資源・新興国通貨の2024年12月までの展望

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最新投稿日時:2024/07/29 14:13 - 「資源・新興国通貨の2024年12月までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2024年12月までの展望

著者:八代和也
投稿:2024/07/29 14:13

豪ドル

ECB(欧州中銀)は6月に、BOC(カナダ中銀)は6月と7月に利下げを実施しました。米FRBやBOE(英中銀)なども24年末までに利下げを行うと市場は予想しています。RBA(豪中銀)に関しては、政策金利は24年末まで据え置かれるとの見方が有力であり、利上げ観測も市場にはあります。こうした市場の金融政策見通しの差は、豪ドルにとってプラスになりそうです。

今後、日銀が追加利上げを行うとしても、RBAが政策金利を据え置けば、RBAと日銀との政策金利差はそれほど縮小しないと考えられます。豪ドル/円は底堅く推移する可能性があります。

豪ドル/米ドルについては、米FRBの金融政策も重要です。FRBが利下げを行ってRBAとの金融政策スタンスの違いが明確になれば、豪ドル/米ドルは上値を試す展開になるかもしれません。
***
【豪ドル/NZドル】
豪ドル/NZドルは 7月16日に一時1.11372NZドルへと上昇し、22年10月以来1年9カ月ぶりの高値をつけました。市場ではRBAの利上げ観測もある一方で、RBNZ(NZ中銀)の利下げ観測が強まったことが、豪ドル/NZドルの上昇要因となりました。RBAの利上げ観測が後退する、あるいはRBNZの利下げ観測が後退すれば、豪ドル/NZドルは下落傾向へと転じそうです。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は7月10日の政策会合で政策金利を5.50%に据え置きました。その時の声明では、「金融政策は引き続き(景気)抑制的である必要がある」としつつも、「抑制の程度は、予想されるインフレ圧力の鈍化に合わせて時間とともに緩和されるだろう」が追加されました。将来の利下げに向けての地ならしとの解釈もできます。

RBNZの利下げが実現すれば、NZドルの上値を抑える要因になりそう。日銀の追加利上げのペース次第では、NZドル/円は軟調に推移するかもしれません。NZドル/米ドルについては、米FRBも利下げを行う場合、金融政策の方向性に差がないことから、それほど下落しない可能性があります。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は6月・7月と2会合連続で利下げを実施。マックレムBOC総裁は7月24日の政策会合後の会見で「インフレ率がおおむね(BOCの)想定通りに鈍化し続ければ、政策金利のさらなる引き下げを予想するのが妥当だ」と述べ、追加利下げの可能性に言及しました。

市場では、BOCは24年末までにさらに2回の利下げを行うとの観測があります。BOCの利下げ観測はカナダドルにとってマイナスです。日銀の利上げペース次第では、カナダドル/円は軟調に推移しそうです。

米ドル/カナダドルについては、米FRBとBOCの金融政策面からみれば、目先は上昇圧力が加わりやすいと考えられます。ただ、FRBもいずれ利下げを行うとみられます。その場合にはFRBの利下げの方が市場で強く意識されて、米ドル/カナダドルは下落傾向へと転じる可能性があります。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)の政策金利は50.00%と高い状況です(7/26時点)。政策金利の高さは本来、通貨高要因になると考えられますが、トルコリラは上値が重い展開が続いています。その主な要因として、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が大幅なマイナスであることが挙げられます(7/26時点でマイナス21.6%)。トルコのCPI上昇率が鈍化するなどして実質金利がプラスに転じる、少なくともマイナス幅が縮小していかなければ、トルコリラは引き続き上値が重い展開になりそうです。

TCMBの金融政策に関するエルドアン・トルコ大統領の言動には注意が必要かもしれません。23年6月に経済チームが刷新されてから、エルドアン大統領がTCMBの金融政策について発言することは少なくなりました。エルドアン大統領が再び金融政策に干渉するようなら、トルコリラには下押し圧力が加わりそうです。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は、7月18日の政策会合で政策金利を8.25%に据え置きました。前回5月の会合では6人の政策メンバー全員が据え置きに賛成しましたが、7月の会合では2人が0.25%利下げすることを支持。SARBのインフレ見通しも5月時点から下方修正されました。SARBの金融政策スタンスはハト派方向へとシフトしつつあるようです。

市場では、SARBは9月の会合で利下げを行うとの観測があります(8月は会合なし)。9月に実際に利下げが行われて、11月以降の会合でさらに利下げするとの観測が市場で強まる場合、南アフリカランド/円は上値が重い展開になりそうです。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は3月の政策会合で利下げを実施した後、5月と6月の会合では政策金利を11.00%に据え置きました(7月は会合なし)。前回6月の会合時の声明では、「ディスインフレのプロセスは続く」との見方が示され、「政策金利の調整(=利下げ)について議論できる可能性がある」と表明されました。

メキシコのCPI(消費者物価指数)上昇率はBOMのインフレ目標である3%(2~4%が許容レンジ)を引き続き上回っています。6月のCPIは総合指数が前年比4.98%、コア指数が同4.13%でした。BOMが今後利下げを行うとしても、利下げのペースは緩やかになりそうです。BOMの政策金利の水準が主要国の中銀と比べてかなり高い状況に大きな変化がなければ、金融政策面からメキシコペソはサポートされやすいと考えられます。

米米国とメキシコの政治情勢には注意が必要かもしれません。9月に始まる議会でメキシコの与党連合が憲法改正(司法制度改革など)を推進するのでは?と市場は懸念しています。また、メキシコにとって隣国であり最大の貿易相手である米国の大統領選の行方もメキシコペソの動向に影響を与えそうです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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