株価の底値まであと一歩
しかし、市場全体としては、再度下落する可能性は高い。そのときにまた16000円の水準をキープし、かつ欧米の感染拡大防止に一定の成果が見られれば、東京市場は二番底を形成し、その後の強い反発に期待が出来る。
しかしそれに失敗すれば、13000円程度までの下落も視野に入れなくてはならない。欧米の新型コロナウィルス封じ込めの成果は未知数と言わざるを得ない。
現在のところ、政府日銀は、株式市場での成功を収めている。
日経平均では、10年移動平均(16093円)など多くの指標が底値と示唆する16000円前半の水準を、現在の処、死守しているからだ。それだけではなく、前週末比では9業種がプラスで終わり、日経平均以外の指標、TOPIXやJPX日経400は、先週、上昇に転じている。こういった状況からは、銘柄を選べば、リバウンドが取れる可能性を示唆することができる。しかし、リバウンドが取れるための条件は、為替市場だ。ここ数日の戻りの大きな原因は、円安だと言える。急激に進んだ円高が止まり、円安に急展開したことで、株式市場は安心感を取り戻し、政府日銀の介入を素直に受け入れた。
しかし、安心するのは早計だろう。短期的には、米国欧州市場との連動性が薄れ、このような反発に入る局面も出てくる。下落の幅とスピードを考えれば、どのような材料であったにせよ、ここで買い戻しが来ても当然だと言える。また、感染の中心は欧米に移っており、国内感染状況のピークアウトが近い印象があるのは事実だ。国内市場だけを対象にビジネスをしている銘柄や、ネット関連などで他の銘柄の信用担保割れに伴って売られた銘柄は、すでに一旦戻りに入っている。
問題は、東京市場が一旦どこまで反発し、どこから下がるか、だろう。今週仮に上昇したとしても、今後反落する局面はまだ十分に考えられる。まずはドルがどこまで強さを維持するか、だ。FRBの金融緩和策によってドルは急落し、その後、「有事のドル買い」が復活し、買い戻された。しかし、感染拡大の中心地が欧米に移った今、ドルが強いことへの疑問は再度提起される可能性がある。
一方、東証は45日ルールを緩和し、新型コロナの影響の業績予想への対応を見極めるまで「未定である」などの公表を急ぐよう促している。これに対応し、一部の企業からはそのような開示が出ているが、まだほとんどの企業は対応に悩んでいる。当然、大きな業績の下方修正などが相次ぐ可能性があり、市場は警戒感を強める局面が来るだろう。
もちろん、東京五輪の行方もまた注目される。開催の延期はすでに織り込んでいるだろうが、どのような対応策が出てくるか、こちらも予断を許さない。
こういった不安定要素に対する答えが徐々に出てくる中、株式市場は当面、上下激しい動きを続けるだろう。
しかし、今回の新型コロナウィルス問題は、世界経済のサプライチェーンを崩したとは言えない。各国が適切な政策を行い、金融危機への対処をするならば、株価の底値まであと一歩であり、1年後、この株価株価水準は、歴史に残るほど低い位置であったということが出来るようになるだろう。