「リーマン前に似ている」ということは・・・
寄り付き前に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比でマイナス0.3%。2か月連続の下落となった。日銀が掲げる「2年で2%」の目標には当然達しておらず、3年たってもこの体たらくだ。量的緩和が物価に対するインパクトがほとんどないことが証明されており、ある意味、日銀の存在意義が問われている。
日銀は「量的緩和がダメなら、次はマイナス金利で」と、まるでドリフターズのように、次々と舞台展開していく。安倍政権も、選挙に勝つためなら、増税先送りも辞さない状況となっている。そのうち、「もともと増税を言い出したのは民主党政権だ」という主張に切り替えるつもりなのだろう。基本的にはそんなものである。
だが、株式投資をやる上で重要なのは、このような政策転換が、相場にどのような影響を与えるのかということだ。最終的な投資判断は「チャート」に委ねることになるのだが、相場の流れを把握することは極めて重要だ。「なぜ特段材料がないのに、チャートが上向きになっているのか」「最終的にはどのような動きになるのか」――それを推測するうえで、現政権の政策は極めて重要となる。
もちろん、相場は「織り込んでいるのか」、それとも「織り込んでいないのか」も、かなり重要なファクターとなる。現時点でマーケットは「増税先送り」は織り込んでいるし、「10兆円規模の財政出動」もある程度、織り込んでいる。米国に関していえば、「6月利上げは時期尚早」、「その次くらいには利上げするだろう」などと織り込んでいる。だから、株価はそれを好感して、株高・円安方向に動いている。足元の株価が強含んでいるのは、そういった背景があるからだ。
なので、株価が持続的に上昇するためには、それ以上のサプライズが必要となる。「消費税増税先送り」ではなく、むしろ「消費税減税」とか、「財政出動は真水で20兆円規模!」なんていうのが出てくれば、市場は素直に好感するだろう。
逆に「増税見送り」のアナウンスもなく、いきなり「解散・総選挙」という流れになれば、政治リスクが台頭し、株価は嫌気売りが優勢となりそうだ。
現時点ではチャートは強気形状を維持しており、前者のシナリオが濃厚。投資家は、まだ安心していて良いだろう。我々のようなチャーチストの思考回路は、「チャート(=投資判断)→材料」であり、一般的な「材料(=投資判断)→チャート(値動き)」とは違う。「材料は後からついてくるもの」であり、決してその材料の良し悪しを判断しているわけではない。
なぜ、そうしているかというと、前述の「織り込み」というのが、極めて難しい判断だからだ。自分では「織り込んでいる」と思っていても、市場は「まったくのサプライズ」というのはよくある。初動だけは予想通りに動いても、次の瞬間には逆に動くこともある。そういったリスクを「チャート分析」で回避するのである。「この株はいい株なんだよね、でもまったく上がらない、むしろ下がる」といった「塩漬け株」を作らない意味合いもあるのだ。投資判断というのは十人十色。しかし、その株に惚れたら最後、決して別れることができなくなる。思考を柔軟にすることで、保有銘柄の「新陳代謝」を活発化させるのである。それが投資家としての生き残る道――そう考えている。たまには必要以上に連敗することもあるだろう。でも、必要以上に連勝することもある。――そう信じて投資するしかない。あとは、リスク管理の問題だ。特定銘柄への分不相応な傾斜は避けるべきであり、その謙虚さが「投資家としての命」をつなぐことになる。なにせ、安倍首相が「リーマン前に似ている」と明言するような相場だ。この先、何があるか分からない・・・。