何故2023年が大転換の年なのか <後編>

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最新投稿日時:2023/01/05 11:36 - 「何故2023年が大転換の年なのか <後編>」(みんかぶ株式コラム)

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何故2023年が大転換の年なのか <後編>

著者:武者 陵司
投稿:2023/01/05 11:36

<前編>の続き

(3)2023年、日銀のYCC脱却がリスクテイクを鼓舞する

金利上昇を容認しリスクテイクを鼓舞する

 昨年末に市場を驚かせた日銀のYCC(イールドカーブコントロール)変更政策も、投資家と企業のリスクテイクを促進し、デフレ脱却に寄与するだろう。

YCC修正に3つの解釈

 市場やメディアで表明されているYCC変更に対する見方は3つに大別される。

1.日銀敗退説(日本経済新聞、ウォール・ストリート・ジャーナル:WSJなどの大半のメディアが主張)
⇒ヘッジファンドの日本国債売りに追い込まれた金融緩和。デフレ脱却を果たせないままの利上げは日本経済と市場の懸念要因になる。株価にとってはマイナス。

2.異次元の緩和継続説(黒田総裁の説明、元内閣官房参与の本田悦朗氏)
⇒経済のファンダメンタルズは変わらず政策も変わらず、との見方で株価に中立。

3.日銀攻め説(武者リサーチ)
⇒事実上の利上げ、異次元の緩和の出口に向かう第一歩。デフレ脱却が進展し、成長率が高まる。株高要因になる。

 いま市場で優勢なのは「1.」の日銀敗退説で、日銀はヘッジファンドの挑戦によって更なる利上げに追い込まれ、ファンダメンタルズが改善しないのに金利上昇だけ起きる懸念があるとの解釈である。それは企業活動や株価にとってマイナスである。この悲観的解釈をはっきり否定できない環境の下で株価が低迷している。

 「2.」は苦しい説明、明らかに市場金利が上がるのであるから、引き締め効果を持つことは否定できない。黒田総裁が緩和政策は不変と頑なに主張しているのは、投機筋に言質を取られまいとした用心によるものであろう。

日銀が勝ってYCCが終わる可能性大

 これらに対して武者リサーチは、今回のYCC変更は金利上昇の長期トレンドを示唆し、投資家のaction変更=リスクテイクを促す、という点でポジティブと考える。

 日本経済新聞は「投機筋に追い込まれた日銀、ブルーベイアセットによるJGB売り奏功」(12月22日)と日銀が負けたように描いたが、全く違う。日銀は投資家や企業にブルーベイのように動いてほしいのだ。JGBショートとは「金利が低い今のうちに借りておこう」(=債務の増加)と同義であり、利上げがリスクテイクを促進することを期待している。

 そもそもYCC導入は円高阻止のために導入されたのであるが、円高の懸念が払拭され円暴落の心配もない今は、正常化に向けての好機であった。

(4)2023年空前の株式好需給、全投資主体が株買いに

投資家も円金利急騰に備えたポートフォリオ大改造が必要

 日銀が金利の長期上昇トレンドを示唆した今、投資家もリスクテイクへとアクション変更を余儀なくされる。円金利急騰のリスクからポートフォリオ再構築が待ったなしとなり、その結果、全ての主体(企業、年金・保険、外国人、個人)が株式買いに回るだろう。

 日本の銀行・機関投資家の資金運用はかつては国債投資主体であったが、2013-14年の日銀異次元の緩和、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革以降、外国証券をリターン追及のためのリスク資産の中枢に据えてきた。GPIFのポートフォリオは、アベノミクスの一環として始められたGPIF改革により、外国債券、外国株式、日本債券、日本株式の各々1/4の構成にシフトしてきた。

 しかし、これからもその構成のままでよいとは限らない。円金利急騰のリスクが高まっているうえに、大幅な円安と為替変動、外国株式急落により外貨主体ポートフォリオの危険を思い知らされた。銀行・機関投資家の間で資金運用対象の中心に日本株式を据えざるを得ない時代が来つつあるのではないだろうか。銀行の場合は資本規制、生保の場合はソルベンシーマージン規制があり、リスクウェイトの高い株式投資はしにくい状況もあるが、それでも戦略的対応の余地はあるだろう。なお、自国国債をリスクウェィトゼロとするバーゼル資本規制は、現実にそぐわず、修正されるべきではないだろうか。

家計、外国人、自社株買いも参戦へ

 資産所得倍増政策へと舵を切った岸田政権のNISA改革もあり、「株式投資で資産形成を」という動きは国民的な広がりを見せている。NISA口座の急増、NISA口座からの買い付け額は指数関数的増加ペースにある。積み立てNISA口座からの買い付け額は5割増ペースの伸びを続けており、2022年には1兆円弱に上った模様。一般NISAからの買い付け(2021年年間2.7兆円、2022年1~9月2.3兆円)を合算すると、個人の株式積立投資はすでに年間4兆円弱に達している。

 2つのNISA一本化、非課税限度額(簿価残高で)1800万円、非課税保有期間の無期限化という制度改革は、預金から株式への大きな資金の流れを作るだろう。個人の金融資産(年金保険準備金を除く)の保有内訳は、日本は利息が限りなくゼロに近い現預金が74%、配当だけでほぼ2.5%のリターンがある株式・投信が20%と歪んでいる(米国は株投信73%、現預金19%の割合)。家計の株式積み立て投資が年間10兆円を超え、一大投資主体として登場するのはすぐ先である。

 また、企業の自社株買いが急増している。2021年度に8兆円と過去最高になったが、2022年度は10兆円ベースに上ると見られている。さらにアベノミクス時以降23兆円を買った外国人投資家は2020年にそのすべてを売却しつくし、日本株式はアンダーウェイトの状態にある。彼らは米国、中国、欧州、韓国など各国株式が固有の問題を抱えている中で、消去法的に日本の輝きを無視できなくなっていくだろう。

日経平均3万5000円は背伸びではない

 Village Capital高松一郎氏による、日経平均株価および予想EPS、予想PERの推計に基づくと、直近予想EPS2200円、日経平均株価2万6000円としてPERは11.8倍である。2033年、EPSが5%増の2300円と予想した場合、PER13倍で日経平均株価3万円、過去10年間平均の15倍とすれば、3万4500円と計算される。円安下の堅調な国内経済を考えれば、5%増益予想は控えめな前提とみられるし、15倍というPER予想も上述の好需給を考えれば妥当なものである。

 米国の市場ムードが一変する年後半には日本株ブームが到来する可能性が大きい。2024年まで展望すれば日経平均株価は史上最高値を更新し、4万円に到達する可能性が高いと考える。

(5)2023年武者リサーチの10サプライズ

1. 日本が世界の牽引車に、インフレ2%定着、YCC脱却開始
2. 2023年賃金上昇率定昇込み3.5%へ
3. 日本株ブーム日経平均3万5000円、全主体買い出動
4. ドル円レート落ち着き130~150円
5. 中国失速顕著に、暴動散発
6. 米国株価史上最高値更新、NYダウ3万8000ドルへ
7. FRB利上げ停止、ドル再上昇
8. 原発再稼働相次ぐ
9. ウクライナロシア撤退、プーチン失脚
10.財政政策減税へ大転換、外為特別会計の保有米国債売却60兆円の特別益計上

(2023年1月1日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン322号」を転載)

配信元: みんかぶ株式コラム

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