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最新投稿日時:2015/09/02 12:24 - 「2015年9月1日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2015年9月1日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2015/09/02 12:24

花の一里塚~市場見通しサマリー

2015年9月1日時点での主要市場見通し

★表

基本シナリオと見通し数値について

基本シナリオとして、短期警戒・長期楽観を主張し続けてきたが、「短期警戒」は実現した。
これからは、「長期楽観」シナリオの実現を予想する。

「長期楽観」と言っても、バブルが来るわけではない。日米等を中心とした世界経済の持ち直しや企業増益に沿った、緩やかな株高基調だろう。また、米ドル等の外貨も、景気回復軌道に沿った緩やかな外貨高・円安が見込まれる。個別性が強く、国ごとの経済格差や企業ごとの収益格差が、株価や通貨相場にそのまま反映されよう。これはある意味、経済や企業の実態が、市場価格に正しく反映される、健全な相場とも言えよう。
リスク要因も多い。留意すべきなのは、1)米長期金利の跳ね上がり、2)中国経済の一段の悪化、3)国内経済の戻り歩調の遅さ、などだ。ただし、こうしたリスク要因が短期的な波乱をたびたび引き起こしても、世界市場の薄明るい基調を覆すには至らないだろう。

具体的な予想レンジの修正については、引き続き豪ドル相場が軟化気味で推移している。豪ドルを中国懸念で売るという地合いはやや行き過ぎているとは考えるが、2015年12月末までの予想の下限を、小幅下方修正する。
また、日経平均株価と米ドル円相場については、8月の下落でむしろ底値の程度が見えたと考え、予想レンジ下限を小幅上方修正する。つまり、8月の日経平均や米ドルの最安値を、今後大きく下抜けている公算は、小さいと見込んでいる。

具体的に、2015年12月までの予想レンジについては、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 17000~21500 ⇒ 17500~21500
10年国債利回り(%) 0.3~1.4 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 110~127 ⇒ 115~127
ユーロ(対円) 130~155 ⇒ 変更なし
豪ドル(対円) 87~110 ⇒ 85~110

2016年6月までの予想レンジについては、全く修正はない。

シナリオの背景

これまで当レポートで主張してきた、短期警戒シナリオは実現した。そうした世界市場に調整をもたらす要因として、当レポートでは、1)高すぎる米国株価のPERの低下、2)中国経済の悪化、3)海外要因を跳ね返して日本株が逆行高するという説の誤り、を指摘していた。世界市場が大幅な調整に見舞われた、ということだけではなく、調整の背景要因もほぼ予想通りだった。
そして見通しに近い形で調整が進んだのだから、今後は、以前からずっと想定していたように、長期楽観シナリオに一歩進むのは、自然なことだ。実際、日米の経済実態などに、何も大きな変調は生じていない。

そこで、まず米国から順に、調整がほぼ完了したかどうかの度合いと、経済実態等の確認、リスク要因の把握を行なっていこう。
米国株価について、もっとも懸念されたのは、実態の改善以上に株価が買われてしまい、PERで見て買われ過ぎの状態にあったことだ(図表1)。S&P500指数の予想PER(ファクトセット調べ)は、近年は概ね12~18倍の範囲で推移していた。これが最近では18倍に近い水準で推移し続け、先行きの株価の反落が懸念される状況にあった。

(図表1)
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しかし、8月の株価急落で、8/28に終わる週の予想PERの平均値は、16.4倍まで低下した。日々のデータで見ると、終値ベースで最近の最安値をつけた8/25には、15.8倍と、15倍台に入っている。まだ2006年以降の平均値である、14.9倍とはやや差を残しているが、ぴったり平均値までPER調整が行われる必要があるわけではない。米国株価の割高さは、かなり解消されたと言えよう。
また、米国の景気の状況は、緩やかな回復を持続している。雇用者数は、このところ安定的な伸びを続けているし、主要な経済指標の動向をみると(図表2)、昨年、今年の厳冬期を除いては、右肩上がりの推移を維持している。
ただし、内需系の経済指標が安定的な回復を持続しているのに対し、鉱工業生産はやや軟調だ。これは、新興諸国経済の減速や米ドル高で、輸出向けの生産が圧迫されているためと推察される(とすれば、米政府は、引き続き米ドル高をけん制する姿勢を続けよう)。
また、同様の理由で、EPS(一株当たり利益)見通しは、前年比増益を維持しながらも、下方修正が続いている(図表3)。米株価にとって、経済環境や企業収益の状況は、株価を支持する方向にあるが、その力は限定的で、株価上昇は緩やかなものを見込むべきだろう(※1)。

※1 もちろんこれは、株価の基調的な推移を述べたもので、現実の株価は、その基調の周りを、短期的に上下に振れるだろう。


(図表2)
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(図表3)
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なお、米国株式市場の高PERが調整するきっかけとしては、9月の可能性がある米連銀の利上げを前に、米長期金利が跳ね上がることだ、と考えていた。実際には中国経済に対する懸念などがきっかけとなったため、その点は予想と異なっている(※2)。
つまり、米国市場の調整のうち、予想していた米国株、米ドル安は現実のものとなったが、米長期国債価格安(米長期金利上昇)は、まだ起こっていない、ということになる。
米長期金利の水準は、経済指標などと比べて低すぎる、といった状態は、全く解消されていない(図表4)。今後、長期金利が急速に跳ね上がれば、内外市場を揺らす要因となりうる。

(図表4)
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とは言っても、長期金利が上昇する根本の理由は、米国経済が回復していることだ。景気の回復は、株式市場にとって上昇要因であっても、下落要因ではない。

米連銀の利上げに対しても、神経質な空気が、足元の市場には広がっているようだ。9/16~17のFOMC(連邦公開市場委員会)で、利上げするかどうかは、わからない。これは、連銀では利上げするかしないか決めているのに、筆者はそれがわからない、という意味ではない。FOMCで投票権を持つメンバー自身も、どうなるかわからない、ということがわかっている。各投票権者自体が迷っているし、9月に利上げすべきだ、いや利上げすべきでない、と心を決めているメンバーにとっても、FOMC内の意見が割れているため、会合を開いてみないと、結果がどうなるかわからないのだ。

※2 ただし、8月下旬の株価急落にもかかわらず、米長期金利の低下が限定的であるため、すでに利上げを米長期国債市場は織り込みつつある、という考え方もできる。


ただ、9月利上げの可能性は消えていない(筆者として、どういう可能性に賭けるかと問われれば、9月利上げに賭ける)。これは、まず利上げについて、連銀は「引き締め」ではなく、「金利の正常化」だと考えていることによる。つまり、これまでの量的緩和やゼロ金利は、「異常」な金融政策であり、何故異常な政策をとったかと言えば、リーマンショック後の米国経済が異常に悪かったからだ。したがって、米国経済がとても強いということでなくても、正常にさえなったのであれば、異常な金融政策も正常に戻す、という考え方だ。したがって、2014年10月に量的緩和は終了したし、近いうちにゼロ金利も終わりにしよう、ということだ。
中国の株価や経済の悪化が、連銀が利上げを先送りする要因だ、との声を聞くが、米連銀は中国の中央銀行ではない。中国経済が奈落の底に落ちようと、米国経済への影響が小さければ、利上げを見送る理由にはならない。そして今のところ、米国が経済面で著しい悪影響を受けているような兆しは見出しにくい。むしろ、中国経済の悪化がさらに続けば
(筆者は、続くと予想している)、先になればなるほど、中国の景気懸念で市場が騒ぎ、利上げが難しくなるかもしれない。やるとすれば、今の方がよいという考え方もあろう。
また、足元の市場の波乱から、利上げがやりにくくなっている、との観測も根強い。FOMCまでに市場が落ち着きを取り戻す可能性も十分にあるので、何とも言えないが、もし株式市場や債券市場への影響を米連銀が気にするのであれば、たとえば利上げ幅を0.25%ではなく0.125%に抑える、2回目の利上げはかなり先(来年以降)になる旨を、声明や議長の記者会見で強く示唆する、などにより、市場の混乱を避けることができるだろう。

次に、中国経済について考えてみよう。
中国経済が悪化するかしないかを、議論する段階ではなく、確実に悪くなる、と見込んだ方がよいだろう。そのうえで、その影響が他国の経済や市場にどう表れるかを、考えておいた方が良い。
中国の公式統計が信頼に足らないと捨てるのであれば、例えば民間統計である財新PMI
(旧「HSBC製造業景況感指数」)をみると、着実に悪化している(図表5)。また、豪州から中国向けの輸出額は(図表6)、2013年12月のピークから2015年4月まで減少傾向をたどった(※3)。

※3 その点では、以前からずっと中国経済は悪化していたのであり、「チャイナショック」などと称して騒いでいるのは、「何を今さら」という感が強い。

(図表5)
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(図表6)
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ただし、その後6月にかけては、豪州からの輸出額が持ち直している。中国は仮需(たとえば、実際に鉄鋼材が売れているわけでもないのに、売れるだろうとのアテで鉄鉱石を買いつけてしまう)があるため、この輸出額の持ち直しを手放しで楽観視はできないが、ある程度は中国経済の悪化にブレーキがかかっているのかもしれない(ただし。悪化が止まった、ということではまったくなく、悪化速度が多少落ちたかもしれない、というイメージ)。

なお、中国の株価については、最近のバブル的な上昇相場の「発射台」近辺までは戻ってきた(図表7)。その点からは、中国株価の調整はかなり済んだと考えられる。
ただし、中国政府が強力に株式市場に介入しているため、現在の中国の株価は完全にひずんでいる。したがって、今後中国の株価はどう動くかは予想不可能だと考えるし、どう動いても、全く意味はないだろう。ただ、中国株が大きく下げると、心理的には(あくまでも心理面でだけ)他国市場に波乱を引き起こすことは、短期的にはありそうだ。

(図表7)
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さて、中国経済が一段と悪化することによって、他国の経済にどのような影響が生じるか、ということだが、中国経済に限らず一つの国の経済は、いろいろな側面を持っている。

まず一つは、財の買い手としての中国経済だ。国内で消費するため、あるいは国内での設備投資等のため、海外から財を輸入する。もしくは、日本におけるインバウンド消費のように、海外でお金を使う。加えて、中国国内での国産品の購入であっても、そうした国産品を中国国内で作ったり売ったりしているのは、外資系企業の製造工場や小売店かもしれない。
この点では、中国経済の悪化は、他国から中国への輸出減少や、他国企業の中国における収益悪化を生じる。ただし、たとえば米国経済については、中国へ大量に輸出しているというより、中国からの輸入が多額だ(※4)。つまり、米国にとって、中国が財を買ってくれるお客さんというより、米国がお客さんという色合いの方が濃い。

日本から中国向けの輸出については、前月号の記述をそのまま繰り返せば、2014年年間で、中国向け輸出は総輸出の18.3%を占めている。中国経済の失速により、中国の購買が落ちることで、この輸出は悪影響を受けることは避けられまい。
しかし日本から中国向けの輸出が、全て中国国内で用いられるものとは限らない(中国が最終需要者とは限らない)。日本から輸出した電子部品等を中国で組み立て、他国に輸出している分もあるだろう。
その割合がどのくらいかは、正確にはわからない。ただ、WTO等のデータによれば、中国の総輸入額(日本からとは限らない)のうち7~8割が中間財(部品等の、製造過程の中間のもの)であると推察される。もちろん、中間財を中国が輸入し、それを中国で組み立て、中国国内で販売する場合もあるだろう。ただ、日本から中国が中間財を輸入し、中国で組み立てて、中国以外の国に輸出するケースが、かなりのウエイトを占める、と考えてもおかしくはないだろう。
こうした最終需要地が中国以外の場合は、中国の景気が悪化しても、最終需要地の景気が悪化しなければ、影響を受けにくい。リーマンショック直後の2009年は、日本からの輸出が4~5割落ち込んだ(最悪は、2009年2月の前年比49.4%減)。これは全世界の需要が落ち込んだことによるものであり、中国だけの経済悪化であれば、リーマンショック時のような輸出の落ち込みは考えにくい(※5)。

※4 2015年1~6月累計で、米国から中国向けの輸出は、全輸出の7.3%に過ぎないが、中国からの輸入は、全輸入の20.2%をも占める。この結果、同時期の対中貿易赤字は1708億ドル(季節調整前)にのぼり、単一国向けの貿易赤字としては最大。
※5 以上は、前号(「花の一里塚」2015年8月号)から、ほぼそのまま転載した。なお前号では、日本でのインバウンド消費に対する中国経済悪化の影響が限定的(中国からの観光客が日本で使う金額が、日本の総個人消費の0.23%)であることも述べているので、参照されたい。


もう一つは、財の売り手としての中国経済だ。買い手の他国経済が悪化しなければ、中国から他国への輸出は、中国経済悪化の影響を受けない。もちろん相当深刻な見通しに基づけば、中国経済の悪化で中国企業の国内売り上げが激減し、海外への輸出も行なっている企業が破たんする、という展開は否定できない。ただしその場合、破たんした企業が日本などから輸入していた部品等の買いつけは減り、日本経済にとって悪材料となるが、一方で日本企業と世界市場で競争していた中国企業が消えることになるかもしれない。

以上を踏まえると、中国経済の悪化が他の国の経済に悪影響を及ぼすとは見込まれるが、その影響の度合いは現在の市場が恐れているほどではないように思われる(中国経済だけが、ぶくぶくと沈んでいくイメージに近い)。

最後に日本経済だが、消費者心理を示す消費者態度指数が、2か月連続で低下しており
(図表8)、家計消費支出も実質ベースの前年比が6月、7月とマイナスになるなど、陰りが経済指標にみえることは確かだ。ただ、家計のマインド悪化と財布の紐の引き締めについては、加工食品等の値上がりが影を落としていると推察される。エネルギー価格の低迷や、円安に歯止めがかかったことによる輸入価格の上げ止まりなどで、物価を巡る環境は改善(物価上昇率の抑制)しよう。

(図表8)
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(図表9)
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また、労働市場においては、所定外労働時間の前年比がマイナスとなっているものの、失業率の改善基調は続いており(図表9)、雇用環境の改善が、いずれ消費の押し上げに働こう。
企業収益についても、2015年度については、多くの調査機関が前年比で15%程度の経常増益を予想している。これが、会社側見通しの平均値である、11%にさや寄せされて低下するのではないか、と懸念されているが、2ケタ増益の達成に赤信号がともったわけではない。

以上を踏まえると、海外投資環境の悪化を跳ね返して日本株を押し上げるほど、日本国内の投資環境は強くはないが、海外市場が落ち着けば、日本の経済実態改善に沿った日本株の上昇基調は期待できるだろう。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2015年8月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2015/8/3時点)のレビュー

日経平均株価
re1

・8月の日経平均株価は、予想レンジ上限近くから下限近くへと、予想通り下落した。この下落で、懸念された諸要因は相当程度市場が消化したと推察される。まだ短期的には投資心理のブレで波乱はあろうが、概ね底入れが確認できたと考え、予想下限を上方修正する。

②国内長期金利
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・国内長期金利は、予想レンジ下限に貼りついたような推移が続いている。年末に向けて金利上昇を見込むが、まだ当面は動意に乏しい展開となりそうだ。

③外国為替相場
re3

・8月は、ユーロは過去のギリシャ騒ぎで、ユーロ圏の景気低迷等も全て織り込み切ってしまったためか、堅調に推移した。一方、米ドルや豪ドルは調整色を強めた。
・豪ドルは中国経済の悪化による中国向け輸出減少懸念が悪材料となっているが、対中輸出減少はだいぶ前から続いていたことであり、市場にとってサプライズではない。その点では豪ドルは売られ過ぎの状況にあると考える。豪州準備銀行も、従来続けていた豪ドルが高すぎるとの声明を削除しており、豪ドルはいずれ底打ち反転する可能性が高いと見込んでいる。

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム

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