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石炭ガス化複合発電に注目

川口マーン惠美氏の論考は実に冴えている。目からうろこ的な内容が多 く、勉強になる。「世界一の発電効率を目指せ!苦節30年、不可能を可能 にした技術者たち 高効率化とクリーン化を実現する日本独自の石炭ガス 化複合発電技術」(JBプレス2/18)も良かった。以下要旨。

<*高効率かつ環境負荷が少ない石炭ガス化複合発電

今日、私が書きたいのは、勿来(なこそ)発電所の10号機、 IGCC(Integrated coal Gasfication Combined Cycle)というシステムの 発電機の話だ。IGCCというのは、石炭ガス化複合発電のことで、私はこれ にいたく感銘を受けた。

従来の石炭火力は、石炭を燃やして水を沸騰させ、そこから出てきた蒸気 でタービンを回して発電する。石炭火力での熱効率は36%程度で、最新鋭 の施設でも41%と、それほど高くない。しかも、CO2の排出量が多いので 空気を汚す。

それに比してIGCCは、まず石炭を高温でガスにして、ガスタービンを回し て発電する。そして、そこで発生した熱で蒸気を作り、その蒸気で蒸気 タービンを回して、もう一度発電できる。つまり、二度発電するわけで、 当然、熱効率は良く、50%近い水準となる。古い石油火力よりも効率は良い。

そのうえ、効率が良くなる分、消費する石炭が少なくて済むので、CO2だ けでなく、硫黄酸化物や窒素酸化物や煤塵の排出も抑えられるし、また、 温排水量も従来の石炭火力より少ない。つまり環境に対する負荷が小さい。

メリットはまだある。何といっても、石炭を使えることだ。石炭は安価な ばかりでなく、埋蔵量が豊富だ。石炭を使う限り、調達先が広がり、石油 や天然ガスのように、供給国の治安に一喜一憂する必要もないし、何らか の理由で供給が途絶える不安もない。

調達先をこちらで選べれば、足元を見られて値段の交渉さえできないとい うような事態に陥ることも避けられる。

*日本の技術開発の底力ここにあり。世界から注目される10号機

私がとりわけ感銘を受けたのは、勿来のIGCCの開発の歴史が、日本の技術 開発の底力を象徴するような物語を秘めていることだ。ここには、日本政 府と電力会社、そして、大手有力メーカーが長い年月をかけて開発した、 日本にしかないハイテク技術が潜んでいる。

それは何か? その答えは、「空気吹き」という耳慣れない言葉だ。日本 でIGCCの開発が始まった1983年当時、その技術は、オランダ、スペイン、 アメリカなどで先行していた。ただ、それらの国々では、石炭をガス化す る際には、酸素を使っていた。酸素でないと、燃焼の温度が十分に上がら ないからだ。これを「酸素吹き」という。

ところが、当時の日本人の研究者たちは、酸素ではなく、どうにかして空 気吹きを実用化したいと考えた。なぜか? 酸素を取り出すのに掛かる余 分なコストやエネルギーが省けるからだ。それを空気でできれば、当然、 全体の発電効率が上がる。

しかし、世界中の研究者の間では、「空気吹きは不可能」というのが定説 で、空気吹きに取り組んでいた日本人の研究者はずっと悔しい思いをし た。その悔しさが原動力となったのか、長い試行錯誤の末、ついに空気吹 きが完成する。

これは、長年にわたり石炭燃焼の技術開発に関わってきた日本のメーカー であったからこその快挙ともいえた。この成功を機に、1998年、IGCCのパ イロットプラントが三菱重工長崎研究所内に建設された。

そこからまた、長い試行錯誤が始まるのだが、2007年、プラントは勿来に 場所を移し、実証機としてその威力を発揮し始める。そして、そのプラン トを常磐共同火力が引き継いだ形で、2013年からは出力25万kWの商業運転 が始まった。

同年12月には、3917時間の連続運転を記録し、世界中の研究者をあっと驚 かせた。以来、この10号機には、世界の国々から3000人以上の見学者が訪 れているという。そして今、2020年の稼働を目標に、50万kWのIGCC発電所 の建設計画が進められている。今あるプラントの2倍の容量。もちろん世 界一だ。

日本はハイテクの国だと、私たちは当たり前のように信じている。実際、 私たちが知らない日本の技術が、今日も世界中のあちこちで使われてい る。空気吹きのIGCCも日本の技術だ。私が作ったわけではないが、誇りに 思う。これを世界に広めない手はない。

現在、世界の発電の4割が石炭火力で行われている状況を見れば、IGCCの 普及には大きな意義がある。特に、安い石炭を使わざるを得ない新興国で IGCCを広めれば、環境改善に役立つだろう。日本が行う開発援助の一環に するという選択肢もある。技術提供は、日本ならではの開発援助になる。

一方、日本も原発が停まって以来、石炭火力を増加しなければならない状 況だ。もしも、IGCCの実用化が進めば、コスト的に助かるだけでなく、 CO2の問題も少し緩和されることになる。

IGCCは、建設費は2割ほど高いというが、発電が緒につけばコストに競争 力がある。太陽光発電のために20年にわたって1kWあたり42円も払うこと を思えば、国はこちらの技術への投資も並行して考えた方が良いのではな いか。

これからの話として、さらに熱効率の良いIGFCの開発計画もあるそうだ。

IGFCというのは、「石炭ガス化燃料電池複合発電(Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」で、石炭をガス化するとき に発生する水素を利用して、燃料電池でも発電するので、2段階でなく、3 段階の発電となる。これによって、熱効率は55%以上に向上する。技術向 上に終わりはない。

ただ、開発にはお金がかかる。当然のことながら、最後にその技術が有意 に商品化できることが確実でない限り、民間の企業が研究開発に専念する ことはできない。

しかし、もし、電力自由化になるとシステムが変わり、電力会社は長期的 な将来設計がしにくくなり、余分な研究に投資できなくなるかもしれず、 また、金融機関も、そんな行き先の不明な投資には、当然、融資を渋るは ずだ。

自由競争は、価格を下げる事には役立つが、大金の掛かる研究開発にはマ イナスに働く可能性が大きい。

日本は安い労働力と大量生産で生きていける国ではない。これまで多くの 努力によって積み上げてきた技術を、これからもどんどん伸ばしていかな ければ、あっという間に後続の国に追いつかれ、追い抜かされてしまう。

日本が技術を売れなくなったら、もうおしまいだ。そのためには、潤沢な 研究費だけはどのようにしてでも確保し、開発に専念できるよう、国が支 援していくべきだと強く感じた>(以上)

常にイノベーションに挑戦していかないと先進国トップグループから脱落 してしまう。まことに「技術向上に終わりはない。日本が技術を売れなく なったら、もうおしまいだ」。

誰か習近平にこれを説いてはどうか。「バカなことをやっていないで日本を見習え」と。


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