S&P500月例レポート(2019年12月配信)<後編>
新規株式公開(IPO)
→WeWorkの親会社でシェアオフィスを運営するWe Companyは、IPOを撤回(および従業員を一部削減)して以降、流動性問題に直面しており、既に株式の1/3を保有するソフトバンク(SFTBY)が経営権の取得と出資比率の引き上げを含む95億ドルの支援計画を提示しました。We Companyの企業価値は80億ドルと評価されています(従来の評価額は470億ドル)。11月後半には、WeWorkは従業員1万2,500人のうち2,400人を削減することを明らかにしました。
○サウジアラビアは国営石油会社Aramco(ARMCO)を2019年12月11日付でサウジアラビア証券取引所に上場する見通しです。
→Aramco(世界の石油生産量の10%を占める)が提出したIPO目論見書(658ページ)では、売出価格は設定されていませんでした。
→IPOでは株式の1.5%が売り出され、時価総額は1兆6,000億~1兆7,100億ドルとなる見通しで、サウジアラビアが見込んでいた2兆ドルには届かないとみられます。調達額は、2014年にAlibaba(BABA)が調達した250億ドルに迫る規模になると予想されます。株式はサウジアラビアの証券取引所に上場し、米国で取引することはできません(注:売出価格に基づくと時価総額は世界最大となる見通しですが、取引可能な株式の総額では世界で418位付近に位置します)。
○ビール大手のAnheuser-Busch InBev(BUD)は香港事業をスピンオフし、Budweiser Brewing APACとして上場しました。
○フィットネス機器を手掛けるPeloton(PTON、IPO実施日2019年9月26日)
→IPO価格29ドル(最高値35.75ドル、最安値20.46ドル)、11月末の終値35.23ドル(10月末の終値23.87ドル)
○歯列矯正サービスを提供するSmileDirectClub(SDC、2019年9月12日)
→IPO価格23ドル(最高23ドル、最安8.73ドル)、11月末9.97ドル(同11.69ドル)
○ペットフードを販売するChewy(CHWY、2019年6月14日)
→IPO価格22ドル(最高41.34ドル、最安21.68ドル)、11月末24.76ドル(同24.67ドル)
○配車サービスUber(UBER、2019年5月10日)
→IPO価格45ドル(最高47.08ドル、最安25.58ドル)、11月末29.60ドル(同31.46ドル)
○植物由来の代替肉を生産するBeyond Meat(BYND、2019年5月2日)
→IPO価格25ドル(最高239.71ドル、最安45.00ドル)、11月末82.86ドル(同84.45ドル)
○ソフトウエア開発会社Zoom Video Communications(ZM、2019年4月18日)
→IPO価格36ドル(最高107.34ドル、最安36ドル)、11月末74.50ドル(同69.89ドル)
○ソーシャルネットワークサービス会社Pinterest(PINS、2019年4月18日)
→IPO価格19ドル(最高36.83ドル、最安18.38ドル)、11月末19.48ドル(同25.13ドル)
○配車サービスLyft(LYFT、2019年3月29日)
→IPO価格72ドル(最高88.60ドル、最安37.07ドル)、11月末48.98ドル(同41.44ドル)
注目点
○9月の米国政府の関税収入は8月から9%増加し、前年同月比では59%増となる70億ドルと過去最高となりました。
○「世界」が5Gの導入と活用を進める(また競争も激しくなる)中、中国は研究機関や大学から成る専門家チームに次々世代通信規格となる6Gの研究開発に着手するように指示しました。
○ネット通販最大手のアリババの「独身の日(11月11日)」の売上高は昨年の308億ドル(当時の過去最高)からさらに拡大し、380億ドルを上回る過去最高額を記録しました。
利回り、金利、コモディティ
○米国10年国債利回りは10月の1.69%から1.78%に上昇して月末を迎えました(2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは前月末の2.18%から2.20%に上昇して月を終えました(同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは10月末の1ポンド=1.2928ドルから1.2931ドルに上昇し(2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル、2016年末は1.2345ドル)、ユーロは10月末の1ユーロ=1.1154ドルから1.1018ドルに下落しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は10月末の1ドル=108.02円から109.48円に下落し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、中国元は10月末の1ドル=7.0387元から7.0326元に上昇して11月を終えました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。
○原油価格は10月末の1バレル=54.14ドルから55.42ドルに上昇して月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は10月末の1ガロン=2.692ドルから2.672ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。
○金価格は10月末の1トロイオンス=1,515.40ドルから1,470.40ドルに下落して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。
○VIX恐怖指数は10月末の13.22から12.62に下落して月末を迎えました。月中の最高は14.17、最低は11.42でした(同16.12、同11.05、同14.04)。
世界の株式市場
○米国市場に下支えされた11月の世界の株式市場は、49市場中27市場が上昇しました。上昇した市場の数は10月の43市場、9月の36市場から減少しました(8月は厳しい月で上昇したのは3市場でした)。貿易問題が前進し、中央銀行は景気支援型の金融政策を継続しました。総じて、先進国市場が新興国市場よりも良好なパフォーマンスを見せました。11月はそれ以前の2カ月間ではアンダーパフォームしていた米国(世界の株式市場の54.0%を占める)がアウトパフォームしました。世界の株式市場は11月に2.31%上昇しました。10月は2.70%上昇、9月は1.88%の上昇でした(8月は2.68%の下落)。米国市場の3.57%上昇を除くと、グローバル市場は11月に0.88%上昇しました。
→過去3カ月間ではグローバル市場は7.05%の上昇、米国の7.32%の上昇を除くと、6.77%の上昇でした。年初来ではグローバル市場は19.58%の上昇、米国の25.04%の上昇を除くと、13.60%の上昇でした。より長期間で見ても、米国の上昇率が突出しています。過去1年間では、グローバル市場は10.78%上昇しましたが、米国の13.19%の上昇を除くと、8.08%の上昇となっています。過去2年間で見ると、グローバル市場は7.04%の上昇でしたが、米国の17.28%の上昇を除くと3.30%の下落となっています。過去3年間では、グローバル市場は31.03%上昇しましたが、米国の40.70%上昇を除くと、20.94%の上昇でした。
○11月にS&Pグローバル総合指数の時価総額は1兆2,630億ドル増加しました(10月は1兆4,710億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は11月に2,250億ドル増加し(同8,970億ドル増)、米国市場は1兆380億ドル増加しました(同5,740億ドル増)。
○11月のまとめ
→新興国市場は11月に0.08%上昇し、過去3カ月間では3.82%上昇、年初来では9.23%上昇、過去1年間では6.18%の上昇となりました。
→先進国市場は11月に2.59%上昇(米国を除くと1.13%上昇)、過去3カ月間では7.30%上昇(同7.26%上昇)、年初来では20.85%上昇(同14.91%上昇)、過去1年間では11.36%の上昇(同8.68%上昇)となっています。
o セクター間のリターンのばらつきは拡大し、11セクター中9セクターが上昇しました(10月は9セクター、9月は10セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(ヘルスケア、4.81%上昇)と最低のセクター(公益事業、2.28%下落)の騰落率の差は7.09%(過去1年間の平均は7.20%)と、10月の5.32%から拡大し、年初来では35.65%(10月末時点は29.57%)となりました。
○新興国市場は11月に0.08%上昇しました。10月は3.85%上昇、9月は1.16%の上昇でした。過去3カ月間では5.13%上昇、年初来では9.23%の上昇となりました。過去1年間では6.18%の上昇、過去2年間では4.73%の下落、過去3年間では21.57%の上昇となっています。
→11月は24市場中11市場が上昇し、10月の20市場から減少しました(9月は14市場が上昇)。パキスタンのパフォーマンスが最高で、13.23%上昇しました。しかしながら、年初来では依然として10.18%の下落となっています。2番目がトルコで7.34%上昇し、年初来では9.07%の上昇となりました。続いてクウェートが11月は5.42%上昇し、年初来でも19.38%の上昇となっています。今月もパフォーマンスが最低となったのはチリで、10月の7.98%の下落に続いて11月も12.31%下落しました。年初来では26.07%の下落となりました。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはコロンビアで、11月は5.24%下落しましたが、年初来では13.73%の上昇となっています。これに続くのがエジプトの4.34%の下落ですが、年初来では22.55%上昇しています。
○先進国市場は11月に全体で2.59%上昇しましたが、米国を除くリターンは1.13%でした。先進国市場は過去3カ月間では7.30%の上昇(米国を除くと7.26%の上昇)、年初来では20.85%の上昇(同14.91%上昇)、過去1年間では11.36%の上昇(同8.59%上昇)となりました。過去2年間では8.49%上昇しましたが、米国を除くと2.85%の下落、過去3年間では32.21%の上昇、米国を除くと20.89%の上昇でした。
→11月は25市場のうち16市場が上昇し、上昇した市場の数は10月の23市場、9月の22市場から減りました(8月はわずか2市場でした)。パフォーマンスが最高となったのはニュージーランドで、11月は6.84%の上昇、年初来では24.12%の上昇となっています。2番目はアイルランドで、11月は5.03%上昇、年初来では24.55%上昇、3番目はイスラエルで11月は4.93%上昇、年初来では19.42%の上昇となっています。パフォーマンスが最低だったのは香港で(抗議行動が続いているため)、11月は1.94%の下落、年初来では0.96%の上昇となりました。次いで振るわなかったのは韓国で、11月は1.79%の下落、年初来でも1.32%の下落となっています。これにフィンランドが続き、11月は1.59%の下落、年初来では1.94%の上昇となりました。
→注目すべき点として、カナダは11月に2.25%上昇(年初来では21.76%上昇)、ドイツは1.96%上昇(同15.88%上昇)、日本は0.58%上昇(同14.48%上昇)、英国は1.67%の上昇(同11.88%上昇)となりました。
S&P 500指数
S&P 500指数は10月末の3,037.56から3.40%上昇し(配当込みのトータルリターンは3.63%)、3,140.98ドルで月を終えました。10月は2.04%の上昇(同プラス2.17%)でした。同指数は過去3カ月では7.33%(同プラス7.86%)、年初来では25.30%(同プラス27.63%)、過去1年間では13.80%(同プラス16.11%。注:2018年12月は9.18%下落しており、それ以降で見た場合、リターンは大きく上昇します)上昇しています。
ダウ平均は10月末の27,046.23ドルから3.72%上昇し(同プラス4.11%)、28,051.41ドルで月を終えました。10月は0.57%の上昇(同プラス0.84%)でした。同指数は過去3カ月では6.24%(同プラス6.87%)、年初来では20.25%(同プラス23.05%)、過去1年間では9.84%(同プラス12.48%。S&P 500指数同様、同指数も2018年12月に8.66%下落)上昇しました。
S&P 500指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は10月の0.86%(9月は0.79%)から、11月としては2017年(0.48%)以来の低水準となる0.49%に低下し、年初来では0.88%となりました(10月末時点は0.91%)。同指標は2018年が1.21%、2017年が0.51%(1962年以降の最低、平均は1.43%)でした。出来高は10月の前月比9%減の後、10%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では5%減少しました。前日比で1%以上変動した日数は、10月の23営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)に対して、20営業日中ゼロとなりました。年初来では231営業日中37日(上昇が22日、下落が15日)となっています。日中の変動率が1%以上となった日数は、10月の23営業日中7日に対して20営業日中ゼロとなりました(年初来では231営業日中71日、2018年は251営業日中110日)。
セクター間のリターンのばらつきは拡大し、11セクター中9セクターが上昇しました(10月は9セクター、9月は10セクター)。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、5.16%)と最低のセクター(公益事業、マイナス2.30%)の騰落率の差は7.46%(1年平均は7.20%)と、10月の7.40%から拡大しました。この騰落率の差は年初来では35.65%(10月末時点は29.57%)となりました。11月は、米国の政治(弾劾)がテレビ、新聞、ソーシャルメディアを賑わした一方、企業業績と通商協議が市場を左右しました(決算はほぼ終了し、今後は政治が材料になるとみられます)。11月は、情報技術セクターが10月の3.81%上昇の後に5.16%上昇し、パフォーマンスのトップとなりました。同セクターは年初来では41.78%上昇しました。
注目すべき点として(市場を主導した銘柄)、上場銘柄の時価総額上位2銘柄が好調となり、ソフトウエア大手のMicrosoft(MSFT)が5.6%、iPhoneメーカーのApple(AAPL)が7.4%上昇し、年初来でそれぞれ49.0%と69.4%上昇しました。この2銘柄でS&P 500指数の年初来のトータルリターンの14.4%を占めています。10月にパフォーマンストップだったヘルスケア(5.00%上昇)も、メディケア・フォー・オール(国民皆保険)と薬価をめぐる政治的話題などが要因となって株価が抑制されたものの、その後、市場のリスクオン・モードが優勢となる中で、さらに4.85%上昇しました。同セクターは年初来では14.73%上昇と、市場平均を下回っています。
金利が低下し、市場が現在の水準を受け入れるとともに、FRBが12月のFOMC会合で金利の据え置きが予想される中、金融が4.83%上昇して僅差で続きました。同セクターは年初来では26.03%上昇しました。コミュニケーション・サービスは3.74%上昇し、年初来では28.43%上昇しました。
公益事業は2.30%下落(年初来では18.52%上昇)で、パフォーマンス最下位となりました。不動産もリスクオン・モードが逆風となる中(配分見直しのための売り)、1.97%下落しました(年初来では23.95%上昇)。消費関連セクターは市場全体を下回り(前月に続き、ただしリターンはプラス)、生活必需品が1.08%上昇して年初来で21.50%上昇となり、一般消費財は1.14%の上昇で年初来では22.94%の上昇でした。
個別銘柄の騰落状況を見ると、11月は値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差が拡大し、5対2の割合で値上がり銘柄数が上回りました。11月の値上がり銘柄数は366銘柄(平均上昇率は5.97%)と、10月の290銘柄(同5.54%)から増加しました(9月は11月と同数の366銘柄)。10%以上上昇した銘柄は58銘柄(平均上昇率は14.63%)と10月の44銘柄、9月の46銘柄から増加しました。3銘柄が25%以上上昇しました(10月は4銘柄)。一方、値下がり銘柄数は139銘柄(平均下落率は4.06%)と10月の214銘柄から減少しました(9月は139銘柄)。10%以上下落した銘柄は8銘柄(平均下落率は18.11%)と10月の22銘柄から減少しました(9月は3銘柄)。2銘柄が25%以上下落しました(10月は1銘柄)。
過去3カ月間では、375銘柄(10月末時点は280銘柄)が上昇し、そのうち198銘柄(同81銘柄)が10%以上上昇した一方、130銘柄(同225銘柄)が下落し、そのうち24銘柄(同65銘柄)が10%以上下落しました。年初来では、432銘柄が上昇し(平均上昇率は29.99%、10月末時点は419銘柄)、そのうち370銘柄(同357銘柄)が10%以上、237銘柄(同197銘柄)が25%以上上昇した一方、68銘柄が下落し(平均下落率は14.90%、同81銘柄)、37銘柄(同46銘柄)が10%以上、17銘柄(同15銘柄)が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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