■業績動向
3. 2021年3月期の業績見通し
エノモト<6928>は2021年3月期の業績見通しを、売上高20,500百万円(前期比9.5%減)、営業利益930百万円(同31.6%減)、経常利益900百万円(同35.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益660百万円(同27.7%減)を見込んでいる。但し、この業績見通しでは、下期の業績見通しが上期より悪化することになり、やや保守的な印象を受ける。
2021年3月期下期から2022年3月期に向けての同社の環境予測によると、IC・トランジスタ用リードフレームは、自動車向け需要の回復などを背景に車載向け部品が当初想定以上に回復が早まり、民生向けなどを含む汎用的部品も2021年には回復する見込みである。ディスクリート半導体の世界市場の成長率が2020年の6.6%減から2021年の5.7%増へと改善することが予測されており(WSTS 2020年春季半導体市場予測)、同社も受注の回復を想定している。オプト用リードフレームは引き続き厳しい環境にあるが、オプトエレクトロニクスの世界市場の成長率が2020年の5.1%減から2021年には6.1%増へと回復するとの予測があり(WSTS2020年春季半導体市場予測)、同社は、車載向けなど高付加価値品を扱う日本メーカーの復調がカギではあるが、世界的な需要回復に乗る見込みである。コネクタ用部品は、5G転換期を迎えたスマートフォン向け、使用先が多様化しているウェアラブル向けが新型コロナウイルスの影響のなか堅調に推移していることから、今後の市場成長率も2020年4.3%増、その後も2025年まで年平均9.4%増の高い成長が見込まれている。車載向けについては、自動車関連市場の回復から2021年3月期下期が繁忙期となる見込みである。
当初、新型コロナウイルスの影響により、サプライチェーンの状況や市場全体の在庫状況を推量し2021年3月期の受注環境を予測するに足る信頼性の高い情報が入手できず、中国とフィリピンの生産拠点においても影響の波及期間や規模についての情報が不足していたことから、同社は業績予想を未定とした。しかし、引き続き先行きが不透明な状況にあるものの、電子部品業界の情報の収集と分析を進めたことで、新型コロナウイルスの最終製品の需要への影響がある程度分かってきたため、同社は2020年8月に2021年3月期業績見通しを公表した。しかしその後、国内の受注環境が想定ほど悪化せず、第2四半期後半以降に市場が回復基調となったが、第2四半期決算発表時に通期の業績見通しを変更しなかった。依然新型コロナウイルスの影響が不透明だからというのが同社の理由だが、第2四半期業績の相対的に高い利益進捗率を考慮すると、売上高で2ケタ減収、各利益でほぼ半減という下期6か月の業績見通しはやや保守的な印象だ。
とはいえ、同社の2021年3月期通期業績見通しが保守的なものになったことは、ある程度仕方ないと考える。例年11月ピークアウト後に需要は急激に落ちるのだが、第2四半期に得たメーカー予測が新型コロナウイルスの中でも強気だっただけに、尚更その後の落ち方が気になったようだ。しかし、10月~11月も国内売上は順調に推移している模様で、同社の環境予測同様、IC・トランジスタ用リードフレームの車載向け部品が想定以上に早く回復、コネクタ用部品もスマートフォン向け、ウェアラブル向けともに順調に伸びているようである。このように2021年3月期の経営環境は、想定以上に順調と考えた方がよさそうだ。一方、2022年3月期に向けて、新型コロナウイルスの影響の反動に加え、テレワークなどにより重要性が再認識されたサーバー向け需要も増えそうで、電子部品業界には追い風が吹くという予測がある。同社も、中長期的な需要拡大トレンドに乗るコネクタ用部品に加え、民生向けなどIC・トランジスタ用リードフレームの汎用的部品、世界的な需要底打ちが見込まれるオプト用リードフレームなどの増加が期待され、2022年3月期は、少なくとも2020年3月期の業績水準がターゲットになると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 2021年3月期の業績見通し
エノモト<6928>は2021年3月期の業績見通しを、売上高20,500百万円(前期比9.5%減)、営業利益930百万円(同31.6%減)、経常利益900百万円(同35.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益660百万円(同27.7%減)を見込んでいる。但し、この業績見通しでは、下期の業績見通しが上期より悪化することになり、やや保守的な印象を受ける。
2021年3月期下期から2022年3月期に向けての同社の環境予測によると、IC・トランジスタ用リードフレームは、自動車向け需要の回復などを背景に車載向け部品が当初想定以上に回復が早まり、民生向けなどを含む汎用的部品も2021年には回復する見込みである。ディスクリート半導体の世界市場の成長率が2020年の6.6%減から2021年の5.7%増へと改善することが予測されており(WSTS 2020年春季半導体市場予測)、同社も受注の回復を想定している。オプト用リードフレームは引き続き厳しい環境にあるが、オプトエレクトロニクスの世界市場の成長率が2020年の5.1%減から2021年には6.1%増へと回復するとの予測があり(WSTS2020年春季半導体市場予測)、同社は、車載向けなど高付加価値品を扱う日本メーカーの復調がカギではあるが、世界的な需要回復に乗る見込みである。コネクタ用部品は、5G転換期を迎えたスマートフォン向け、使用先が多様化しているウェアラブル向けが新型コロナウイルスの影響のなか堅調に推移していることから、今後の市場成長率も2020年4.3%増、その後も2025年まで年平均9.4%増の高い成長が見込まれている。車載向けについては、自動車関連市場の回復から2021年3月期下期が繁忙期となる見込みである。
当初、新型コロナウイルスの影響により、サプライチェーンの状況や市場全体の在庫状況を推量し2021年3月期の受注環境を予測するに足る信頼性の高い情報が入手できず、中国とフィリピンの生産拠点においても影響の波及期間や規模についての情報が不足していたことから、同社は業績予想を未定とした。しかし、引き続き先行きが不透明な状況にあるものの、電子部品業界の情報の収集と分析を進めたことで、新型コロナウイルスの最終製品の需要への影響がある程度分かってきたため、同社は2020年8月に2021年3月期業績見通しを公表した。しかしその後、国内の受注環境が想定ほど悪化せず、第2四半期後半以降に市場が回復基調となったが、第2四半期決算発表時に通期の業績見通しを変更しなかった。依然新型コロナウイルスの影響が不透明だからというのが同社の理由だが、第2四半期業績の相対的に高い利益進捗率を考慮すると、売上高で2ケタ減収、各利益でほぼ半減という下期6か月の業績見通しはやや保守的な印象だ。
とはいえ、同社の2021年3月期通期業績見通しが保守的なものになったことは、ある程度仕方ないと考える。例年11月ピークアウト後に需要は急激に落ちるのだが、第2四半期に得たメーカー予測が新型コロナウイルスの中でも強気だっただけに、尚更その後の落ち方が気になったようだ。しかし、10月~11月も国内売上は順調に推移している模様で、同社の環境予測同様、IC・トランジスタ用リードフレームの車載向け部品が想定以上に早く回復、コネクタ用部品もスマートフォン向け、ウェアラブル向けともに順調に伸びているようである。このように2021年3月期の経営環境は、想定以上に順調と考えた方がよさそうだ。一方、2022年3月期に向けて、新型コロナウイルスの影響の反動に加え、テレワークなどにより重要性が再認識されたサーバー向け需要も増えそうで、電子部品業界には追い風が吹くという予測がある。同社も、中長期的な需要拡大トレンドに乗るコネクタ用部品に加え、民生向けなどIC・トランジスタ用リードフレームの汎用的部品、世界的な需要底打ちが見込まれるオプト用リードフレームなどの増加が期待され、2022年3月期は、少なくとも2020年3月期の業績水準がターゲットになると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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