■業績動向
ノムラシステムコーポレーション<3940>は、1986年2月に設立され、企業のオープン化コンサルティング業務、それに関連するソリューション提供業務などを展開し、発展を遂げてきた。ITが急速に進化する時代の流れにうまく乗り、ソフトウェア設計・制作請負中心の事業構造から、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹系統合システム)パッケージ導入におけるコンサルティング業務に経営資源をシフトしている。
同社の次世代戦略事業部では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。民間調査機関が試算した国内ERP市場は、年平均成長率が8%。さらに、クラウド市場やビッグデータ市場も拡大が見込まれており、コンサルティング企業として同社の成長余地は大きい。
同社の事業内容はSAP導入コンサルティング、SAP保守サポートセンター運営、Webシステム開発コンサルティング、情報サイトコンサルティングなどによって構成されているが、2001年にSAPとサービスパートナー契約を結んだことが飛躍するきっかけになった。2009年にはSAPのチャネル・パートナーとなり、SAP ERPのスペシャリスト集団として収益を伸ばし、2016年9月に東京証券取引所(以下、東証)JASDAQ市場への上場を果たし、2018年3月には同2部市場に上場。2018年6月には早くも1部市場に指定替えとなり、2022年4月の東証市場再編では最上位のプライム市場の上場となるなど、信頼度の高まりから受注が拡大している。
2021年12月期決算は、売上高が2,791百万円(前期比9.9%増)、営業利益が476百万円(同27.4%増)、経常利益493百万円(同26.3%増)、当期純利益349百万円(同29.6%増)の大幅増益になった。
大手テレビ局グループからのSAP/HANA導入プロジェクトを受注したほか、直近でも三大重工業の一角からDXの実行に向けてRPAライセンス契約を、トップ電力グループからDXに向けたコンサルティングプロジェクトを、そして航空輸送事業を中心とする日本最大手グループの子会社から業務効率化を実現するデジタイゼーション(自動化)プロジェクトをそれぞれ受注。保守的に計画を立てているため、期初予想から大きく上振れした。
総じて見ると、プライム※案件にシフトする一方、既存のFIS(Function Implement Service)が減少する傾向が続いている。FIS案件は外注コストがかかるため、売上高全体は劇的な伸びにはならなかったものの、近年では利益率が改善傾向にある。全体の売上高に占めるプライム比率は35%前後だったものが、直近では約40%に上昇しているが、これがさらに高まれば、一段の利益率向上が期待できそうだ。
※クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する。
一方、次世代戦略事業部のRPA(Robotic Process Automation)事業への先行投資に力を注いでいるが、RPA事業への前向きな投資分によるコストアップについては、今後の成長につながるため不安材料とはならない。
今後も、利益率改善を図るために、プライム案件、準プライム案件の比重を高めていく方針。従来型のFIS案件のように、プライムベンダーから依頼を受け、支援する形で部分的に対応することと比べて、売上総利益率に10ポイントほどの差が生じることになることから、当面はプライム案件の受注確保が業績向上のポイントだ。
さらに、次世代戦略事業部では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。
2022年12月期は減益を見込んでいるものの、これは投資を積極的に行うためで、同社の成長路線に変化は見られない。具体的には、売上高2,701百万円(前期比3.2%減)、営業利益162百万円(同65.9%減)、経常利益162百万円(同67.1%減)、当期純利益111百万円(同68.3%減)を予想。受注は順調に拡大する見込みながら、5年後の飛躍を見込んで、投資を活発化させる。具体的には、人材投資に力点を置き、研修センターを設立する予定だ。投資金額など詳細は煮詰めている段階にあるが、上場してから最大の投資を見込んでいる。
一方、プライム案件も着実に積み上がる見込みにあり、今後も「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、1)「SAP S/4HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化、2)「SAP Success Factors」拡販のためのクラウドソリューション強化、を重点施策とする。また、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いため、クラウドへの置き換えを進めるといったビジネスチャンスが広がりそうだ。
コロナ禍の影響、リーマンショック時と様相異なる
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)は産業界に大きなダメージを与えたが、同社へのコロナ禍の影響は、リーマンショックの時とは様相が異なっていると言う。リーマンショック時には、40%の業績落ち込みを記録したものの、今回IT関係はむしろ積極的に先行投資を行う企業が多い。金融緩和でもたらされた余剰資金がシステム投資に向けられていると会社側では感じており、受注を順調に確保している。世間では、「コロナ禍はテレワークの推進化などで、IT業界全体に追い風となっている」と言われているが、同社もそのような状況にあると言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
<SI>
ノムラシステムコーポレーション<3940>は、1986年2月に設立され、企業のオープン化コンサルティング業務、それに関連するソリューション提供業務などを展開し、発展を遂げてきた。ITが急速に進化する時代の流れにうまく乗り、ソフトウェア設計・制作請負中心の事業構造から、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹系統合システム)パッケージ導入におけるコンサルティング業務に経営資源をシフトしている。
同社の次世代戦略事業部では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。民間調査機関が試算した国内ERP市場は、年平均成長率が8%。さらに、クラウド市場やビッグデータ市場も拡大が見込まれており、コンサルティング企業として同社の成長余地は大きい。
同社の事業内容はSAP導入コンサルティング、SAP保守サポートセンター運営、Webシステム開発コンサルティング、情報サイトコンサルティングなどによって構成されているが、2001年にSAP
2021年12月期決算は、売上高が2,791百万円(前期比9.9%増)、営業利益が476百万円(同27.4%増)、経常利益493百万円(同26.3%増)、当期純利益349百万円(同29.6%増)の大幅増益になった。
大手テレビ局グループからのSAP/HANA導入プロジェクトを受注したほか、直近でも三大重工業の一角からDXの実行に向けてRPAライセンス契約を、トップ電力グループからDXに向けたコンサルティングプロジェクトを、そして航空輸送事業を中心とする日本最大手グループの子会社から業務効率化を実現するデジタイゼーション(自動化)プロジェクトをそれぞれ受注。保守的に計画を立てているため、期初予想から大きく上振れした。
総じて見ると、プライム※案件にシフトする一方、既存のFIS(Function Implement Service)が減少する傾向が続いている。FIS案件は外注コストがかかるため、売上高全体は劇的な伸びにはならなかったものの、近年では利益率が改善傾向にある。全体の売上高に占めるプライム比率は35%前後だったものが、直近では約40%に上昇しているが、これがさらに高まれば、一段の利益率向上が期待できそうだ。
※クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する。
一方、次世代戦略事業部のRPA(Robotic Process Automation)事業への先行投資に力を注いでいるが、RPA事業への前向きな投資分によるコストアップについては、今後の成長につながるため不安材料とはならない。
今後も、利益率改善を図るために、プライム案件、準プライム案件の比重を高めていく方針。従来型のFIS案件のように、プライムベンダーから依頼を受け、支援する形で部分的に対応することと比べて、売上総利益率に10ポイントほどの差が生じることになることから、当面はプライム案件の受注確保が業績向上のポイントだ。
さらに、次世代戦略事業部では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。
2022年12月期は減益を見込んでいるものの、これは投資を積極的に行うためで、同社の成長路線に変化は見られない。具体的には、売上高2,701百万円(前期比3.2%減)、営業利益162百万円(同65.9%減)、経常利益162百万円(同67.1%減)、当期純利益111百万円(同68.3%減)を予想。受注は順調に拡大する見込みながら、5年後の飛躍を見込んで、投資を活発化させる。具体的には、人材投資に力点を置き、研修センターを設立する予定だ。投資金額など詳細は煮詰めている段階にあるが、上場してから最大の投資を見込んでいる。
一方、プライム案件も着実に積み上がる見込みにあり、今後も「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、1)「SAP S/4HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化、2)「SAP Success Factors」拡販のためのクラウドソリューション強化、を重点施策とする。また、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いため、クラウドへの置き換えを進めるといったビジネスチャンスが広がりそうだ。
コロナ禍の影響、リーマンショック時と様相異なる
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)は産業界に大きなダメージを与えたが、同社へのコロナ禍の影響は、リーマンショックの時とは様相が異なっていると言う。リーマンショック時には、40%の業績落ち込みを記録したものの、今回IT関係はむしろ積極的に先行投資を行う企業が多い。金融緩和でもたらされた余剰資金がシステム投資に向けられていると会社側では感じており、受注を順調に確保している。世間では、「コロナ禍はテレワークの推進化などで、IT業界全体に追い風となっている」と言われているが、同社もそのような状況にあると言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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