■要約
メディシノバ<4875>(MediciNova,Inc.)は、2000年に設立された米国本社の創薬ベンチャーで、東証JASDAQと米NASDAQに株式を上場している。現在は米国を中心に事業活動を行っており、主にMN-166(以下、イブジラスト)、MN-001(以下、タイペルカスト)の2つの低分子化合物、8つのプログラムの開発を進めている。将来的に、開発品のライセンスアウトだけでなく、販売も行うグローバル製薬企業を目指している。
1. イブジラストの開発動向
イブジラストは、進行型多発性硬化症を適応とするP2b治験において、プラセボ群に対して脳萎縮の進行率を48%遅らせる効果、及び継続する身体的障害の進行リスクを26%低下する効果が確認されたことを受け、2018年9月より複数のグローバル製薬企業と契約交渉を本格的に開始、契約締結が決まった後に、P3治験に入る予定となっている。進行型多発性硬化症は白人に多く発症する疾患で、患者数は全世界で230万人超、潜在的な市場規模は2兆円を超えると言われているほか、現在、副作用リスクの低い有効な治療薬がないこともあって、市場価値も大きくなるものと期待される。また、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を適応とするP2治験については患者の発症型にとらわれず、発症早期の患者群で良好なデータを得ていることから、2019年6月末までに単独でP3治験に進む予定となっている。こちらは米国だけで約3千億円の市場規模が想定されている。その他、2018年には新たな開発パイプラインとして、消化器系がんの抗がん剤治療後に発症する末梢神経障害を適応としたP2治験、グリオブラストーマ(神経膠芽腫)※を適応とするP1/2治験がそれぞれ開始されている。
※グリオブラストーマ…脳腫瘍のなかでも最も悪性度の高い腫瘍で、5年生存率は3〜6%。
2. タイペルカストの開発動向
タイペルカストについては、非アルコール性脂肪性肝炎(以下、NASH)及び特発性肺線維症(以下、IPF)※を適応対象とした開発が進んでいる。NASHに関してはP2治験の中間解析で主要評価項目である血清中性脂肪の大幅な減少効果が確認されたことを受け、2018年4月に早期終了し、現在データロック準備中となっている。データ結果を踏まえて今後の開発方針を決定していくが、中性脂肪の減少によって治療効果が得られる疾患はNASH以外にも多くあり、最も効果的な開発戦略で進めていく意向を示している。また、IPFに関してはP2治験を実施中で、目標症例15例のうち12例の登録が完了した段階。希少疾患のため2016年3月の治験開始から3年が経過したが、治療期間は1年のため最終的にP2治験が終了するのは早くても2020年前半ということになる。
※IPF…肺が線維化することで咳が出たり、酸素が上手く取り込めなくなり、症状が進行すると呼吸が維持できなくなる難病。平均生存期間は診断後わずか2~3年で、患者の3分の2以上が5年以内に亡くなる。根治療法が確立されてない疾患。
3. 業績動向
同社は開発ステージのため、業績については損失が続いている。2019年12月期の業績見通しは営業損失で26,066千ドル(前期は15,586千ドルの損失)を見込んでいる。治験費用の増加により研究開発費で前期比6,100千ドルの増加を見込んでいるほか、一般管理費も業績連動型ストック・オプションの会計上の費用計上により同4,400千ドルの増加を想定している。なお、2019年12月期も営業利益及び営業キャッシュ・フローがマイナスとなればJASDAQの上場廃止基準に抵触することになるが、パイプラインの導出やその他のオプション契約などを含めて多様な選択肢があり、クリアしていけるものと同社では考えている。
■Key Points
・イブジラストは進行性多発硬化症でライセンス契約交渉中、ALSは自社でP3治験を2019年期中に開始する予定
・NASH/NAFLD向けP2治験は良好なデータ結果により早期終了、次のステップの準備を進める
・大型契約が期待される進行型多発性硬化症のライセンス契約動向に注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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メディシノバ<4875>(MediciNova,Inc.)は、2000年に設立された米国本社の創薬ベンチャーで、東証JASDAQと米NASDAQに株式を上場している。現在は米国を中心に事業活動を行っており、主にMN-166(以下、イブジラスト)、MN-001(以下、タイペルカスト)の2つの低分子化合物、8つのプログラムの開発を進めている。将来的に、開発品のライセンスアウトだけでなく、販売も行うグローバル製薬企業を目指している。
1. イブジラストの開発動向
イブジラストは、進行型多発性硬化症を適応とするP2b治験において、プラセボ群に対して脳萎縮の進行率を48%遅らせる効果、及び継続する身体的障害の進行リスクを26%低下する効果が確認されたことを受け、2018年9月より複数のグローバル製薬企業と契約交渉を本格的に開始、契約締結が決まった後に、P3治験に入る予定となっている。進行型多発性硬化症は白人に多く発症する疾患で、患者数は全世界で230万人超、潜在的な市場規模は2兆円を超えると言われているほか、現在、副作用リスクの低い有効な治療薬がないこともあって、市場価値も大きくなるものと期待される。また、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を適応とするP2治験については患者の発症型にとらわれず、発症早期の患者群で良好なデータを得ていることから、2019年6月末までに単独でP3治験に進む予定となっている。こちらは米国だけで約3千億円の市場規模が想定されている。その他、2018年には新たな開発パイプラインとして、消化器系がんの抗がん剤治療後に発症する末梢神経障害を適応としたP2治験、グリオブラストーマ(神経膠芽腫)※を適応とするP1/2治験がそれぞれ開始されている。
※グリオブラストーマ…脳腫瘍のなかでも最も悪性度の高い腫瘍で、5年生存率は3〜6%。
2. タイペルカストの開発動向
タイペルカストについては、非アルコール性脂肪性肝炎(以下、NASH)及び特発性肺線維症(以下、IPF)※を適応対象とした開発が進んでいる。NASHに関してはP2治験の中間解析で主要評価項目である血清中性脂肪の大幅な減少効果が確認されたことを受け、2018年4月に早期終了し、現在データロック準備中となっている。データ結果を踏まえて今後の開発方針を決定していくが、中性脂肪の減少によって治療効果が得られる疾患はNASH以外にも多くあり、最も効果的な開発戦略で進めていく意向を示している。また、IPFに関してはP2治験を実施中で、目標症例15例のうち12例の登録が完了した段階。希少疾患のため2016年3月の治験開始から3年が経過したが、治療期間は1年のため最終的にP2治験が終了するのは早くても2020年前半ということになる。
※IPF…肺が線維化することで咳が出たり、酸素が上手く取り込めなくなり、症状が進行すると呼吸が維持できなくなる難病。平均生存期間は診断後わずか2~3年で、患者の3分の2以上が5年以内に亡くなる。根治療法が確立されてない疾患。
3. 業績動向
同社は開発ステージのため、業績については損失が続いている。2019年12月期の業績見通しは営業損失で26,066千ドル(前期は15,586千ドルの損失)を見込んでいる。治験費用の増加により研究開発費で前期比6,100千ドルの増加を見込んでいるほか、一般管理費も業績連動型ストック・オプションの会計上の費用計上により同4,400千ドルの増加を想定している。なお、2019年12月期も営業利益及び営業キャッシュ・フローがマイナスとなればJASDAQの上場廃止基準に抵触することになるが、パイプラインの導出やその他のオプション契約などを含めて多様な選択肢があり、クリアしていけるものと同社では考えている。
■Key Points
・イブジラストは進行性多発硬化症でライセンス契約交渉中、ALSは自社でP3治験を2019年期中に開始する予定
・NASH/NAFLD向けP2治験は良好なデータ結果により早期終了、次のステップの準備を進める
・大型契約が期待される進行型多発性硬化症のライセンス契約動向に注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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