「上ひげが出現、改めて売り直される展開か」

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最新投稿日時:2016/06/18 09:05 - 「「上ひげが出現、改めて売り直される展開か」」(黒岩泰)

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「上ひげが出現、改めて売り直される展開か」

著者:黒岩泰
投稿:2016/06/18 09:05

「水準感ではなく、方向性でトレード」

 本日の日経平均は165.52円高の15599.66円で取引を終了した。米株高、円高一服を受けて買い先行となったものの、買い一巡後は上値の重い展開。所詮、急落に対するリバウンドとの見方が強かったほか、週末要因もあり、積極的に上値を買い進む動きにはならなかった。

 日経平均の日足チャートでは、上ひげが出現。上値の重さを示唆しており、この付近での売り圧力の強さを示している。本日の上昇は基本的には「アヤ戻し」であり、トレンド変化を示すものではない。週明けには改めて売り直される公算が大きく、下ブレには注意したいところだ。

 本日の株価上昇の要因のひとつに、麻生財務相の発言が挙げられる。財務省、日銀、金融庁と情報交換会合を開催するとしており、それにマーケットはにわかに反応した。「もしかしたら為替介入があるのでは?」――そんな見方が台頭したからだ。

 しかし、実際の会合は午前中に1時間ほどで終了。「ボラティリティが高くなっている」などの認識を共有しただけであり、具体的な対策への言及はなかった。後場、伸び悩んだのは、そういったことも要因になっているのだろう。

 一方、「日米欧がイギリスのEU離脱に備え、ドルの緊急供給の検討を始めた」と報じられたことも、買い安心材料のひとつとなった。足元の円高・株安はブレグジット(英EU離脱)が要因となっており、こういった対応策が投資家を安心させる材料となった。

 それでも日経平均の上値は重い。すでにチャートが崩れているからであり、今後も執拗に売りを浴びることになるだろう。特に来週はイギリスで国民投票が実施される。サラリーマン運用者は、このリスクを何としてでも回避しなければならない。実際に大損を食らったら、投資家、上司に言い訳できないからだ。多少の損失が発生しても、ポジションを軽くせざるを得ない。それが株価下落の要因になっている。

 麻生財務相をはじめ、日本の金融当局者は、最近の円高の動きは、「投機的」と表現する。でも、実際には投機的ではなく、適正な水準に戻っているだけだ。

 そもそもアベノミクスは金融緩和によって、物価上昇を促し、円安誘導し、そして景気を浮上させ、賃金が上昇。大企業が儲かれば個人までそのおこぼれが回ってくるという「トリクルダウン」を前提に始められた。

 しかし、実際には物価も賃金も上がらず、ただただ株価を上昇させただけ。実体経済は何も良くなっておらず、逆に景気悪化が意識されるほどだ。アベノミクスは完全に「エセ経済理論だった」ということになる。

 その理由は色々あるが、そもそも日銀が資金を供給しても、その受け皿である銀行が、企業や個人に融資しなければ、いわゆるマネーストックは増加しない。銀行特有の信用創造の仕組みが稼働しなければ、物価も上昇しないし、景気も良くならないのだ。

 特に最近のマイナス金利は銀行に評判が悪い。銀行の収益源を奪う政策であり、そういった意味で「信用創造」が起きにくくなっている。車で例えるなら、アクセルを踏んでも、ギアがニュートラルだったら、まったく推進力が出ない。そういうことである。

 その間、日本の経常収支は、一方的に黒字が溜まっている。これが対ドルとの相対的な上昇圧力となっており、これが円高の主な推進力となっているのだ。足元の動きは確かに派手だが、決して投機的ではない。なぜならば、「理論値(個人的には1ドル=93円が妥当)」に向かって動いているだけなのだから・・・。

 今後、各種イベントが起こるだろう。イギリスがEUを離脱するかもしれないし、しないかもしれない。麻生財務相が為替介入をするかもしれないし、しないかもしれない。しかし、経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)はそう簡単に変化するものではなく、やはり結果的に円高方向に動いてしまうのだ。それが株の売り圧力として機能し、日本株全体を押し下げるであろう。日経平均のチャートが弱気形状を維持している今、ここは「売り」で対処するしかない。当然、「水準感」を持つ意味はなく、「方向性」でトレードしなければならない。「13000円で止まるだろう」とか、「10000円割ったら買い」とか、そういうことは考えずに、ただただ下落しそうな銘柄を売るだけである。信用口座を持っていない人でも、ベア型のETFを買うなどして、工夫はできるはずだ。もちろん、トレードは戦略的でなければならず、行き当たりばったりのトレードはご法度となる。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想

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