明日の株式相場に向けて=投資家心理を餌にするAIアルゴの衝撃波
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比775円高の3万7155円と続急伸。きょうのマーケットは想定外の円安が株式市場のトレンドを支配した。円安にリンクさせる形で先物を絡めた大型株への買いが全体を押し上げる格好となった。
世界中の耳目を集めたFOMCだったが、利下げ幅は50ベーシスポイント(0.5%)で政策金利は4.75~5.00%に設定された。0.5%か0.25%なのか、事前の見方は真っ二つに割れてはいたが、0.5%の選択肢をとった場合、FRBはなぜそれほど焦っているのか、ということに意識が向かう可能性があった。FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見というビッグイベントを通過した後に、米国株市場がなお気迷いモードで、結局NYダウ、ナスダック総合株価指数ともにマイナス圏で引けたことにもその“迷い”が反映されている。少なくとも材料出尽くしという解釈は間違いである。
0.5%を選択した根拠としては、景気判断については維持されたものの、雇用判断を下方修正したということが大きな動機となっている。そして、これについてはFRBが焦り気味に利下げ幅を広げたのではなく、パウエルFRB議長いわく「あくまで後手に回らないための予防的措置」ということを強調している。かつてのインフレ局面で「今の物価上昇は一時的現象」と強弁して引き締め策への政策転換が遅すぎたことへの反省もこめられていると思われる。一方、バランスシートの縮小、つまり量的引き締めは粛々と続ける。
年内はあと2回のFOMCを残しているが、今回を含め合計1%の利下げというのがメインシナリオだ。仮に今回0.25%の利下げであっても、11月と12月の会合いずれかで0.5%の利下げを行えば帳尻が合うことになる。したがって前倒しでアクセルをふかしただけという見方も可能だ。ただ、これはパウエル氏が意図したところではないかもしれないが、このタイミングでの大幅利下げは、11月の米大統領選に少なからぬ影響を与える。足もとの景気を金融政策面から過保護気味にケアすることは、民主党ハリス副大統領にとって有利に働く。米株市場では主要株価指数の動向はともかく、物色テーマとしては「ハリス銘柄買い・トランプ銘柄売り」という流れが形成される公算が大きい。具体的にはエネルギー・金融株には向かい風が吹く一方、脱炭素(再生可能エネルギー)や電気自動車(EV)などがテーマ性を復活させるケースが考えられ、この流れは東京市場にも波及しそうだ。
さて、フタを開けて見ないことには分からないのがイベントドリブンの世界だが、今回のFOMCの結果がマーケットに及ぼした影響については「フタを開けてみた後でも分からない」という市場関係者も首を捻るような景色に遭遇した。FRBによる0.5%の利下げ決定が開示され、その瞬間は、為替の円買いポジションを組んでいた向きは快哉を叫んだかもしれない。しかし、現実は違った。1ドル=140円台トビ台まで一気に円高に進んだのも束の間、その後は急激なアンワインドで倍返しの円安、1ドル=144円近辺まで円が売られるという想定外の展開となった。
「円安に賭けていた投資家は発表直後の円高で投げさせられたが、その後の過激な巻き戻しで今度は円高に賭けていた投資家も悲鳴を上げる格好となった」(ネット証券マーケットアナリスト)という。そして、今度は株式市場で円安とリンクさせた日経225先物への速射砲的な買いによって、日経平均が一時1000円を超える急騰を演じることになった。この一連の流れは理屈が全く追いつかず、かつ、あまりに目まぐるしく、生身の人間では到底ついて行けない。裏返せばAIアルゴリズムトレードがまさに現在のマーケットで跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している状況を物語っている。前出のアナリストいわく「直近、円買いポジションが約8年ぶりの高い水準に積み上がっており、これが狙われた。株式市場も同様で、AIアルゴは売りでも買いでもポジションが積み上がっている対象に逆方向のベクトルをかけて、揺さぶり落として利益を得るという手法が幅を利かせている」とする。個人投資家にすれば短期売買でも鉄火場に足を踏み入れない知恵が必要となる。
あすのスケジュールでは、昼ごろに日銀金融政策決定会合の結果が判明し、午後取引終了後の植田日銀総裁の記者会見に耳目が集まる。このほか、8月の全国消費者物価指数(CPI)、8月の食品スーパー売上高、8月の主要コンビニエンスストア売上高など。海外では9月の中国最優遇貸出金利、8月の英小売売上高の発表など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
世界中の耳目を集めたFOMCだったが、利下げ幅は50ベーシスポイント(0.5%)で政策金利は4.75~5.00%に設定された。0.5%か0.25%なのか、事前の見方は真っ二つに割れてはいたが、0.5%の選択肢をとった場合、FRBはなぜそれほど焦っているのか、ということに意識が向かう可能性があった。FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見というビッグイベントを通過した後に、米国株市場がなお気迷いモードで、結局NYダウ、ナスダック総合株価指数ともにマイナス圏で引けたことにもその“迷い”が反映されている。少なくとも材料出尽くしという解釈は間違いである。
0.5%を選択した根拠としては、景気判断については維持されたものの、雇用判断を下方修正したということが大きな動機となっている。そして、これについてはFRBが焦り気味に利下げ幅を広げたのではなく、パウエルFRB議長いわく「あくまで後手に回らないための予防的措置」ということを強調している。かつてのインフレ局面で「今の物価上昇は一時的現象」と強弁して引き締め策への政策転換が遅すぎたことへの反省もこめられていると思われる。一方、バランスシートの縮小、つまり量的引き締めは粛々と続ける。
年内はあと2回のFOMCを残しているが、今回を含め合計1%の利下げというのがメインシナリオだ。仮に今回0.25%の利下げであっても、11月と12月の会合いずれかで0.5%の利下げを行えば帳尻が合うことになる。したがって前倒しでアクセルをふかしただけという見方も可能だ。ただ、これはパウエル氏が意図したところではないかもしれないが、このタイミングでの大幅利下げは、11月の米大統領選に少なからぬ影響を与える。足もとの景気を金融政策面から過保護気味にケアすることは、民主党ハリス副大統領にとって有利に働く。米株市場では主要株価指数の動向はともかく、物色テーマとしては「ハリス銘柄買い・トランプ銘柄売り」という流れが形成される公算が大きい。具体的にはエネルギー・金融株には向かい風が吹く一方、脱炭素(再生可能エネルギー)や電気自動車(EV)などがテーマ性を復活させるケースが考えられ、この流れは東京市場にも波及しそうだ。
さて、フタを開けて見ないことには分からないのがイベントドリブンの世界だが、今回のFOMCの結果がマーケットに及ぼした影響については「フタを開けてみた後でも分からない」という市場関係者も首を捻るような景色に遭遇した。FRBによる0.5%の利下げ決定が開示され、その瞬間は、為替の円買いポジションを組んでいた向きは快哉を叫んだかもしれない。しかし、現実は違った。1ドル=140円台トビ台まで一気に円高に進んだのも束の間、その後は急激なアンワインドで倍返しの円安、1ドル=144円近辺まで円が売られるという想定外の展開となった。
「円安に賭けていた投資家は発表直後の円高で投げさせられたが、その後の過激な巻き戻しで今度は円高に賭けていた投資家も悲鳴を上げる格好となった」(ネット証券マーケットアナリスト)という。そして、今度は株式市場で円安とリンクさせた日経225先物への速射砲的な買いによって、日経平均が一時1000円を超える急騰を演じることになった。この一連の流れは理屈が全く追いつかず、かつ、あまりに目まぐるしく、生身の人間では到底ついて行けない。裏返せばAIアルゴリズムトレードがまさに現在のマーケットで跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している状況を物語っている。前出のアナリストいわく「直近、円買いポジションが約8年ぶりの高い水準に積み上がっており、これが狙われた。株式市場も同様で、AIアルゴは売りでも買いでもポジションが積み上がっている対象に逆方向のベクトルをかけて、揺さぶり落として利益を得るという手法が幅を利かせている」とする。個人投資家にすれば短期売買でも鉄火場に足を踏み入れない知恵が必要となる。
あすのスケジュールでは、昼ごろに日銀金融政策決定会合の結果が判明し、午後取引終了後の植田日銀総裁の記者会見に耳目が集まる。このほか、8月の全国消費者物価指数(CPI)、8月の食品スーパー売上高、8月の主要コンビニエンスストア売上高など。海外では9月の中国最優遇貸出金利、8月の英小売売上高の発表など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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