窪田製薬HD Research Memo(7):開発資金の有効活用を進めるなか、遺伝子治療薬の開発は一旦規模を縮小

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最新投稿日時:2021/03/17 15:57 - 「窪田製薬HD Research Memo(7):開発資金の有効活用を進めるなか、遺伝子治療薬の開発は一旦規模を縮小」(フィスコ)

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窪田製薬HD Research Memo(7):開発資金の有効活用を進めるなか、遺伝子治療薬の開発は一旦規模を縮小

配信元:フィスコ
投稿:2021/03/17 15:57
窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況

4. 遺伝子治療(網膜色素変性)
網膜色素変性を適応症としたヒトロドプシン※1を用いた遺伝子治療については、2018年1月にSIRION Biotech(ドイツ)とアデノ随伴ウイルスベクター※2確立のための共同開発契約を締結し、同年11月よりプロモーター※3、カプシド※4、導入遺伝子(ヒトロドプシン)の最適化プロセス確立に向けた取り組みを進めている。しかし、現在は研究開発資金の有効活用を進めるなかで開発規模を一旦縮小している。今後、政府機関から補助金を獲得するか、開発資金を拠出する共同開発パートナーが現れれば、再び開発を推進していくことにしている。

※1 ヒトの網膜の杆体細胞を構成するタンパク質の一種。光受容体(光信号を電気信号に変えて脳に伝達する)の機能を果たす。
※2 治療する細胞に治療遺伝子を導入するために利用されるウイルス。
※3 ゲノムから遺伝子の転写が行われるときの、転写開始部分として機能している領域を指す。
※4 ウイルスゲノムを取り囲むタンパク質の殻のこと。ウイルスゲノムを核酸分解酵素などから保護し、細胞のレセプター(受容体)への吸着に関与している。カプシドはウイルスが細胞に侵入後、細胞またはウイルス自身の酵素によって取り除かれる。


網膜色素変性は遺伝性の網膜疾患で、同社資料によると、米国及び欧州では約4,000人に1人が罹患する稀少疾患であり、患者数は世界で約150万人※と推計され、日本では厚生労働省により難病指定されている。光の明暗を認識する杆体細胞が遺伝子変異により損傷されることで、初期症状として夜盲症や視野狭窄、視力低下などを呈し、時間経過とともに色を認識する錐体(すいたい)細胞の損傷による色覚異常や中心視力の低下が進行し、最終的には失明を来す恐れがある疾患である。幼少期より視力低下が進行するケースでは、40歳までに失明する可能性がある。また、網膜色素変性の発症原因となる遺伝子変異の種類は3千種類以上あると言われており、現段階で有効な治療法が確立されていないアンメット・メディカル・ニーズの強い疾患となる。

※Vaidya P, Vaidya A(2015) Retinitis Pigmentosa: Disease Encumbrance in the Eurozone. Int J Ophthalmol Clin Res 2:030


同社が開発を進めている遺伝子治療法はオプトジェネティクス(光遺伝学治療)と呼ばれるもので、2016年4月に英国マンチェスター大学と、網膜変性疾患の治療を対象とする開発権並びに全世界での販売権に関する独占契約を締結し、開発をスタートした。オプトジェネティクスとは、生存する網膜細胞のうちオン型双極細胞(視細胞から情報を受け取る細胞)をターゲットにヒトロドプシンを遺伝子導入(注射投与)することで、光感受性を持つタンパク質(ロドプシン)を発現させ、視機能を再生させる遺伝子療法となる。

マンチェスター大学におけるマウスを使った実験によれば、オプトジェネティクスで治療したマウスが、スクリーンに投影された襲いかかろうとするフクロウの映像に対して、正常なマウスとほぼ同じ距離の回避行動的反応を示すなど、網膜が持つ視機能のうち光受容の機能が回復したであろうことが確認されている。

現在、オプトジェネティクスの開発は同社以外にも複数のベンチャー企業で進められている。同社の開発する技術は、3千種類以上はあると言われている遺伝子変異の種類に依存しないことや、ヒト由来のロドプシンを使っているため炎症反応など副作用が最小限に抑えられること、他のタンパク質よりも高い光感度が得られる可能性が高いことなど、薬理効果や技術的な競合優位性が高いと考えられる。現在は開発の優先順位が下がっているものの、同技術の開発に成功すれば失われた視機能が回復する画期的な技術として世界的に注目を浴びることは間違いなく、今後の開発の進展に期待したい。


NASAプロジェクトの第2フェーズ開始時期は、新型コロナウイルスの影響と政権交代で未定に
5. 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置「SS-OCT」
宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT※(以下、SS-OCT)」の開発プロジェクトを、NASAと開発受託契約を締結して2019年より開始している。2020年2月に第1フェーズの開発を終了し、同年4月に開発報告書をNASA及びTRISHに提出、開発受託収入37百万円を2020年12月期に事業収益として計上した。

※OCT(Optical Coherence Tomography):赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のこと。緑内障や加齢黄斑変性等の網膜疾患患者の診断用として使用される。


今回の共同開発契約では、長期的な宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の約69%が、視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群を患っているという研究報告※をもとに、宇宙飛行が眼領域に与える影響を研究することが目的となっている。現在、国際宇宙ステーション(International Space Station、以下、ISS)で使用されている市販のOCTは据え置き型で操作が複雑であり、数ヶ月間の宇宙ステーション滞在中に宇宙飛行士は3回しか検査できなかった。今回、開発する超小型SS-OCTは携帯可能で、1人でも手軽に測定することができるため、毎日測定して保存しておくことが可能で、宇宙飛行が眼疾患に与える影響をより詳細に分析することが可能となる。

※かすみ目や視神経乳頭浮腫、眼球後部平坦症、綿花状白斑等の眼疾患症状が報告されている。


開発フェーズは全体で3ステップに分かれている。第1フェーズのミッションは、耐久性があり、安価な光源であるレーザーを使用した概念実証(POC)の確認で、複数のレーザーを用いて視神経乳頭の形状を高解像度で測定する装置を開発することであった。2020年1月にNASAでデモンストレーションを行ったが、NASAのプロジェクト担当者からも高い評価を受けている※。第2フェーズでは同装置を用いて、どのような画像解析手法で宇宙飛行に起因する眼疾患の検証を行うか、運用上で必要となる要件定義を固める工程となり、最終の第3フェーズでは、実際に宇宙飛行環境において使用可能な装置の開発を行うことになる。宇宙放射線被ばくに対する耐久性を持ち、かつ無重力環境下で宇宙飛行士自身が操作できるハードウェアの開発を提携企業と共同で進めていくことになる。ただ、第2フェーズの開始時期については未定の状態が続いている。新型コロナウイルス感染症拡大への対策費用に国家予算が振り向けられ、NASAへの予算が付きにくくなっているためだ。このため、同社も予算が付き次第プロジェクトを再開する予定にしている。

※NASA担当者から、次のようなコメントが寄せられている。「小型でありながら操作が簡単で、データ処理が早い。宇宙飛行中の眼球への影響を研究するために、ISSで大いに役立つと信じている」「フェーズ1の使用条件を満たしているだけでなく、期待以上の完成度であった。外見も洗練され、軽くて持ちやすい。フェーズ2での仕上がりが楽しみである」

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ

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