企業が抱える売掛債権の保証を手掛けるイー・ギャランティ<8771>。売掛金が回収できなくなるリスクを回避したい企業の需要をつかみ、コロナ禍においても高成長を続けています。11月には法人向けの後払い決済サービスを始め、買い手企業の与信を最短即日で審査し、売り手への購入代金を立て替えます。年内に20行程度の地方銀行と組み、顧客企業の資金繰りの改善を支援する方針です。今回は新しいサービスの狙いを同社の江藤公則(えとうまさのり)社長にお話を伺います。
馬渕:全国各地の「リスク情報」がイー・ギャランティに集まっていますね。
江藤:リスクを引き受ける社数は、累計16万社にのぼり、年間の企業審査数は約30万社、保証残高は6,900億円を超えています。
馬渕:直近の「地銀のプレスリリース」を拝見しても、ここまで積み重ねてきた、ビッグデータをより一段と深掘りした「活用フェーズ」に入ってきているように思います。まずは、足元の業績について教えてください。
江藤:2022年3月期第2四半期の連結決算は2ケタ増収増益です。売上高は38億4700万円(前年同期比11.5%増)、営業利益は18億500万円(同20.1%増)、経常利益は18億900万円(同19.7%増)、純利益は11億7900億円(同21.5%増)となりました。緊急事態宣言の延長により営業活動が制限される中で、顧客ニーズの高まりに合わせた商品をタイムリーに提供したことで新規契約が増加しています。また、業種に合わせてきめ細かくリスク受託の方針を策定して、できる限り通常時のリスク引受体制へ近づけたことで、保証残高が増加しました。
馬渕:ここまで対応されてきた、顧客のニーズに合わせたタイムリーな商品とは?
江藤:新たなサービスとして従業員や下請け業者が給与や代金の支払予定日を待たずに働いた分の給与や代金をいつでも受け取れる「eG 前払い」の提供を開始しました。当社グループは、従来の保証サービスで培ったリスクを引き受ける強みと、フィンテック企業から多くのリスク引き受け要請がありました。同社の事業上でも接点が大きいという特徴がありますので、今後も企業向けに魅力ある新しい金融サービスを提供するフィンテック企業との連携を強化していきます。
馬渕:下期に期待が寄せられますね。
江藤:そうですね。今期の通期計画では、経常利益は20%増益見通しです。顧客層拡大のために販売体制を強化しています。営業人員増加については、21年3月時点より約50%増加しています。
馬渕:新規開拓はいかがでしょうか。
江藤:現在、10数社と継続交渉中です。提携済みの信用金庫からの顧客紹介も堅調に推移していますね。今まで、アプローチできていなかった顧客層への接触が可能となっていますので、これらの活動については、下期も継続して取り組んでいく予定です。
馬渕:変異株は、これからも定期的に出てくる可能性もありますので、まだまだコロナと向き合う期間が継続しそうです。
江藤:経済が早く回復に向かって欲しいです。経済が正常化に戻った際に、企業や人が残っていることが大切。そのためにも、我々は「リスクを可視化」することで、経済を守ります。
馬渕:企業が抱える売掛債権の保証も、給与や代金をいつでも受け取れる「eG 前払い」もありがたいサービスですね。
江藤:みんなが『信用を相手に与え合うこと』です。信用が信用を産んで大きくなっていくことで、経済が回っているのです。
◆ここからは、後払い決済市場に参入と地銀との連携強化の狙いについて伺います。
馬渕:法人向けの後払い決済サービスである「eG Pay」「eGCollect」とはどんな仕組みですか。
江藤:これらの取り組みは、これまで培ってきた取引情報を中心としたビッグデータの活用と周辺分野の事業展開だと理解してもらえると分かりやすいです。これまで積み重ねてきたビッグデータと信頼を「活用」したサービスとして、WEB完結型の中小零細企業向け少額債権保証サービス「Minimal」をスタートし、給与をいつでも受け取れる「eG前払い」を手掛け、そして、今回の後払いサービスの「eG Pay」「eGCollect」を始めました。
馬渕:なるほど。売掛債権の保証のメイン事業で得られた強みを横展開し、新しいサービスを展開されているわけですね。つまり、全てはシナジー効果があり、繋がるわけですね。
江藤:「eG Collect」は請求書発行・入金管理・代金回収等の一連の業務を当社グループが代行するサービスです。利用企業は請求情報を当社グループへ連携するだけで、一連の業務を当社グループにアウトソースすることができます。また、取引先からの入金が支払期日よりも遅れた場合には、当社グループが取引先に代わって販売代金を支払います。そのため、利用企業は未回収リスクを抱えずに取引することができます。
馬渕:これは、請求書まわりの業務を効率化するまさに「DX分野」になりますね。それでは、「eG Pay」はどんなサービスでしょうか。
江藤:「eG Pay」は「eG Collect」のオプション機能です。当社グループが請求・決済業務を代行している企業は、専用WEBページから申し込むだけで、3営業日後に当社グループから利用企業の口座へ代金を振込みするサービスです。これは、保有している「売掛金」を早期資金化する仕組みです。企業間取引で、売り上げを回収できるのは翌月以降となることが多いため、手元資金が限られる中小にとっては資金繰りの改善が期待できるわけです。
馬渕:後払い決済に参入とありますが、これは「買い手側」に立った場合、7カ月後まで代金を支払うタイミングを伸ばせるため、後払いなのでしょうか。
江藤:そうです。サービスの買い手側の企業の「支払いを少し伸ばして欲しい」ニーズがあります。一方で、サービスの売り手側は「通常よりも早く支払ってもらえたら嬉しい」わけです。買い手・売り手の両方の企業に、我々のサービスが介在することで少し余裕が生まれます。経済循環にはこの「余裕」がとても大切なのです。
馬渕:既に、地方銀行10行との間で「決済サービス」の提供についてプレスリリースが出ています。
江藤:年内に20行程度の地方銀行と組み、顧客企業の資金繰りの改善を支援します。
馬渕:その他、今後の重点政策はありますか。
江藤:リスクヘッジしたい企業とリスクテイクしたい企業をつなぐ仕組みです。例えば、フィンテック企業にはシステム開発力、アイデアがあります。そこに、当社のリスク引受力、情報力、営業力を組み合わせることで、フィンテック企業は成長することができます。
◆株主還元
馬渕:株主還元についても、伺います。13期連続増配しており、配当性向48.8%と素晴らしいですね。さらに、21年3月期では8円増配し、14円から22円へ大幅増額されています。株主還元へのお考えを教えてください。
江藤:直近の業績の動向を踏まえれば、株主還元を従来以上に高めることが可能と判断しました。株主への利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しています。もちろん、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保を確保した上で、これからも、企業業績に応じた配当政策を実施していく方針です。
馬渕:ありがとうございました。
<聞き手・構成/ 経済アナリスト 馬渕磨理子>
<NB>
馬渕:全国各地の「リスク情報」がイー・ギャランティに集まっていますね。
江藤:リスクを引き受ける社数は、累計16万社にのぼり、年間の企業審査数は約30万社、保証残高は6,900億円を超えています。
馬渕:直近の「地銀のプレスリリース」を拝見しても、ここまで積み重ねてきた、ビッグデータをより一段と深掘りした「活用フェーズ」に入ってきているように思います。まずは、足元の業績について教えてください。
江藤:2022年3月期第2四半期の連結決算は2ケタ増収増益です。売上高は38億4700万円(前年同期比11.5%増)、営業利益は18億500万円(同20.1%増)、経常利益は18億900万円(同19.7%増)、純利益は11億7900億円(同21.5%増)となりました。緊急事態宣言の延長により営業活動が制限される中で、顧客ニーズの高まりに合わせた商品をタイムリーに提供したことで新規契約が増加しています。また、業種に合わせてきめ細かくリスク受託の方針を策定して、できる限り通常時のリスク引受体制へ近づけたことで、保証残高が増加しました。
馬渕:ここまで対応されてきた、顧客のニーズに合わせたタイムリーな商品とは?
江藤:新たなサービスとして従業員や下請け業者が給与や代金の支払予定日を待たずに働いた分の給与や代金をいつでも受け取れる「eG 前払い」の提供を開始しました。当社グループは、従来の保証サービスで培ったリスクを引き受ける強みと、フィンテック企業から多くのリスク引き受け要請がありました。同社の事業上でも接点が大きいという特徴がありますので、今後も企業向けに魅力ある新しい金融サービスを提供するフィンテック企業との連携を強化していきます。
馬渕:下期に期待が寄せられますね。
江藤:そうですね。今期の通期計画では、経常利益は20%増益見通しです。顧客層拡大のために販売体制を強化しています。営業人員増加については、21年3月時点より約50%増加しています。
馬渕:新規開拓はいかがでしょうか。
江藤:現在、10数社と継続交渉中です。提携済みの信用金庫からの顧客紹介も堅調に推移していますね。今まで、アプローチできていなかった顧客層への接触が可能となっていますので、これらの活動については、下期も継続して取り組んでいく予定です。
馬渕:変異株は、これからも定期的に出てくる可能性もありますので、まだまだコロナと向き合う期間が継続しそうです。
江藤:経済が早く回復に向かって欲しいです。経済が正常化に戻った際に、企業や人が残っていることが大切。そのためにも、我々は「リスクを可視化」することで、経済を守ります。
馬渕:企業が抱える売掛債権の保証も、給与や代金をいつでも受け取れる「eG 前払い」もありがたいサービスですね。
江藤:みんなが『信用を相手に与え合うこと』です。信用が信用を産んで大きくなっていくことで、経済が回っているのです。
◆ここからは、後払い決済市場に参入と地銀との連携強化の狙いについて伺います。
馬渕:法人向けの後払い決済サービスである「eG Pay」「eGCollect」とはどんな仕組みですか。
江藤:これらの取り組みは、これまで培ってきた取引情報を中心としたビッグデータの活用と周辺分野の事業展開だと理解してもらえると分かりやすいです。これまで積み重ねてきたビッグデータと信頼を「活用」したサービスとして、WEB完結型の中小零細企業向け少額債権保証サービス「Minimal」をスタートし、給与をいつでも受け取れる「eG前払い」を手掛け、そして、今回の後払いサービスの「eG Pay」「eGCollect」を始めました。
馬渕:なるほど。売掛債権の保証のメイン事業で得られた強みを横展開し、新しいサービスを展開されているわけですね。つまり、全てはシナジー効果があり、繋がるわけですね。
江藤:「eG Collect」は請求書発行・入金管理・代金回収等の一連の業務を当社グループが代行するサービスです。利用企業は請求情報を当社グループへ連携するだけで、一連の業務を当社グループにアウトソースすることができます。また、取引先からの入金が支払期日よりも遅れた場合には、当社グループが取引先に代わって販売代金を支払います。そのため、利用企業は未回収リスクを抱えずに取引することができます。
馬渕:これは、請求書まわりの業務を効率化するまさに「DX分野」になりますね。それでは、「eG Pay」はどんなサービスでしょうか。
江藤:「eG Pay」は「eG Collect」のオプション機能です。当社グループが請求・決済業務を代行している企業は、専用WEBページから申し込むだけで、3営業日後に当社グループから利用企業の口座へ代金を振込みするサービスです。これは、保有している「売掛金」を早期資金化する仕組みです。企業間取引で、売り上げを回収できるのは翌月以降となることが多いため、手元資金が限られる中小にとっては資金繰りの改善が期待できるわけです。
馬渕:後払い決済に参入とありますが、これは「買い手側」に立った場合、7カ月後まで代金を支払うタイミングを伸ばせるため、後払いなのでしょうか。
江藤:そうです。サービスの買い手側の企業の「支払いを少し伸ばして欲しい」ニーズがあります。一方で、サービスの売り手側は「通常よりも早く支払ってもらえたら嬉しい」わけです。買い手・売り手の両方の企業に、我々のサービスが介在することで少し余裕が生まれます。経済循環にはこの「余裕」がとても大切なのです。
馬渕:既に、地方銀行10行との間で「決済サービス」の提供についてプレスリリースが出ています。
江藤:年内に20行程度の地方銀行と組み、顧客企業の資金繰りの改善を支援します。
馬渕:その他、今後の重点政策はありますか。
江藤:リスクヘッジしたい企業とリスクテイクしたい企業をつなぐ仕組みです。例えば、フィンテック企業にはシステム開発力、アイデアがあります。そこに、当社のリスク引受力、情報力、営業力を組み合わせることで、フィンテック企業は成長することができます。
◆株主還元
馬渕:株主還元についても、伺います。13期連続増配しており、配当性向48.8%と素晴らしいですね。さらに、21年3月期では8円増配し、14円から22円へ大幅増額されています。株主還元へのお考えを教えてください。
江藤:直近の業績の動向を踏まえれば、株主還元を従来以上に高めることが可能と判断しました。株主への利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しています。もちろん、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保を確保した上で、これからも、企業業績に応じた配当政策を実施していく方針です。
馬渕:ありがとうございました。
<聞き手・構成/ 経済アナリスト 馬渕磨理子>
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