■サイバーリンクス<3683>の業績動向
2. セグメント別状況
各セグメントの状況は以下のとおり。
(1) ITクラウド事業
セグメント売上高は前年同期比40.8%増の5,033百万円、セグメント利益は同158.6%増の447百万円となった。前年同期比では大幅増収であったが、一部案件のずれ込み等により、計画に対しては87.5%にとどまった。
a) 流通クラウド分野
主力サービスである「@rms」やクラウド型EDIサービスの提供が順調に拡大したことで定常収入が着実に増加した。その一方で、機器販売は、前年同期に海外向けで大型案件があったこともあり減収となった。システム販売も一部案件の導入遅れなどから減収となった。この結果、売上高は前年同期比では増収となったが、計画に対しては下回った。
利益面では、「@rms」次期バージョンの開発に関連した償却費は増加したが、のれん償却の終了、コロナ禍による展示会中止に伴う費用減や顧客訪問自粛による出張費の減、前年同期に発生したシステム導入の解除に伴う補償費用の消失等により販管費は大幅に減少した。この結果、サブセグメント利益は増益となり、計画比でも大幅増となった。
b) 官公庁クラウド分野
コロナ禍による資材調達の遅れ等があったが、防災行政無線デジタル化工事の売上げが増加した。連結子会社の寄与もあり売上高は前年同期比で大幅増となったが、一部案件のずれ込み等により計画値は下回った。利益面では、原価削減努力などにより粗利率が改善し、サブセグメント利益は増益となったが、計画値に対してはやや下振れした。
c) ITクラウド事業の主なトピックス
1) 総務省及び経済産業省より「電子委任状取扱業務」の認定を取得
政府は様々な手続きが電子的に行われる「デジタルファースト」を推進しているが、電子委任状の普及もその一環である。電子委任状の記録方式には、「電子証明書方式」「委任者記録ファイル方式」「取扱事業者記録ファイル方式」の3つがある。「電子証明書方式」は2018年11月時点で4事業者5業務が認定されており、電子署名及び認証業務に関する法律による認定認証業務を認定された業者が行うが、利用開始にあたっての手続きの手間やコストの課題がある。これに対し、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」は、安価で利用することができ、効果的な活用が期待されている。
一方、企業間の電子契約等においては、「当事者型」「事業者型(立会人型)」「電子委任状」の3つの電子署名方式がある。「当事者型」は電子認証局による厳格な本人確認が必要なため、手間や時間がかかることに加えてコストの課題がある。また、「事業者署名型(立会人型)」は十分な本人確認が行われない可能性もあり、なりすましのリスクがある。これに対して「電子委任状」は、国民の誰もが無料で持つことができるマイナンバーカードで本人確認を行うことで、「当事者型」より安価で「事業者型(立会人型)」よりも確実に本人確認ができる。
2020年7月に同社は、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」での「電子委任状取扱業務※」の認定を取得した。同社においては、国民の誰もが持つことのできるマイナンバーカードに搭載された電子証明書を電子委任状と組み合わせることで、企業の従業員等が業務上作成する電子書類のやり取りに必要な情報を全て電子的に証明するとともに、その電子委任状を保管する。これにより、マイナンバーカードを利用して、本人に代わって電子的に手続を行う者の代理権を簡易かつ確実に証明することが可能となる(下図参照)。
※「電子委任状」とは、法人の代表者等が従業員等に代理権を与えた旨を表示する電磁的記録のことで、「電子委任状取扱業務」とは、代理権授与を表示する目的で、法人等の委託を受けて電子委任状を保管し、関係者に対し当該電子委任状を提示し又は提出する業務のことをいう。
今回、同社はこの「電子委任状取扱業務」の認定を取得したが、これが即座に業績に寄与するわけではない。しかしこの認定を得たことは同社の技術力が認められた証左でもあり、一方で公的個人認証サービスにおける総務大臣の認定取得(2017年)、時刻認証業務認定事業者の認定取得(同)と合わせて、「電子政府・自治体」への対応が整いつつあると言える。長い目で見れば、同社の新たな事業の柱となっていく可能性はある。
2) 小売向けクラウドEDIサービスが大手ドラッグストア(ツルハホールディングス)、大手スーパー(オークワ)に採用
既述のとおり、これまで同社の主要顧客は中小規模の食品スーパーであったが、今回ドラッグストアチェーン大手のツルハホールディングス<3391>及び大手スーパーであるオークワ<8217>に同社システムが採用された。今後同社事業がこれらの分野へも拡大していく可能性を示唆している。
3) 小中学校向け校務支援サービス「Clarinet」が高槻市統合型校務支援システムに採用
2020年8月に採用され、2021年から稼働予定である。同システムは大阪府では初めての採用となり、今後も全国展開を推進する。
(2) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は前年同期比30.6%減の1,360百万円、セグメント利益は同21.2%減の189百万円となった。
コロナ禍に伴う緊急事態宣言発令を受け、4月から5月にかけてドコモショップの営業時間短縮及び業務縮小の措置を講じたことから、一時的に携帯電話の販売台数が落ち込み前年同期比で減収となった。元々減収予想ではあったが、売上高は計画以上に下振れした。利益面では、重点目標達成によるインセンティブ収入が前年同期を上回ったこと等により利益率は改善したものの、販売台数の落ち込みをカバーするには至らず、セグメント利益は減益となったが、計画比は上振れた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2. セグメント別状況
各セグメントの状況は以下のとおり。
(1) ITクラウド事業
セグメント売上高は前年同期比40.8%増の5,033百万円、セグメント利益は同158.6%増の447百万円となった。前年同期比では大幅増収であったが、一部案件のずれ込み等により、計画に対しては87.5%にとどまった。
a) 流通クラウド分野
主力サービスである「@rms」やクラウド型EDIサービスの提供が順調に拡大したことで定常収入が着実に増加した。その一方で、機器販売は、前年同期に海外向けで大型案件があったこともあり減収となった。システム販売も一部案件の導入遅れなどから減収となった。この結果、売上高は前年同期比では増収となったが、計画に対しては下回った。
利益面では、「@rms」次期バージョンの開発に関連した償却費は増加したが、のれん償却の終了、コロナ禍による展示会中止に伴う費用減や顧客訪問自粛による出張費の減、前年同期に発生したシステム導入の解除に伴う補償費用の消失等により販管費は大幅に減少した。この結果、サブセグメント利益は増益となり、計画比でも大幅増となった。
b) 官公庁クラウド分野
コロナ禍による資材調達の遅れ等があったが、防災行政無線デジタル化工事の売上げが増加した。連結子会社の寄与もあり売上高は前年同期比で大幅増となったが、一部案件のずれ込み等により計画値は下回った。利益面では、原価削減努力などにより粗利率が改善し、サブセグメント利益は増益となったが、計画値に対してはやや下振れした。
c) ITクラウド事業の主なトピックス
1) 総務省及び経済産業省より「電子委任状取扱業務」の認定を取得
政府は様々な手続きが電子的に行われる「デジタルファースト」を推進しているが、電子委任状の普及もその一環である。電子委任状の記録方式には、「電子証明書方式」「委任者記録ファイル方式」「取扱事業者記録ファイル方式」の3つがある。「電子証明書方式」は2018年11月時点で4事業者5業務が認定されており、電子署名及び認証業務に関する法律による認定認証業務を認定された業者が行うが、利用開始にあたっての手続きの手間やコストの課題がある。これに対し、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」は、安価で利用することができ、効果的な活用が期待されている。
一方、企業間の電子契約等においては、「当事者型」「事業者型(立会人型)」「電子委任状」の3つの電子署名方式がある。「当事者型」は電子認証局による厳格な本人確認が必要なため、手間や時間がかかることに加えてコストの課題がある。また、「事業者署名型(立会人型)」は十分な本人確認が行われない可能性もあり、なりすましのリスクがある。これに対して「電子委任状」は、国民の誰もが無料で持つことができるマイナンバーカードで本人確認を行うことで、「当事者型」より安価で「事業者型(立会人型)」よりも確実に本人確認ができる。
2020年7月に同社は、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」での「電子委任状取扱業務※」の認定を取得した。同社においては、国民の誰もが持つことのできるマイナンバーカードに搭載された電子証明書を電子委任状と組み合わせることで、企業の従業員等が業務上作成する電子書類のやり取りに必要な情報を全て電子的に証明するとともに、その電子委任状を保管する。これにより、マイナンバーカードを利用して、本人に代わって電子的に手続を行う者の代理権を簡易かつ確実に証明することが可能となる(下図参照)。
※「電子委任状」とは、法人の代表者等が従業員等に代理権を与えた旨を表示する電磁的記録のことで、「電子委任状取扱業務」とは、代理権授与を表示する目的で、法人等の委託を受けて電子委任状を保管し、関係者に対し当該電子委任状を提示し又は提出する業務のことをいう。
今回、同社はこの「電子委任状取扱業務」の認定を取得したが、これが即座に業績に寄与するわけではない。しかしこの認定を得たことは同社の技術力が認められた証左でもあり、一方で公的個人認証サービスにおける総務大臣の認定取得(2017年)、時刻認証業務認定事業者の認定取得(同)と合わせて、「電子政府・自治体」への対応が整いつつあると言える。長い目で見れば、同社の新たな事業の柱となっていく可能性はある。
2) 小売向けクラウドEDIサービスが大手ドラッグストア(ツルハホールディングス)、大手スーパー(オークワ)に採用
既述のとおり、これまで同社の主要顧客は中小規模の食品スーパーであったが、今回ドラッグストアチェーン大手のツルハホールディングス<3391>及び大手スーパーであるオークワ<8217>に同社システムが採用された。今後同社事業がこれらの分野へも拡大していく可能性を示唆している。
3) 小中学校向け校務支援サービス「Clarinet」が高槻市統合型校務支援システムに採用
2020年8月に採用され、2021年から稼働予定である。同システムは大阪府では初めての採用となり、今後も全国展開を推進する。
(2) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は前年同期比30.6%減の1,360百万円、セグメント利益は同21.2%減の189百万円となった。
コロナ禍に伴う緊急事態宣言発令を受け、4月から5月にかけてドコモショップの営業時間短縮及び業務縮小の措置を講じたことから、一時的に携帯電話の販売台数が落ち込み前年同期比で減収となった。元々減収予想ではあったが、売上高は計画以上に下振れした。利益面では、重点目標達成によるインセンティブ収入が前年同期を上回ったこと等により利益率は改善したものの、販売台数の落ち込みをカバーするには至らず、セグメント利益は減益となったが、計画比は上振れた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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関連銘柄
銘柄 | 株価 | 前日比 |
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3391
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(13:06)
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3683
|
748.0
(12:32)
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+9.0
(+1.21%)
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8217
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923.0
(12:59)
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-5.0
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