2016年12月1日時点での主要市場見通し

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最新投稿日時:2016/12/02 22:27 - 「2016年12月1日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2016年12月1日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2016/12/02 22:27

花の一里塚~市場見通しサマリー

2016年12月1日時点での主要市場見通し

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基本シナリオと見通し数値について

 今号より、見通し期間を2017年12月までに延長した。短期的には、「トランプ相場」の行き過ぎ感があり、米新政権発足の1月にかけて、一旦内外株価や外貨相場は反落の恐れが強いと考えている。ただし長期的には、世界経済の持ち直しに沿った、株価上昇・外貨高の流れを、引き続き予想している。別の言い方をすれば、緩やかながら、ディスインフレ(日本はデフレ)+マイナスあるいはゼロ金利+安全で収益性の高い投資先選好から、マイルドインフレ+プラス金利+成長性指向投資へと、潮流が変化する動きだろう。

 ただし、それはすべての企業や産業が、何もしなくても救われる流れではない。引き続き競争は厳しく、リスクを取って工夫を凝らす企業や産業しか生き残れまい。個人も同様だ。その結果、失敗して消える企業や産業も多かろうが、新しく成長する企業や産業が現れることで、経済全体としては前進していこう。

 一方、政治的には、「何もせずに救われたい」といった層の不満が、無記名投票を媒介として噴出している。こうした層が、今後の政治に対し、勝手に抱いた期待を裏切られたと感じて勝手に失望し、政治に対する激しいバックラッシュとして表れる恐れがある。これが米国で潮流となる可能性が高く、それを先取りして、2017年中に米国株価や米ドル相場に変調が生じる恐れがある。内外株価や外貨相場のピークは、2017年末ではなく、その手前になる可能性を想定すべきだろう。

2016年12月までの予想について、具体的な修正は次の通り(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 16000~18000 ⇒ 1750019000
10年国債利回り(%) -0.3~0.3 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 97~108 ⇒ 110117
ユーロ(対円) 110~120 ⇒ 113125
豪ドル(対円) 75~85 ⇒ 7787

2017年6月までの予想について、具体的な修正は次の通り(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 16000~21000 ⇒ 17000~21000
10年国債利回り(%) -0.1~0.5 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 100~115 ⇒ 107117
ユーロ(対円) 110~130 ⇒ 変更なし
豪ドル(対円) 75~100 ⇒変更なし
 

シナリオの背景

・足元の「トランプ相場」は、想定以上の日米株高や米ドル高・円安をもたらした。ただし米国株価のバリュエーションは再び割高の範囲に戻っており(図表1)、株価は企業収益のさらなる拡大を、待つ必要があるところだ。実際の米国株価も、大統領選挙直後に比べ、上値が重くなってきている。

・徐々に米次期政権の閣僚人事が明確化しつつあるが、人選には不安を覚える向きも増えてきている。来年1月下旬の一般教書演説、2月上旬の可能性が高い予算教書演説を前に、大統領選直後の強気相場が、警戒モードに変化する展開を予想している。

・米国株以上に、日本株と円相場が、「踏み上げごっこ」のオモチャと化している。目先数日は、このゲームが持続する可能性はあるが、株と外貨の売り方がつぶされると、一気にポジションが手仕舞われて、日本株や外貨相場(対円)の反落が生じることが懸念される。

・後述のように、長い流れでは世界的な株高と外貨高を予想するので、あわてて買わず、狼狽して売らず、という投資姿勢が当面は望まれる。レバレッジをかけた取引は避けるべきだろう(もちろん、投資は責任を取れば何をやるのも自由なので、思いっきりレバレッジをかけて、短期的に大儲けしようと企むのは、勝手だ)。

(図表1)
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(図表2)
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・長期的には、世界の株価や外貨相場(対円)については、楽観している。世界の実質経済成長率は(図表2)、先進国は足踏み気味であるし、世界全体でも決して急加速はしないが、新興国中心に徐々に持ち直すと見込まれている。世界景気の持ち直しは、当然株高要因であるし、リスクを取って様々な国に投資しようとの動きが強まることは、「リスク回避のための円高」の裏返しで、円安・外貨高要因となる。

・ただ、表面的な実質経済成長率の高まりが極めて限定的でも、投資テーマ(パラダイム)は徐々にではあろうが、大きく変化していくことが想定される。それは、これまでの「ディスインフレ」(日本はデフレ気味)、「ゼロ・マイナス金利」、「利回りが高く安全な投資先志向」から、「マイルドインフレ」、「プラス金利」、「リスクはあるが成長性の高い資産への投資」へ、といった変化だ。

・トランプ新政権が、インフラ投資の拡大や減税により、成長志向ではないか、との足元の市場の評価は、述べたような投資テーマの変化に気づかされる、1つのきっかけだったのかもしれない(米次期政権の経済政策を高く評価するものではない)。

・中国に対するいたずらな悲観論は後退しており(ただし中国経済の成長率の緩やかな低下は長く続く)、ブラジルやロシアなどの経済成長率も、徐々に持ち直しの気配を見せている。これが国際商品市況の底入れに寄与している。エネルギー価格は、生産コストを大きく低下させた米シェールオイル・ガスの増産が見込まれるため、上値は極めて限定的であろうが、現水準から原油価格が横ばいでも、前年比ベースではこれまでの下落から上昇へと転じつつある(図表3)。

・米国株のイールドレシオをみると、これまでは長期的に上値が低下していく傾向線が存在した(図表4)。これは、米国経済の長期的な成長力の減退を示していた(PERも長期金利も、低くて当然という市場実態に移行してきた)ためだと推察されるが、足元の市場動向で、上値抵抗線を上抜けてきている。これは、証券市場における大きなトレンド変化の始まりかもしれない。

・このように、経済の成長率がじわりと高まり、物価が押し上がり、金利がある程度の水準に上がってくる、という展開を予想するわけだが、それはバブルの再来でも、努力しない企業や産業が救われることでもない。引き続き国際的な競争は厳しく、知恵を出して付加価値を生み出し続けないと、これまでの成長企業が、あっという間に消え去ることになるだろう。マクロ経済の大きな明るい変化は、これまでは努力する企業や産業すらも報われにくかった経済環境が、努力する企業や産業だけはそれに応じて相応に報われる経済環境になってくる、ということを意味すると考える。

・こうした経済環境下では、何もせずに、現金を抱えてじっとする企業は、淘汰されていくだろう。リスクを取って現金を何らかの形で有効に使う企業が、報われることになるだろう。

(図表3)
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(図表4)
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・しかし、厳しい競争に対して、政治的に抵抗する勢力はある。特に衰退する産業・企業においては、そこで働く人たちは、職を失うことに対する危機感が強い。しかし多くの識者が指摘するのは、そうした層は衰退する産業から拡大する産業に転職しようとの気概も、新しい産業で働くためにITスキルなどを学ぼうという意欲も、乏しいという点だ。

・こうした「自分は何も努力する気はないが、何かいいことが起こらないだろうか」といった層の不満は、外に向かっている。すなわち、「安値で輸出攻勢をかけてくる新興国が悪い」「職を奪う移民が悪い」といったようなものだ。こうした層は普段は静かだが、無記名投票になると本音を現し、英国のEU離脱や米トランプ政権の誕生を引き起こした。

・しかし前述のように、努力する企業や産業(そして労働者)は報われるが、そうでない企業や産業は報われない、という当たり前の経済環境が続くだろう。その時に、たとえば米国では、「トランプ政権に期待したが、何もしてくれない」との的外れな不満が爆発する恐れがある。そうした事態になれば、米次期政権は、支持率を大きく低下させて力を失うか、あるいは悪あがき(対中経済圧力を強める、保護貿易主義的な経済政策を一段と強化させる、国際的に活動する企業を叩いて米国内回帰を強制する、米ドル安を強く求める、など)に走る恐れが強まる。

・こうした米国内での政治的混乱がいつから始まるかは予断を許さないが、仮に 2018年以降にそうした事態に陥るとすると、市場はそれを先取りして 2017年のどこかから、米株価・米ドル相場の調整に陥る(下落しないまでも、少なくとも上昇の足が止まる)展開が懸念される。2017年の世界市場の株高・外貨高のピークは、年末ではなく年央近辺のどこかの可能性を想定する。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2016年11月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2016/11/1 時点)のレビュー

日経平均株価
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日経平均株価は、米大統領選挙の結果を受けての下落は極めて短期間に終わり、その後は想定以上の株価上振れとなった。ただし目先は売り方を踏み上げている感が強く、踏み上げが一巡すれば、一旦株価反落となる恐れが高い。予想レンジは足元だけを上方修正する。

②国内長期金利
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・10年国債利回りは、海外長期金利につれて上昇しようとしても、日銀の指値オペなどによって抑えられている。今後も、ほとんど動きのない推移を続けるだろう。

③外国為替相場
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・11月の外国為替市場では、「トランプ相場」により想定以上の米ドルの独歩高の様相が強かった。このため、年内の予想レンジを大幅に引き上げるが、短期的には米ドルは反落する可能性が高いと見込む。

・ユーロ・豪ドルも、米ドルにつれて対円で上昇力を高めたが、ほぼ予想レンジの範囲内だった。予想レンジの修正も、小幅にとどめる。

(以上)

 

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配信元: みんかぶ株式コラム

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