資源・新興国通貨の2024年9月までの展望

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最新投稿日時:2024/05/27 14:35 - 「資源・新興国通貨の2024年9月までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2024年9月までの展望

著者:八代和也
投稿:2024/05/27 14:35

豪ドル

RBA(豪中銀)は5月6-7日に政策会合で政策金利を4.35%に据え置くことを決定しました。市場ではRBAは利上げバイアスを復活させるとの見方がありましたが、声明における金融政策の先行きに関する文言は3月会合時から変わらず、「何も決定しておらず、何も排除していない」でした。

ただ、RBAの利下げは米FRBなど他の主要中銀よりも遅くなると市場はみているようです。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、5月24日時点で市場ではRBAが24年末まで政策金利を据え置く確率を6割程度織り込んでいます。今後発表される豪州の経済指標でこうした見方が強まれば、豪ドル高材料になりそうです。

豪ドル/円については、日銀の金融政策にも注目です。RBAと日銀の政策金利の差に大きな変化がなければ、豪ドル/円は上値を試す展開が想定されます。仮に本邦当局による為替介入(米ドル売り・円買い介入)が実施される場合、米ドル/円が下落して、豪ドル/円もそれに引きずられそうです。ただ、足もとの「円安」の主因となっている“日銀と他の主要中銀との政策金利の差”に大きな変化がなければ、為替介入による「円高」はそれほど長続きしないと考えられます。

豪ドル/米ドルについては、FRBの利下げ観測が後退する場合には上値が重くなりそうです。

豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオン(リスク選好)の動きが強まる場合、豪ドル/米ドルや豪ドル/円の支援材料になりそうです。
***
【豪ドル/NZドル】
豪ドル/NZドルは22年10月下旬以降、おおむね1.05000NZドル~1.11000NZドルのレンジで推移しています。最近では5月7日に1.10246NZドルへと上昇した後に反落しました。足もとの豪ドル/NZドル反落の主な要因として、RBAの利上げ観測が後退した一方で、RBNZ(NZ中銀)の早期の利下げ観測が後退したことが挙げられます。市場の有力な見方は“RBAとRBNZの政策金利はいずれも当面据え置かれる”へと変化しました。 市場のRBAとRBNZの金融政策見通しからみれば、豪ドル/NZドルは引き続き、1.05000NZドル~1.11000NZドルの動きになりそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の利下げのタイミング。
・米FRBの利下げ、日銀の追加利上げのタイミング。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンは豪ドルの上昇要因。
・資源(主に鉄鉱石)価格の動向(資源価格の下落は豪ドルの下落要因)。
・中国経済の動向。中国経済の減速は豪ドルにとってマイナス。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は5月22日の政策会合で政策金利を5.50%に据え置きました。RBNZは四半期に一度の金融政策報告を公表し、政策金利の見通しを2月時点から全般的に上方修正。政策金利のピーク水準の見通しを5.60%から5.65%へと引き上げました。また、政策金利見通しが示唆する利下げ開始時期(現行の5.50%を下回る時期)は、「25年前半」から「25年後半」へと後ズレしました。政策金利見通しの上方修正を受けて市場ではRBNZの利下げ観測が後退しており、そのことはNZドルにとってプラスです。

NZドル/円については、日銀の金融政策にも注目です。仮に日銀が追加利上げを行うとしても、RBNZと日銀の政策金利の差が大きく変化しなければ、NZドル/円は底堅く推移しそうです。本邦当局が為替介入(米ドル売り・円買い介入)を実施するようなら、豪ドル/円などと同様にNZドル/円は下落すると考えられますが、介入によるNZドル/円の下落は長続きしないと考えられます。

NZドル/米ドルについては、FRBの利下げ観測が後退する場合には上値が重くなりそうです。

豪ドルと同様にNZドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオンが強まることはNZドルにとってプラスです。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の利下げのタイミング。
・米FRBの利下げ、日銀の追加利上げのタイミング。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンはNZドルの上昇要因。
・中国経済の動向。中国経済の減速はNZドルにとってマイナス。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格の動向(乳製品価格の上昇はNZドルの上昇要因)。

カナダドル

マックレムBOC(カナダ中銀)総裁は4月の政策会合後の会見で「6月の会合で利下げする可能性がある」との認識を示しました。一方で、パウエルFRB議長ら米FOMC参加者の多くは利下げに慎重な姿勢を示しています。6月5日のBOC会合で利下げが実現すれば、FRBとBOCの金融政策の方向性の違いが市場で意識されるとともに、米ドル/カナダドルは上値を試す展開になりそうです。

日銀は早期に追加利上げを行うかもしれません。仮にBOCが利下げして日銀が追加利上げを行うとしても、BOCと日銀の政策金利の差は引き続き大きいと考えられます。カナダドル/円については、底堅く推移しそうです。

原油価格(米WTI原油先物が代表的な指標)が大きく変動する場合、原油価格の動向も材料になるかもしれません。カナダが原油を主力輸出品とすることもあり、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラスです。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の利下げのタイミングとペース。
・米FRBの利下げ、日銀の利上げのタイミング。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はカナダドル高要因)。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)は3月の政策会合で利上げを実施した後、4月と5月の2会合連続で政策金利を50.00%に据え置きました。

TCMBは声明で「月次のインフレ(率)の基調的なトレンドが大幅かつ持続的に低下するまで、金融引き締めスタンスを維持する」と改めて表明。「今年下半期にはディスインフレが確立される」との見方を示しつつ、「インフレの大幅かつ持続的な悪化が見込まれる場合には、金融政策を(さらに)引き締める」としました。

TCMBのタカ派的な姿勢はトルコリラにとってプラスと考えられるものの、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は依然として大幅なマイナスです(5月24日時点でマイナス19.80%)。実質金利がプラスに転じなければ(少なくともマイナス幅が縮小していかなければ)、トルコリラには下押し圧力が加わりやすいと考えられます。

TCMBの金融政策に関するエルドアン・トルコ大統領の言動には気を付ける必要がありそうです。エルドアン大統領はかつて、TCMBに利下げするように圧力を加えて自らの意向に従わない総裁を解任したこともありました。23年6月に経済チームが刷新されて以降、エルドアン大統領がTCMBの金融政策について発言することは少なくなったものの、再び金融政策に干渉するようなら、トルコリラにはさらなる下押し圧力が加わりそうです。

<注目点・イベントなど>
・トルコの実質金利のマイナス幅は縮小していくか。
・エルドアン大統領は金融政策に干渉しないか。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は23年5月に利上げを実施した後、前回24年3月の政策会合まで5会合連続で政策金利を8.25%に据え置きました。

南アフリカの4月CPI(消費者物価指数)は前年比5.2%でした。上昇率はSARBのインフレ目標レンジ(3~6%)には収まったものの、目標中間値である4.5%は引き続き上回りました。SARBは政策金利を当面据え置くと考えられます。金融政策面からみれば、南アフリカランド/円は底堅く推移しそうです。

5月29日に南アフリカの総選挙が実施されます(即日開票)。与党のANC(アフリカ民族会議)が過半数を割り込む場合、南アフリカ政治の先行き不透明感から南アフリカランド安材料になる可能性があります。

南アフリカでは発電設備の老朽化などによって計画停電が頻発しています。停電は経済活動を阻害するため、計画停電が長引く場合には同国景気をめぐる懸念が市場で強まるかもしれません。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の利下げのタイミング。
・南アフリカでは5月29日に総選挙でANCは過半数を維持できるか。
・計画停電が続く場合、南アフリカランド/円の下押し要因になる可能性あり。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は5月9日の政策会合で、政策金利を11.00%に据え置きました。BOMは3月の会合で0.25%の利下げを行ったものの、5月の会合では追加利下げを見送りました。

BOMは声明で先行きの金融政策について、3月会合時の「入手可能な情報に基づいて決定を下す」から「“政策金利の調整”について議論するためにインフレをめぐる環境を評価していく」へと修正。ロドリゲスBOM総裁は5月13日に「6月の会合では、利下げが議論されるだろう」と述べました。次回6月27日の会合では追加利下げが行われる可能性があります。

メキシコの4月CPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比4.65%、変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数が同4.37%。総合とコアのいずれも、BOMのインフレ目標である3%(2~4%が許容レンジ)を引き続き上回りました。6月を含めて今後利下げが行われるとしても、ペースは緩やかになりそうです。その通りならば、BOMの政策金利の水準が主要国中銀(特に日銀)と比べてかなり高い状況に大きな変化はありません。メキシコペソ/円は金融政策面からサポートされやすいと考えられます。

リスクオフ(リスク回避)の動きや本邦当局による為替介入(米ドル売り・円買い介入)には注意が必要かもしれません。リスクオフが強まる場合、メキシコペソなどの新興国通貨に対して下押し圧力が加わる可能性があります。為替介入によって米ドル/円が下落すれば、メキシコペソ/円もそれに引きずられると考えられるからです。

メキシコの大統領選が6月2日に行われます(即日開票)。与党・国家再生運動のシェインバウム氏が当選すれば、現政権から政策が大きく変わる可能性は低いと考えられるため、大統領選の結果は材料にならないかもしれません。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の今後の利下げペース。
・主要国中銀と比べて高いメキシコ中銀の政策金利。
・投資家のリスク意識の変化。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はメキシコペソ高要因)。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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