイルが問われる。ここを確保しないと、価値創造が担保されない。
・計算機は電気を食う。大規模化と省電力化は並行する形で進んできたが、AIの活用によって、データセンター(DC)はますます必要になり、そのための電力需要は膨大となる。
・カーボンニュートラルと本当に両立できるのか。便利になるということは、エネルギーの消費量の拡大を伴う。電力供給の制約がAIの利用を抑えるかもしれない。ここでも、生活の質(Life of Quality)の再考が求められよう。
・SNSで、暴言、暴論、誹謗中傷など、ありえない言動が目立つ。悪気や悪意があるのか。知っている人に対してもこんな酷い言葉を使うのか、と驚くことが頻繁にある。昭和の匂いをさせて、言動の波及に気が回らない人も多い。
・発言には責任を持って、自らの出所がいざとなったら、つきとめられる覚悟を持って発信せよと言いたい。言論の自由を越えている。こういう言論の洪水をAIが学んでいく。AIに倫理観を持ってもらえればよいが、望ましい倫理観も人によって異なるので、ここも危うい。
・ハルシネーション(幻覚:尤もらしい?)やバイアス(偏見)はいたるところに発生する。何らかの意図をもてば、AIはいくらでも嘘をつける。騙すために、アテンションエコノミー(AE)を追求するのは、常套手段となる。過激な内容で注意を引き付けて、洗脳しようという行為である。
・金儲けのためには、何でもありとなりうる。暴走を防ぐ規制、ルール、ガバナンスのあり方が問われるが、常に後追いとなりかねない。我々は、AIの暴走に加担して一儲けを企むのか。信頼されるコンテンツクリエーターを目指すのか。覚悟すべきであろう。
・8月に「グローバルデジタルサミット」(日経フォーラム)で、「Sakana AI」の伊藤COOの講演を聴いた。興味深い論点をいくつか取り上げてみたい。伊藤氏は外務省に15年、その後メルカリ、英国のAIファンドを経て、3名でサカナAIを立ち上げた。
・2022年が生成AIの元年、2023年にはオープンAIでなくても、生成AIが使えるという動きが出てきた。そこで、サカナAIは、2023年に生成AIのスタンダードに挑戦することにした。LLM(大規模言語モデル)をベースに、ビックデータ(BD)の規模が働く方式に対して、それは本当かと問いかけた。
・BDをつぎ込んだもの勝ちか。Bigger than betterではなく、やたらデータの量に頼らなくても、生成AIのパフォーマンスを上げられるのではないか、と考えた。
・そこで、2024年に生成AIの進化系モデルに開発した。大規模でなくても、生成AIを作れるということを証明し、これが今年のトレンドとなった。
・生成AIのモデルを一から作る必要はない。オープンソースとして、さまざまなモデルを構成する。このモデル化に、ヒトの判断は入れないのがポイントである。
・とりあえず混ぜて、その中のいいものを残す、これを第1世代とする。これを掛け合わせて、第2世代を作る。これを1000回やる。1000世代を作るのに、24時間、3000円くらいのコストでできる。このやり方が進化系である。
・では、2025年はどうなるか。今のAIの課題は何か。さらによいアプリができないか、というよりも、①LLMの制約や、②BDの活用の制約がある。OS(オペレーティングシステム)はいろいろあってよい。単なるBDではなく、自分たちが有している固有データを活かすことである。つまり、自社データが活きる新しいOSを作っていくことである。
・例えば、言語以外の画像データも利用できるようにする。個別企業のデータを、意味のある情報として利用していく。これによって、小型で省電力の変幻自在な生成AIで、世界をリードすると語った。
・米国にAIの巨人はいるが、主要国にはそれぞれのナショナルチャンピオンがいる。日本にも、日本トップのAI企業がいてよい。ソブリンAI企業として、ユニークな存在を示したいと挑戦している。
・R&Dのトレンドは、1)AIが自ら判断する(エージェント)、2)同時にトレーニングも進める(スウォーム)、3)時系列的に分析する(タイムシリーズ)、4)自ら改善する(セルフインプルービング)をモデルに組み込んでいくことにあるという。
・その中で、サカナAIは、1)プライバシーを守り、安全である(セキュア)、2)独自のAIモデルを構築する(スペシャル)、3)大規模化に伴うコストアップをさけて、サステナブルである(サステナブル)、ことを追求する。サカナAIの活躍に注目したい。
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