小型株へのシフトが起きているNY市場
今年に入ってから、NYダウは、1月の最高値26616ドルから3月の23533ドルへ調整し、その後一進一退を続けている。
2017年を通して急ピッチで上昇(年間25%以上)したことによる反動としては、正直、妥当な調整幅だといえる。決して今、NY市場で株式から、大きく資金が流出しているわけではない。そして、実のところ、今年に入ってから、NY市場では小型株が活況であり、そちらが投資家の主戦場となっているのだ。
年初来、S&P500は、1.5%の上昇を演じているが、S&P500小型株指数は、7%上昇している。こうした背景には、金利上昇とドル高、という大企業・大型株にとってマイナスになりやすい材料が、経済の基本的な環境に大きく占めている、ということがある。
もし、同じことが日本で近いうちに起こるのであれば、私たちは、資金の一部を大きく小型株へ動かすべきだ、ということになる。
しかし日本では、米国と違って、現在のところ、まだ金利は上がらず、円高も顕著ではない。したがって、いますぐに小型株への大きなシフトを考える必要は無いだろう。
しかし、東京市場でも、そのタイミングはやがて来る。
GDPが安定した数値で伸び始め、日銀が金融緩和策の見直しについて発言を始めれば、その時はくるだろう。しかし、米国に比べ、それは1年程度、遅れてくるサイクルだと推測できる。今後1年程度の間で日経平均が高値をつければ、小型株への資金シフトが本格化する可能性がある。
ただし、米国では短期的に経過した「業績相場」が、東京市場では一定の期間続く可能性があり、現状はその「業績相場」の最中にある。このような相場・経済環境の中では、一定のテーマの事業に収益と成長率が集約されるが、大企業は、様々な事業に分散されている分、リスクが分散される一方、成長性は限定される。
本当に高成長を享受するには、一定の事業集中をする企業に投資する必要があり、それは大型株ではない。しかし、現状の東京市場では、日経平均のような指数の魅力も捨てがたい。つまり、大型株では無いが、指数構成には入るような、もしくは高いβ値(日経平均、TOPIX連動性が高い)を持つ中型株にこそ、注目すべきだろう。
■最大のリスクを囁かれていたドイツ銀行
24日、ドイツ銀行が7000人削減のリストラ策を発表した。同社の株価はフランクフルトで4%超の下落となり、さらにコメルツバンクもアナリストレーティングを下げられた。この流れが、東京市場の金融株に波及する可能性もある。
ドイツ銀行の問題は、昨年から、「第2のリーマンショック」の懸念として世界中の市場でリスクとして認識されてきた。
このリスクは、好調な世界の株式市場の中で、常にどこかで引っかかっている、小骨のようなものだったと言って良い。
今回のリストラ策の発表で、この懸念は払しょくされたとして良いのか、そうではなく、逆にこれが「終わりの始まり」なのか、まだその判断はできない。
言えることは、「テールリスクに近いような材料を懸念していては、市場に取り残される」という現在の流れからいえば、このリスクは知って知らぬふりをしておくことが必要、ということだろう。
しかし、金融関連銘柄をポートフォリオの中で、できるだけ小さい比率にする、ということは、十分に検討に値する。
また、こういった動きが、金融株の影響を大きく受けるTOPIXの動きを鈍くさせる可能性はあり、それらの点に留意すべきだろう。
ミリオンストック投資顧問特別アドバイザー 堀