■会社概要
3. 特長・強み
リソー教育<4714>は様々な特長や強みを有しているが、弊社では特に以下の2つが重要だと考えている。1)長期的にほぼ一貫して業績が拡大基調を歩んでいることと、2)高い利益率を実現していること、の2つだ。これら2つの特長は、同社が構築してきた優位性のある事業モデルに起因するものと考えており、これらを理解することで同社の中長期的な成長シナリオに対する理解度や確信度が高まるものと考えている。
同社の売上高は創業初年度となる1986年6月期で163百万円を計上し、2013年2月期まで増収を継続してきた(2006年2月期は決算期変更によって8ヶ月の変則決算のため減収となったが、12ヶ月換算すると実質的に増収を達成)。2013年代半ばに不適切な会計処理問題が発覚し、内部管理体制の再構築を実施したことで一時的に成長が鈍化したほか、コロナ禍の影響で2021年2月期に減収となったことを除けば、長期的に成長トレンドが続いていると見ることができる。
重要なことは、少子化の進行と参入企業の増加によって生徒獲得競争が激化するなかでも、「TOMAS」や「名門会」「伸芽会」といった主要事業においていずれも生徒数を伸ばし、成長を続けてきたことである。同社の主要ターゲットとなる小・中・高等学校の生徒数は、2015年度の1,332万人から2021年度は1,246万人※と年率1.1%のペースで減少してきたが、同期間における主要3事業の売上高は逆に年率8.0%で成長してきた。将来についての不透明感が高まるなかにおいて、私立の小学校・中学校を受験する生徒が増加し、かつ1人当たりの教育費も増加するといった市場環境下で、受験対策ニーズを的確に取り込んできたことが成長要因になっていると考えられる。
※文部科学省「学校基本調査」(平成28年度、令和3年度)における小学校、中学校、高等学校の在籍生徒数の合計値。
また同社の営業利益率の推移を見ると、2021年2月期はコロナ禍の影響で一時的に低下したものの、2016年2月期以降は10%程度と安定して推移している。学習塾・予備校業界を俯瞰した場合、営業利益率10%の水準は平均よりも上位に位置する。上場する同業他社のなかには同社よりも高い営業利益率を実現している企業も複数あるが、それらは集団指導を中核の事業モデルとしているか、FC事業展開によりロイヤルティ収入を獲得している企業となる。同社のように直営教室で個別指導をメインとするか、集団と個別とを半々で展開するような業態で2ケタ台の営業利益率を実現している同業他社は極めて少ない。
このように同社が持つ安定した売上成長と高い収益性という2つの特長は、同じところに起因すると弊社では考えている。現 取締役会長の岩佐氏は創業にあたり中国の一人っ子政策から2つの大きなヒントを得た。それは一人っ子政策による少子化の進行と、少子化の結果として子ども1人当たりに投下される教育費は増大するということの2点だ。このヒントを基にして、少子化を当初から想定して事業モデルを構築してきたことが現在までの成長につながっており、また子ども1人当たりの教育費が増大する点を予見したことで、少子化を逆風ではなく追い風に変えることに成功したと言える。
少子化を追い風にするための重要なポイントが、1対1の完全個別指導による高品質な教育サービスの提供と、その目的(ゴール)を進学指導に置いたことの2点にある。この2つは現在の「TOMAS」をはじめとする各業態に共通した要素でもある。この2つを組み合わせた個別指導を本格的に展開しているところは現状ではほかに見当たらない。現在の個別指導市場で一般的なモデルとしては、1対少数(2~3名)の“凖”個別指導であり、学校の授業の補習目的というものが多い。他社が同社のモデルを採用しない大きな理由は明確で、事業リスクが高いためだ。完全個別指導で収益化を図るためには必然的に料金を高くせざるを得ないが、“授業の補習”ではその高い料金を正当化することはできない。高い授業料を正当化するものは難関校への進学実績だけという厳しい現実がある。このため、同社と同様の事業モデルで新規参入する企業はほとんどなく、完全個別指導の進学塾として高いブランド力とポジションを確立している要因となっている。
同社は質の高い個別指導の提供を設立目的としながらも、創業当初は「1クラス6名の学力別クラス編成」という少人数制からスタートし、岩佐氏が思い描いていた完全個別指導を提供したのは創業5年後の1990年だった。その間は同社内でも意見・方針の対立もあったと推察されるが、最終的に完全個別指導が実現したのは、「学習塾産業はサービス業である」という意識の導入とその徹底にある。その意識の下、高い顧客満足度を提供することに注力してきた。学習塾・予備校業界における高い顧客満足度とは志望校への合格にほかならない。同社は創業以来、現在に至るまでサービス業という意識が一貫して保持されており、サービス事業者の使命として進学実績の追求を最大の経営目標としている。この“進学実績追求型”の事業モデルこそが同社の強みの源泉であり、冒頭の安定増収と高利益率の2つを実現できる要因であると考えられる。
同社がサービス産業という意識を高く持って経営していることを表す1つの事例が、同社の正社員はマネジメントに徹するというスタイルだ。前述したとおり、「TOMAS」の講師陣は学生や社会人のアルバイトであり、各教室に在籍する正社員はそうした講師陣と児童・生徒、及びその保護者との調整役に徹している。具体的には、1)生徒・保護者の本音の目的・目標(ゴール)を引き出し、2)それを担当講師としっかり共有したうえでカリキュラムを作成し、3)授業開始後は進捗状況やその後の指導方針等について保護者に対して説明責任を果たす、という作業だ。この一連のサイクルを繰り返し行うことで、高い顧客満足度を維持しつつ、最終的に志望校合格という最大の顧客満足へとつなげている。
同社の安定成長・高利益率という状況が将来的に持続可能かという点については、投資時期や規模をどう設定するかにもよるが、5年から10年という時間軸では持続する可能性が高いと弊社では考えている。まず、同社の展開する事業モデル(高価格・高品質のサービス)に対する需要は少子化が進むなかでも常に一定数存在することが挙げられる。次にその市場への他社の参入がポイントになるが、この点は前述のように過当競争に陥るリスクは小さいと見ている。同社が創業から長年構築してきた事業モデルを後追い・再現するには事業リスクが高いためだ。同社の進学実績追求型事業モデルに対する参入障壁の高さが、同社の3つ目の特長であり強みと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 特長・強み
リソー教育<4714>は様々な特長や強みを有しているが、弊社では特に以下の2つが重要だと考えている。1)長期的にほぼ一貫して業績が拡大基調を歩んでいることと、2)高い利益率を実現していること、の2つだ。これら2つの特長は、同社が構築してきた優位性のある事業モデルに起因するものと考えており、これらを理解することで同社の中長期的な成長シナリオに対する理解度や確信度が高まるものと考えている。
同社の売上高は創業初年度となる1986年6月期で163百万円を計上し、2013年2月期まで増収を継続してきた(2006年2月期は決算期変更によって8ヶ月の変則決算のため減収となったが、12ヶ月換算すると実質的に増収を達成)。2013年代半ばに不適切な会計処理問題が発覚し、内部管理体制の再構築を実施したことで一時的に成長が鈍化したほか、コロナ禍の影響で2021年2月期に減収となったことを除けば、長期的に成長トレンドが続いていると見ることができる。
重要なことは、少子化の進行と参入企業の増加によって生徒獲得競争が激化するなかでも、「TOMAS」や「名門会」「伸芽会」といった主要事業においていずれも生徒数を伸ばし、成長を続けてきたことである。同社の主要ターゲットとなる小・中・高等学校の生徒数は、2015年度の1,332万人から2021年度は1,246万人※と年率1.1%のペースで減少してきたが、同期間における主要3事業の売上高は逆に年率8.0%で成長してきた。将来についての不透明感が高まるなかにおいて、私立の小学校・中学校を受験する生徒が増加し、かつ1人当たりの教育費も増加するといった市場環境下で、受験対策ニーズを的確に取り込んできたことが成長要因になっていると考えられる。
※文部科学省「学校基本調査」(平成28年度、令和3年度)における小学校、中学校、高等学校の在籍生徒数の合計値。
また同社の営業利益率の推移を見ると、2021年2月期はコロナ禍の影響で一時的に低下したものの、2016年2月期以降は10%程度と安定して推移している。学習塾・予備校業界を俯瞰した場合、営業利益率10%の水準は平均よりも上位に位置する。上場する同業他社のなかには同社よりも高い営業利益率を実現している企業も複数あるが、それらは集団指導を中核の事業モデルとしているか、FC事業展開によりロイヤルティ収入を獲得している企業となる。同社のように直営教室で個別指導をメインとするか、集団と個別とを半々で展開するような業態で2ケタ台の営業利益率を実現している同業他社は極めて少ない。
このように同社が持つ安定した売上成長と高い収益性という2つの特長は、同じところに起因すると弊社では考えている。現 取締役会長の岩佐氏は創業にあたり中国の一人っ子政策から2つの大きなヒントを得た。それは一人っ子政策による少子化の進行と、少子化の結果として子ども1人当たりに投下される教育費は増大するということの2点だ。このヒントを基にして、少子化を当初から想定して事業モデルを構築してきたことが現在までの成長につながっており、また子ども1人当たりの教育費が増大する点を予見したことで、少子化を逆風ではなく追い風に変えることに成功したと言える。
少子化を追い風にするための重要なポイントが、1対1の完全個別指導による高品質な教育サービスの提供と、その目的(ゴール)を進学指導に置いたことの2点にある。この2つは現在の「TOMAS」をはじめとする各業態に共通した要素でもある。この2つを組み合わせた個別指導を本格的に展開しているところは現状ではほかに見当たらない。現在の個別指導市場で一般的なモデルとしては、1対少数(2~3名)の“凖”個別指導であり、学校の授業の補習目的というものが多い。他社が同社のモデルを採用しない大きな理由は明確で、事業リスクが高いためだ。完全個別指導で収益化を図るためには必然的に料金を高くせざるを得ないが、“授業の補習”ではその高い料金を正当化することはできない。高い授業料を正当化するものは難関校への進学実績だけという厳しい現実がある。このため、同社と同様の事業モデルで新規参入する企業はほとんどなく、完全個別指導の進学塾として高いブランド力とポジションを確立している要因となっている。
同社は質の高い個別指導の提供を設立目的としながらも、創業当初は「1クラス6名の学力別クラス編成」という少人数制からスタートし、岩佐氏が思い描いていた完全個別指導を提供したのは創業5年後の1990年だった。その間は同社内でも意見・方針の対立もあったと推察されるが、最終的に完全個別指導が実現したのは、「学習塾産業はサービス業である」という意識の導入とその徹底にある。その意識の下、高い顧客満足度を提供することに注力してきた。学習塾・予備校業界における高い顧客満足度とは志望校への合格にほかならない。同社は創業以来、現在に至るまでサービス業という意識が一貫して保持されており、サービス事業者の使命として進学実績の追求を最大の経営目標としている。この“進学実績追求型”の事業モデルこそが同社の強みの源泉であり、冒頭の安定増収と高利益率の2つを実現できる要因であると考えられる。
同社がサービス産業という意識を高く持って経営していることを表す1つの事例が、同社の正社員はマネジメントに徹するというスタイルだ。前述したとおり、「TOMAS」の講師陣は学生や社会人のアルバイトであり、各教室に在籍する正社員はそうした講師陣と児童・生徒、及びその保護者との調整役に徹している。具体的には、1)生徒・保護者の本音の目的・目標(ゴール)を引き出し、2)それを担当講師としっかり共有したうえでカリキュラムを作成し、3)授業開始後は進捗状況やその後の指導方針等について保護者に対して説明責任を果たす、という作業だ。この一連のサイクルを繰り返し行うことで、高い顧客満足度を維持しつつ、最終的に志望校合格という最大の顧客満足へとつなげている。
同社の安定成長・高利益率という状況が将来的に持続可能かという点については、投資時期や規模をどう設定するかにもよるが、5年から10年という時間軸では持続する可能性が高いと弊社では考えている。まず、同社の展開する事業モデル(高価格・高品質のサービス)に対する需要は少子化が進むなかでも常に一定数存在することが挙げられる。次にその市場への他社の参入がポイントになるが、この点は前述のように過当競争に陥るリスクは小さいと見ている。同社が創業から長年構築してきた事業モデルを後追い・再現するには事業リスクが高いためだ。同社の進学実績追求型事業モデルに対する参入障壁の高さが、同社の3つ目の特長であり強みと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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