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公明、安保法制で強硬姿勢維持

昨年夏の攻防が事実上ぶり返し

集団的自衛権の行使容認を軸とする安保法制の取り扱いを巡って、自民党と公明党の鞘(さや)当てが目立ち始めている。事実上昨年7月1日の閣議決定前の攻防に逆戻りしている様相だ。

首相・安倍晋三以下自民党が、閣議決定を軸に「恒久法」を目指しているのに対して、平和主義を標榜する公明党は、有事の度の特別措置法での対処を主張して譲らない。

13日から両党間の本格調整に入るが、安倍は「恒久法を絶対譲らない」(官邸筋)方針であり、本格論戦が始まった通常国会は与党内の対立が先行しそうだ。

野党は民主党が集団的自衛権の行使容認の是非の協議を12日から開始したが、こちらは岡田克也新体制にはなったものの左右の対立で簡単にはまとまりそうもない。

自民党首脳が警戒しているのは、公明党が、昨年夏以上に硬化の兆しを見せている点だ。副総裁・高村正彦も「公明党には『憲法の規範を超えたようになる』という危惧があるかもしれない」と警戒感をあらわにしている。

早くも国対委員長・佐藤勉は11日、安保法制に関して「非常に大きな法案。会期内に収めるのが私の課題だが、大変な悩みがある」と述べ、6月24日までを予定している通常国会の延長を示唆した。

確かに安保法制は戦後の安全保障体制を大転換する意味あいがあり、法案が連休明けに提出されても「1か月半程度で成立させることは駱駝を針の穴に通すより難しい」(自民党国対関係者)というのが本音であろう。

田中角栄なら「国会議員は休会中も月給をもらっているのだから通年国会で働け」と言うところだが、筆者が見たところ夏一杯か場合によっては秋までの大幅延長が必要になるかも知れない。

まず解決しなければならない自公の対立点は、基本部分で決定的な亀裂がある。

公明党代表・山口那津男は、自衛隊のインド洋派遣やイラクへの派遣はその都度特措法で処理してきたことを指摘して、恒久法の制定には真っ向から反対だ。狙いは明らかに安倍政権の「独走」にブレーキをかけるところにある。

これに対して安倍は12日の施政方針演説でも「国民の命と幸せな暮らしは、断固として守り抜く。そのために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進める」と表明した。

そもそもこの「恒久法」を意味するキーワードの「切れ目のない対応」は昨夏の閣議決定でも決まっており、「公明党はこれに賛成しているのだから、今さらちゃぶ台返しされても困る」(自民党幹部)というのが本音だろう。

加えて山口は「米軍や有志連合への後方支援は国連安保理決議を原則とすべきだ」と強調しているが、これも噴飯ものだ。国連が平和の理想郷とでも思っている戦後の絶対平和主義者の殻を抜け出ていない。

安保理常任理事国の中国は拒否権を行使できるのであり、東・南シナ海で事を起こした場合には、当然拒否権を行使して決議などは作らせない。それを待っていては国の存立にかかわることになることが分かっていないのだ。

安倍が「国連決議がある場合も、そうでない有志連合の場合でも憲法上は後方支援は可能」と述べているのが妥当だ。

さらにホルムズ海峡における機雷除去に関して安倍は新たな「国家存立事態」の観点から可能とする方針だが、山口は「存立事態という新要件に当たらない」という立場を固執している。

これは安全保障の初歩を知らない。石油ルートの確保は戦前の日本がそうであったように「生命線」なのであり、まさしく存立の事態だ。それとも石油危機の大混乱は早くも忘却の彼方か。

このように、山口が昨年夏よりもさらに態度を硬化した背景には、支持母体である宗教団体の意向が強く作用しているのだろう。山口自身も戦争や紛争が突発的に発生しうるものであるという安保の基礎を知らなければなるまい。

おりから世界情勢は激動期の様相を色濃くしており、恒久法がなければ迅速な対応が出来ない。事態発生の度に国会審議を行っていては、まさに泥棒を見て縄をなうに等しい。国会が閉会中であったら手をこまねくのか。その結果貴重な日本人の人命が失われては、政権与党としての責任を果たせるのか。 

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