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最新投稿日時:2016/01/05 15:10 - 「2016年1月4日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2016年1月4日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2016/01/05 15:10

花の一里塚~市場見通しサマリー

2016年1月4日時点での主要市場見通し

 
00見通し
 

基本シナリオと見通し数値について

2016年の投資環境は、個別性が強いものの、極めてゆっくりと明るさを増そう、
~ただし日本株は年央髙、円相場は年後半ボックス推移

上記の表題は、前号(2015年12月号)をほぼ引き継いでいる。2016年の世界市場のシナリオも、全く変更はない。

以下は、前号と繰り返しの部分が多いが、2016年の投資環境は、全体観としては、極めて緩やかではあろうが、改善を持続しよう。ただし個々の企業、産業、国において、個別性が強く、明暗が分かれよう。
日米共通に、雇用の改善などに支えられて、緩やかな景気回復基調は損なわれていないと考える。ただし米国は、ドル高が重石となって製造業が冴えず、それが設備投資の抑制を引き起こしている。日本は、為替面では米国と逆にかつてと比べての円安にもかかわらず、複合的な要因で、輸出数量が減退している。
欧州は、一段と悪化するような状況にはなく、これまでの金融緩和の効果もあって、少しずつ底入れ持ち直しの動きをみせるだろう。新興諸国も、全般には2015年に比べ、実質経済成長率の持ち直しが見込まれる。ただし個別国の成長率の格差は大きいままと予想され、インドなど比較的堅調な経済成長が期待できる諸国と、ブラジル、ロシア、中国など状況が悪い諸国に分かれる。
そうしたなか、世界の株価、外貨の対円相場、米国等の長期金利は、傾向として、経済実態に沿った緩やかな上昇基調が見込まれる(すなわち、たとえば主要国の株価は、2016年初より2016年末の方が高いだろう)。

ただし、日本の株価は、7月の参議院選挙までは概ね上昇基調をたどろうが、その後は2017年の消費増税への懸念も前倒しで織り込むと想定され、株価上昇の勢いを失おう。
また、米ドル・円相場については、米国は米ドル高の悪影響を警戒しており、一方の日本でも、中小・中堅企業中心に円安による輸入物価上昇に対して懸念が寄せられていることもあって、米ドルの対円での上値余地は最大129円辺りまでに限られよう。まだ日米景気格差・金利格差が大きいため、若干の米ドル高・円安の余地があると見込むが、2016年後半は、125円を中心としたボックス圏内での推移を予想する。

世界市場の大きなテーマとしては、経済実態面では、種々のリスクを加味すると、2016年も依然として、先進国優位、新興国劣位、という状況が続こう。ただしそうした状況(特に米国経済の安定性が際立っているという点)は、市場に既に相当織り込まれていると考えられるため、いつか物色が先進国から新興国に移行する局面がありうるだろう。ただし、その移行のタイミングは定かにはわからない。また、そうした物色に流れの変化が起こるのは、もしかすると今年ではなく、2017年以降かもしれない。

具体的な予想レンジの修正については、2016年6月までのレンジについて、足元の相場状況を踏まえ、日経平均株価と国内長期金利について、予想レンジ下限だけを下方修正した。
2016年12月までの予想レンジについては、修正は全くない。

2016年6月までの予想レンジについて、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 19000~23000 ⇒ 18000~23000
10年国債利回り(%) 0.3~1.0 ⇒ 0.25~1.0
米ドル(対円) 115~130 ⇒ 変更なし
ユーロ(対円) 127~145 ⇒ 変更なし
豪ドル(対円) 85~105 ⇒ 変更なし

シナリオの背景

世界全般の投資環境、日米の注目点、国内株価や米ドル円相場のシナリオの背景、先進国から新興国へ物色の流れが変わるか、等については、前号(2015年12月1日付の12月号)で解説したので、ここでは繰り返さず、補足したい点だけを述べる。主な論点については、前号をご参照いただきたい。

まず、世界全般に2016年は景気が持ち直す方向で、米欧等主要国の株価は年末に向けて概ね上昇基調を見込むなかで、日本の株価は年央髙、年末安を予想している。その理由として前号では、年前半は日本でも同様に企業増益に沿った株高が期待されるが、1)7月の参院選前は、経済政策の追加(実際に、そうした経済政策が実態経済にどの程度押し上げ効果を及ぼすかは別として)が見込まれるが、選挙後はそうした期待が剥落しうる、2)2017年4月に予定されている消費増税(※1)の悪影響を、前倒しで株式市場が織り込みに行く、という点を挙げた。

(図表1)
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ここで、直近15回の参議院選挙について、選挙前(投票日1か月前~投票日前金曜日(※2))と選挙後(投票日後月曜日~投票日1か月後)の日経平均の騰落を調べた(図表1)。

※1 消費増税を再延期して、それをもって衆参ダブル選挙に安倍政権が打って出る、という観測も囁かれている。その可能性は否定できないが、軽減税率に関する議論が進んでいる現状で、増税再延期の公算は高くないと考えている。
※2 以前は土曜日に東京証券取引所では株式の取引が行われていたが、最近と揃えるため、土曜日を外し、全て金曜日までの株価騰落を計算している。


すると投票前は株価上昇が8回、株価下落が7回で、五分五分に近い。
一方、投票後は株価上昇が6回、株価下落が9回で、下落の方が優勢だ。しかも直近6回(1998~2013年)は、6回連続で参院選後に株価が下落している。
ここから、2016年は、参院選前は「参院選前だから」というわけではなく、企業増益などを反映して株価が上がり(すなわち、参院選前の経済政策発動がある程度「空振り」でも株価は上昇する)、参院選後は最近の傾向に沿って株価が下落する(今年下落すれば7回連続の下落)といった展開がありそうだ。

なお、年前半の株価上昇シナリオに反して、足元の市場は大いに波乱含みだ。大発会(1/4、月)の日経平均株価は、前日比で582.73円(3.06%)もの大幅下落となったが、これは後述するようなリスク要因(特に地政学的リスクと中国リスク)を懸念したためであると推察される。

(図表2)
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しかしこのところ、国内株価動向は一種の「陰の極」に差し掛かっていると見込まれる。
たとえば騰落レシオ(株数ベース並びに出来高ベース)(※3)をみると(図表2)、ともに80%近辺が底入れのメドとなっているようだ。こちらも直近では、銘柄数ベースでは12/25(金)の76.5%、出来高ベースでは12/28(月)の72.0%で、昨年については底入れしたようであり(ただし1/4(月)の株価下落でダメ押しとなっている可能性あり)、これからはむしろ国内株式市況の底入れ反転が期待できるのだろう。

なお、前号の当レポートでは、2016年に懸念されるリスクとして、次の4点を挙げた。
1)先進諸国内におけるイスラム過激派の大規模テロや、シリアを巡る国際情勢の混迷、
2)中国の景気悪化の大幅な加速、
3)商品市況の低迷持続による、資源国の財政悪化や商品先物で運用しているファンドの破たん、
4)米国長期金利の急速な跳ね上がりやジャンク債市場の崩壊。
前号ではこれらの項目を挙げたにとどまり、特に解説を行なわなかったので、今号で簡単に触れたい。

1)は、テロ等については予測しようもないが、地政学的リスクという観点では、足元で、サウジアラビアとイランの外交断絶(※4)が悪材料として取りざたされている。確かに中東地域の政治的不安定化につながるリスクは高いものの、もともと米国が意図的に同地域から手を引き始めて、一種の政治的空白地帯が生じ、かといってロシアも米国に代わって全面的に関与する意思も能力もないなか、地域大国であるトルコ、サウジアラビア、イランなどの思惑が交錯する状況となったことは、今さら始まったわけではない。
こうした中東の状況は、国際政治面で、手放しで楽観はできない。ただし、原油価格の動向を経由しての先進主要国市場への影響という点に限れば、これで中東地域からの原油供給の不安定化が懸念され、原油価格が上昇することとなれば、米エネルギー関連株などが上昇しよう(場合によっては、米国エネルギー産業の一人勝ち)。
本来はエネルギー輸入国である日本にとっては、原油価格下落の方が恩恵だが、原油価格が下がると「米エネルギー株が下落したため米国の株価指数が下がるので、日本株も売りだ」などとむしろ悪材料としてとらえてきた。これが今回のサウジアラビアとイランの断行を受けて原油価格が上昇した場合、「いや、やっぱり原油価格が上がることは日本にとって悪材料だ」と、原油価格が下がっても上がっても日本株売り、という見解が湧き上がってくるのであれば、まさに日本株は売られ過ぎ(心理的な行き過ぎ)であると言えよう。

※3 騰落レシオは、ある一定期間内の株価上昇銘柄数と株価下落銘柄数から計算される。
(図表2)での銘柄数ベースの騰落レシオは、25日間をとって、騰落レシオ=25日間の日々の株価上昇銘柄数合計÷下落銘柄数合計で算出している。また、出来高(売買株数)が多い銘柄が、相場全体を(上にも下にも)主導しているとも考えられる。そこで出来高ベースの騰落レシオを、騰落レシオ=25日間の日々の株価上昇銘柄の出来高合計÷下落銘柄の出来高合計で計算した。
※4 サウジアラビア(イスラム教スンニ派の国家)が、1/2(土)にシーア派の宗教指導者らをテロ活動に関与したとして処刑し、これに抗議するイラン(シーア派の国家)国内のデモが、同国内のサウジアラビア大使館を襲撃したため、1/3(日)にサウジアラビアがイランとの外交断絶を発表したもの。


(図表3)
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2)の中国景気の悪化については、1/4(月)に悪材料視された12月分の中国製造業の業況感指数(財新PMI、旧HSBC製造業業況感指数)をみると(図表3)、確かに11月の48.6から12月は48.2に、悪化はしている。しかし最近の最低値(2015年9月の47.2)を底抜けたわけでもなく、そもそも中国経済が減速していること自体は、かなり前から騒いでいたはずだ。この点でも、1/4(月)の日本を含むアジア諸国株の反応は、やり過ぎの感が強い。
また、1/4(月)の日経平均株価の前日比下落率は前述のように3.1%と、TOPIXの2.4%より大きい。加えて、中国経済の影響が強いはずの台湾(加権指数、2.7%下落)、香港(ハンセン指数、2.7%下落)、韓国(韓国総合指数、2.2%)より、日経平均株価の下落率が大きい状況だ。
これは、中国の株価指数CSI300(上海と深センの両取引所の銘柄から構成される株価指数)の下落率が7%を超えたため、両取引所の株式取引が全て終日停止された(「サーキットブレーカー」と呼ばれる)ことにより、中国株を売りたくても売れなくなった投資家が、ヘッジ(損失回避)のため、流動性が高い(売買高が多く、規制が少なくて、換金が容易な)日経平均先物を代わりに売ったものと推察される。この点でも、足元の中国を材料とした日経平均の下落は、行き過ぎだと言える。

3)の商品市況下落のうち、原油については1)のサウジアラビア・イラン関係のところで述べた。

(図表4)
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4)の米債券市場における動揺のリスクについては、長期金利は今のところ、米連銀の最初の利上げにもかかわらず、落ち着いて推移している(ただし、今後も長期金利の跳ね上がりがないかについては、注視する必要がある)。
ジャンク債市場については、ジャンク債の平均利回りと米国債利回りとの格差は拡大している(ジャンク債が相対的に売り込まれている)(図表4)。この点は要注意だが、ジャンク債の価格下落が大きく進む可能性が懸念される理由は、銀行が昨年7月発効したボルカールールにより、リスク資産の保有を大きく減らさざるを得なくなり、ジャンク債の売買高が減少しているため、薄商いのなかを少しの売りでジャンク債価格が下振れする恐れが強いことだ。
このため、現在ジャンク債保有の中心である、米保険会社、内外の投資信託、海外投資家に打撃が及ぶ恐れがあるが、逆に米金融機関には直接の損失が及びにくい。この点から、今後も米ジャンク債市場の動向から目は離せないが、今のところ大きく懸念するには至らないと考えている。

以上、シナリオの背景。

このあと、前月号(2015年12月号)見通し
および2015年年間見通し(2015年1月号)のレビュー。

前月号見通し(2015/12/1 時点)のレビュー

 
日経平均株価
zu5
 
・12月の日経平均株価は、予想に比べ低調な推移となった。この背景には、原油価格の推移などを過度に悪材料視した面が大きく、実態面で大きな懸念要因は見出せない。まだ目先は心理的な動揺が続きそうだが、いずれ国内株価は底固めから上値をうかがうと見込む。
 
②国内長期金利
zu6
 
・国内長期金利は、レンジ内での推移ではあったが、引き続き底に貼りついたような動きとなっている。日銀の債券購入により、今後も長期金利は低水準で推移しそうだ。
 
③外国為替相場
zu7
 
・12月は、3通貨ともほぼレンジ内での推移となった。
・足元は円高に振れる動きとなっているが、今後は3通貨とも、対円で上昇する余地があると予想する。

2015年年間見通し(2015/1/5 時点)のレビュー
 ~年初の年間見通しを振り返る

 
日経平均株価
zu8
 
・2015年の日経平均株価は、ほぼ予想通りの展開となった。ただ、年央辺りの株価下落はもともと予想していたが、年末にかけての株価の戻りは、予想に比べ弱かった。また、途中で予想レンジを微調整したことは、振り返ってみれば失敗だった。
 
②国内長期金利
zu9
 
・2015年の国内長期金利については、予想を全く誤ってしまった。国内株価の上昇や景気の持ち直し、円安といった金利上昇要因はあったが、日銀の国債購入が強固だった。
 
③外国為替相場
zu10
 
・2015年の3通貨の推移は、米ドルは概ね予想レンジ内だったものの想定より対円で強く、ユーロと豪ドルは想定より弱かった。
・欧州経済の低迷や豪州景気についての懸念などは、2014年内に十分織り込まれていると見込んでいたため、2015年もその「尾」を引きずるという展開が予想できなかった。
・その裏返しとして、2015年も概ね、投資家の米国選好が強かったと言えるだろう。
 

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム

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