■業績動向
1. 2018年3月期の業績動向
日本電技<1723>の2018年3月期の業績は、受注高29,830百万円(前期比14.7%増)、売上高27,160百万円(同1.8%減)、営業利益2,767百万円(同4.8%減)、経常利益2,831百万円(同4.3%減)、当期純利益2,056百万円(同1.7%増)となった。空調計装工事が東京オリンピック向け再開発需要などを追い風に受注好調、産業計装関連事業では企業の設備投資増による利幅の厚い工場設備が増えた。しかし、空調計装関連事業で翌期以後の完成計上比率が増加した影響などにより、売上高は微減となった。微減収に加え人手不足などによる販管費負担増により、営業利益は減益となった。なお、法人税額の特別控除などにより当期純利益は増益を確保した。
建設業界では公共投資は底堅く推移し、民間設備投資も企業景況感の改善などから緩やかな増加が続いた。同社は、空調計装関連事業の新設工事において「既設工事に繋がる物件の受注」、空調計装関連事業の既設工事において「提案型営業力強化による受注量確保」、産業計装関連事業において「事業拠点と業容の拡充による事業展開」を対処すべき課題に掲げて事業展開を図った。
空調計装、産業計装ともに受注は順調
2. 2018年3月期の事業別業績
空調計装関連事業は、受注高25,761百万円(前期比12.8%増)、売上高23,801百万円(同2.8%減)、調整前営業利益4,768百万円(同3.7%減)となった。受注工事高は、新設工事、既設工事ともにオフィスや公共施設向け物件などが増加したため25,459百万円(同13.0%増)と好調だった。内訳は、新設工事が8,517百万円(同24.5%増)、既設工事が16,941百万円(同8.1%増)だった。完成工事高は、新設工事で大型物件が減少したこと、既設工事では商業施設向け物件の工事高が減少したことなどにより23,499百万円(同2.8%減)となった。内訳は、新設工事が7,122百万円(同7.8%減)、既設工事が16,376百万円(同0.4%減)だった。次期繰越工事高は、新設工事及び既設工事ともに増加し、12,334百万円(同18.9%増)となった。制御機器類販売の受注高及び売上高は302百万円(同6.0%減)であった。
産業計装関連事業は、受注高4,069百万円(前期比28.6%増)、売上高3,359百万円(同6.4%増)、調整前営業利益248百万円(同2.0%増)となった。受注工事高は、電気工事が増加したことなどにより3,703百万円(同28.5%増)となった。完成工事高は、廃熱回収関連工事や産業用ロボット関連工事が増加したことなどにより2,993百万円(同4.1%増)だった。次期繰越工事高は、電気工事などの増加により1,799百万円(同65.2%増)となった。制御機器類販売の受注高及び売上高は365百万円(同29.6%増)であった。
3. 2018年3月期の財務状況
日本電技<1723>の2018年3月期末の総資産は30,533百万円(前期末比1,982百万円増)となった。流動資産は24,009百万円(同809百万円増)となったが、主な要因は完成工事未収入金の増加による。固定資産は6,524百万円(同1,172百万円増)となったが、主に投資有価証券の増加によるものである。負債は10,606百万円(同711百万円増)となったが、主に流動負債において工事未払金が増加したことによる。純資産は19,927百万円(同1,271百万円増)となったが、主に当期純利益の計上による利益剰余金の増加による。
2018年3月期末の現金及び現金同等物は9,014百万円(前期比9.3%減)となった。営業活動によるキャッシュ・フローは991百万円(同39.8%減)となったが、主に売上債権の増加1,802百万円に対して税引前当期純利益の計上2,825百万円及び仕入債務の増加686百万円があったことが要因である。投資活動によるキャッシュ・フローは988百万円(同25.9%増)となったが、主に投資有価証券の償還による収入300百万円に対して投資有価証券の取得による支出1,064百万円及び有形・無形固定資産の取得による支出331百万円があったことによる。財務活動によるキャッシュ・フローは933百万円(同74.9%増)となったが、主に配当金の支払額646百万円及び自己株式の取得による支出258百万円があったことによる。
総資産当期純利益率が7.0%、自己資本当期純利益率が10.7%と、資産収益性は満足のいく範囲と言える。回転率は高くないが、売上高営業利益率が2ケタあるなど収益性が高位で安定していることが背景だと考えられる。また、有利子負債がない上、自己資本比率や流動比率が高水準で、健全性指標は非常に良好と言える。課題は、増収率や営業増益率など成長性指標にばらつきがあることである。2020年へ向けて、既存施設でのシェア確保や産業計装関連事業の成長などにより、まずはトップラインを伸ばす必要があるかもしれない。
2019年3月期は繰り越し工事を順調に消化へ
4. 2019年3月期の業績見通し
2019年3月期の業績見通しについて、同社は受注高27,300百万円(前期比8.5%減)、売上高27,500百万円(同1.2%増)、営業利益2,750百万円(同0.6%減)、経常利益2,800百万円(同1.1%減)、当期純利益1,900百万円(同7.6%減)を見込んでいる。都市部を中心に堅調な建設需要が続くなか、繰り越し工事を順調に消化することで増収を確保する予定である。一方、オリンピック関連工事やインフラ工事の本格化を背景に、労務費や資材費、外注費がかさむ傾向にあり、営業利益は微減益予想となっている。なお、法人税額の特別控除がなくなるため当期純利益の予想減益幅が大きくなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2018年3月期の業績動向
日本電技<1723>の2018年3月期の業績は、受注高29,830百万円(前期比14.7%増)、売上高27,160百万円(同1.8%減)、営業利益2,767百万円(同4.8%減)、経常利益2,831百万円(同4.3%減)、当期純利益2,056百万円(同1.7%増)となった。空調計装工事が東京オリンピック向け再開発需要などを追い風に受注好調、産業計装関連事業では企業の設備投資増による利幅の厚い工場設備が増えた。しかし、空調計装関連事業で翌期以後の完成計上比率が増加した影響などにより、売上高は微減となった。微減収に加え人手不足などによる販管費負担増により、営業利益は減益となった。なお、法人税額の特別控除などにより当期純利益は増益を確保した。
建設業界では公共投資は底堅く推移し、民間設備投資も企業景況感の改善などから緩やかな増加が続いた。同社は、空調計装関連事業の新設工事において「既設工事に繋がる物件の受注」、空調計装関連事業の既設工事において「提案型営業力強化による受注量確保」、産業計装関連事業において「事業拠点と業容の拡充による事業展開」を対処すべき課題に掲げて事業展開を図った。
空調計装、産業計装ともに受注は順調
2. 2018年3月期の事業別業績
空調計装関連事業は、受注高25,761百万円(前期比12.8%増)、売上高23,801百万円(同2.8%減)、調整前営業利益4,768百万円(同3.7%減)となった。受注工事高は、新設工事、既設工事ともにオフィスや公共施設向け物件などが増加したため25,459百万円(同13.0%増)と好調だった。内訳は、新設工事が8,517百万円(同24.5%増)、既設工事が16,941百万円(同8.1%増)だった。完成工事高は、新設工事で大型物件が減少したこと、既設工事では商業施設向け物件の工事高が減少したことなどにより23,499百万円(同2.8%減)となった。内訳は、新設工事が7,122百万円(同7.8%減)、既設工事が16,376百万円(同0.4%減)だった。次期繰越工事高は、新設工事及び既設工事ともに増加し、12,334百万円(同18.9%増)となった。制御機器類販売の受注高及び売上高は302百万円(同6.0%減)であった。
産業計装関連事業は、受注高4,069百万円(前期比28.6%増)、売上高3,359百万円(同6.4%増)、調整前営業利益248百万円(同2.0%増)となった。受注工事高は、電気工事が増加したことなどにより3,703百万円(同28.5%増)となった。完成工事高は、廃熱回収関連工事や産業用ロボット関連工事が増加したことなどにより2,993百万円(同4.1%増)だった。次期繰越工事高は、電気工事などの増加により1,799百万円(同65.2%増)となった。制御機器類販売の受注高及び売上高は365百万円(同29.6%増)であった。
3. 2018年3月期の財務状況
日本電技<1723>の2018年3月期末の総資産は30,533百万円(前期末比1,982百万円増)となった。流動資産は24,009百万円(同809百万円増)となったが、主な要因は完成工事未収入金の増加による。固定資産は6,524百万円(同1,172百万円増)となったが、主に投資有価証券の増加によるものである。負債は10,606百万円(同711百万円増)となったが、主に流動負債において工事未払金が増加したことによる。純資産は19,927百万円(同1,271百万円増)となったが、主に当期純利益の計上による利益剰余金の増加による。
2018年3月期末の現金及び現金同等物は9,014百万円(前期比9.3%減)となった。営業活動によるキャッシュ・フローは991百万円(同39.8%減)となったが、主に売上債権の増加1,802百万円に対して税引前当期純利益の計上2,825百万円及び仕入債務の増加686百万円があったことが要因である。投資活動によるキャッシュ・フローは988百万円(同25.9%増)となったが、主に投資有価証券の償還による収入300百万円に対して投資有価証券の取得による支出1,064百万円及び有形・無形固定資産の取得による支出331百万円があったことによる。財務活動によるキャッシュ・フローは933百万円(同74.9%増)となったが、主に配当金の支払額646百万円及び自己株式の取得による支出258百万円があったことによる。
総資産当期純利益率が7.0%、自己資本当期純利益率が10.7%と、資産収益性は満足のいく範囲と言える。回転率は高くないが、売上高営業利益率が2ケタあるなど収益性が高位で安定していることが背景だと考えられる。また、有利子負債がない上、自己資本比率や流動比率が高水準で、健全性指標は非常に良好と言える。課題は、増収率や営業増益率など成長性指標にばらつきがあることである。2020年へ向けて、既存施設でのシェア確保や産業計装関連事業の成長などにより、まずはトップラインを伸ばす必要があるかもしれない。
2019年3月期は繰り越し工事を順調に消化へ
4. 2019年3月期の業績見通し
2019年3月期の業績見通しについて、同社は受注高27,300百万円(前期比8.5%減)、売上高27,500百万円(同1.2%増)、営業利益2,750百万円(同0.6%減)、経常利益2,800百万円(同1.1%減)、当期純利益1,900百万円(同7.6%減)を見込んでいる。都市部を中心に堅調な建設需要が続くなか、繰り越し工事を順調に消化することで増収を確保する予定である。一方、オリンピック関連工事やインフラ工事の本格化を背景に、労務費や資材費、外注費がかさむ傾向にあり、営業利益は微減益予想となっている。なお、法人税額の特別控除がなくなるため当期純利益の予想減益幅が大きくなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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