豪ドル
RBA(豪中銀)は、7月・8月・9月の3会合連続で政策金利を4.10%に据え置く一方で、9月会合時の声明で「ある程度のさらなる金融政策の引き締めが必要になるかもしれない」と表明。追加利上げに含みを持たせました。
市場では24年2月までにあと1回利上げが行われるとの見方が有力です。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込む利上げの確率は、10月3日の会合が約1割、11月までが約3割、12月までが約5割、24年2月までが約6割です(9/25時点)。今後発表される豪州の経済指標でRBAの利上げ観測が強まれば、豪ドルの支援材料になりそうです。
豪ドル/円は日銀の金融政策にも注目です。マイナス金利の解除など日銀の金融緩和策の修正が現実味を帯びれば、豪ドル/円は上値が重くなる可能性があります。
豪ドル/米ドルについては、米FRBの金融政策も重要です。FRBの利上げ観測が強まる、あるいは高水準の政策金利を長期間維持するとの観測が強まる場合、米ドルが全般的に強含んで、豪ドル/米ドルに対して下押し圧力が加わる可能性があります。
豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオン(リスク選好)の動きが強まる場合、豪ドル/米ドルや豪ドル/円の上昇要因になる可能性があります。
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【豪ドル/NZドル】
豪ドル/NZドルは22年11月以降、おおむね1.05NZドル~1.11NZドルのレンジで推移しています。市場では、「RBAはあと1回利上げする」との見方が有力、RBNZ(NZ中銀)に関しては「政策金利は据え置き」と「あと1回利上げする」とで見方が分かれています(RBNZは後述の「NZドル/円」、「NZドル/米ドル」参照)。市場の見通し通りにRBAとRBNZの政策金利が推移すれば、両者の政策金利の差は今後も大きく変化しないことになります。金融政策面からみれば、豪ドル/NZドルは引き続き明確な方向感が出にくいと考えられます。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)は追加利上げをするのか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンは豪ドルの上昇要因。
・資源(主に鉄鉱石)価格の動向(資源価格の下落は豪ドルの下落要因)。
・中国経済の動向。中国経済の減速は豪ドルにとってマイナス材料。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は、7月と8月の2会合連続で政策金利を5.50%に据え置きました。8月会合の声明では、「政策金利は予見可能な将来において抑制的な水準に維持する必要がある」と改めて表明され、政策金利は今後も据え置かれることが示唆されました。
市場の見方は、「RBNZの利上げはすでに終了した」と「あと1回利上げが行われる」とで割れています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込む24年2月までの確率は「現行水準に据え置き」と「利上げ」が五分五分です(9/25時点)。
NZの4-6月期CPI(消費者物価指数)が10月17日に発表されます。これが強い結果になれば、市場では11月29日の会合での利上げ観測が強まると考えられます。そして実際に利上げが行われれば、NZドル/円は堅調に推移しそうです。
日銀の金融政策にも注目です。日銀の金融緩和策の修正が現実味を帯びれば、NZドル/円は上値が重くなると考えられます。
NZドル/米ドルについては、米FRBの金融政策も重要です。米FRBの追加利上げ観測が強まる、あるいはFRBは高水準の政策金利を長期間維持するとの観測が市場で強まる場合、米ドルが全般的に強含んで、NZドル/米ドルに対して下押し圧力が加わる可能性があります。
NZの総選挙が10月14日に行われます。選挙は混戦になると予想されており、どの政党も単独過半数を獲得できない可能性があるようです。NZの政局不安が長引く場合、NZドルの売り材料になるかもしれません。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は追加利上げをするか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・10月14日にNZの総選挙。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンはNZドルの上昇要因。
・中国経済の動向。中国経済の減速はNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格の動向(乳製品価格の上昇はNZドルの上昇要因)。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は、9月6日の政策会合で政策金利を5.00%に据え置くことを決定。6月と7月の2会合連続で実施した利上げを再び停止しました。
BOCは声明で、「(BOC)理事会は基調的なインフレ圧力が持続することを引き続き懸念しており、必要なら政策金利をさらに引き上げる用意がある」と表明。追加利上げに含みを持たせました。
市場では、BOCはあと1回利上げを行うとの見方が有力です。日銀が金融緩和策を維持する中で、BOCが利上げすれば、金融政策面からカナダドル/円は堅調に推移しそうです。ただし、日銀の金融緩和策の修正が現実味を帯びれば、カナダドル/円は上値が重くなる可能性があります。
米FRBは23年中にあと1回の利上げを想定しているようです。BOCと米FRBの金融政策スタンスに差はなく、またこの状況に変化がなければ、米ドル/カナダドルは明確な方向感が出にくいと考えられます。22年9月から続く1.30カナダドル~1.40カナダドルの動きが今後も継続しそうです。
原油価格(米WTI原油先物が代表的な指標)に大きな変動がみられれば、原油価格の動向が材料になりそうです。カナダは原油を主力輸出品とするため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラスです。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)はどこまで利上げするか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はカナダドル高要因)。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は9月21日の政策会合で、5.00%の利上げを行うことを決定。政策金利を25.00%から30.00%へと引き上げました。利上げは4会合連続です。
TCMBは声明で「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、タイムリーかつ段階的な方法で必要なだけさらに強化される」と表明。追加利上げを示唆しました。
TCMBの6月以降の利上げ幅は合計21.50%。インフレの抑制に向けてTCMBが積極的に利上げを行っていることは、トルコリラを支援しそうです。
ただし、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は依然として大幅なマイナスです(9/22時点でマイナス28.94%)。エルドアン・トルコ大統領は9月6日に「金融引き締めの支援を受けてインフレ率を一桁に引き下げる」と、利上げを認めるかのような発言をしました。ただ、トルコでは24年3月に統一地方選が予定されています。統一地方選に向けてエルドアン大統領がTCMBに対して利下げ圧力を加えるのではないか?との懸念もあります。
トルコリラが持続的に上昇するためには、TCMBが今後も適切に利上げをできるかどうか、エルドアン大統領が金融政策に介入しないこと、これらが必要と考えられます。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)は適切に利上げできるか。
・エルドアン大統領は金融政策に干渉しないか。
・トルコの外貨準備は枯渇しないか。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は、7月・9月と2会合連続で政策金利を8.25%に据え置きました。会合では5人の政策メンバーのうち3人が据え置きを支持し、2人が0.25%利上げすることを主張し、据え置きの決定は僅差でした。
クガニャゴSARB総裁は会合後の会見で、「現在の政策金利の水準は(景気)抑制的であり、インフレ見通しとインフレ期待の上昇に対応したものだ」との認識を示したものの、「インフレ見通しに対する上振れリスクは残っている」と指摘。「(政策)委員会は引き続き警戒しており、リスクが顕在化し始めれば行動する用意がある」とし、追加利上げに含みをもたせました。
市場では「SARBの次の一手は利下げであり、早ければ24年前半に利下げに転じる」との観測があるなか、SARBがタカ派的な姿勢を示したことは、南アフリカランドにとってプラス材料になりそうです。
SARBは「利下げを検討するには、CPI(消費者物価指数)がインフレ目標(3~6%)の中間値である4.5%近辺にとどまっていることを確認する必要がある」との姿勢を示しています。南アフリカのCPIは5月が前年比6.3%、6月が5.4%、7月が4.7%、8月が4.8%でした。CPI上昇率が4.5%近辺で推移する状況が続けば、SARBは利下げを検討し始めると考えられます。利下げ観測が強まる場合、南アフリカランド/円は上値が重くなりそうです。
南アフリカでは発電設備の老朽化などによって慢性的な電力不足が続いており、計画停電が頻発しています。停電は経済活動を阻害するため、計画停電が続く場合には同国景気をめぐる懸念が市場で強まる可能性があり、その場合には南アフリカランド/円が下押しするかもしれません。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の利下げ観測が強まるか。
・計画停電が続く場合、南アフリカランド/円の下押し要因になる可能性あり。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は、5月・6月・8月の3会合連続で政策金利を11.25%に据え置きました。8月会合時の声明では、「政策金利を現在の水準に長期間維持する必要がある」と表明され、利下げは想定していないことが示唆されました。
BOMの政策金利はFRBなど主要中銀と比べて高く、またメキシコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は大幅なプラスです(9/22時点で6.61%)。CPIの鈍化スピード次第では、BOMは利下げを検討し始める可能性があるものの、政策金利と実質金利の高さが維持されれば、メキシコペソは堅調に推移しそうです。
米国など外国に住むメキシコ出身の労働者によるメキシコへの送金(本国送金。外貨売り/メキシコペソ買い需要)もメキシコペソを下支えすると考えられます。外国からメキシコへの送金額は、7月まで前年比で39カ月連続増加しました。
原油価格(米WTI原油先物)が大きく変動する場合、原油価格の動向も材料になりそうです。原油価格が上昇を続ければ、メキシコペソにとってさらなるプラス材料になりそうです。
メキシコペソ/円は、日銀の金融政策にも注目です。日銀の金融緩和策の修正が現実味を帯びれば、メキシコペソ/円は上値が重くなる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・主要国と比べて高いメキシコ中銀の政策金利と実質金利。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はメキシコペソ高要因)。
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