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古い日記-誰がリスクを取るのか

 

5月1日はメーデー。連休の谷間の市場がオープンします。為替と休み明け後を睨みながらの動きは、昨日と変わりません。


ただ、昨日発表されたアップルの大量の社債発行は、借り入れで株主還元をするという新たな流れを作りそうです。日本でも高配当利回り企業は、低金利で資金調達し、自社株買に回せば、金利差が企業に残ります。デフレ下では、借入金を増やす点で躊躇されましたが、インフレ下では企業も株主もハッピーになれます。採用する企業が増えることは明白です。


さて、古い日記は第3回目。「誰がリスクを取るのか」です。ITバブルが弾けたころの下落相場を、どのように回復できるかというテーマです。作成時には異端だったリスク資産の買い上げも、最近では政策に取り入れられるようになってきました。世の中も変わってきたようです。
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株のあれこれ―誰がリスクを取るのか(2000年10月1日)


今年の経済と株価の見通しについての番組を見て、いまさらながら今年の株価に希望が持てなくなった。ひとごとのように株価の下落を言う評論家が多いのには別に驚かないが、昨年の株価を唯一当てたアナリストの見通しでは、日経平均は1万円まで下がるという。


彼の意見を持ち出すまでもなく、アメリカの株価下落による景気減速、国内景気が立ち直れないままの失速、不良資産の整理が一向に進まない金融機関、時価会計とペイオフの実施に伴う持ち合い解消売り等々、値下がりを予測させる要因だけが目に付く。となると、この先の株価も、底なしの株価になることは十分考えられる。


何しろ、今の相場を動かしているのは、外人投資家を含めた機関投資家なのだ。人の金で相場を動かしている彼らにとっては、株は上がって儲かることよりも、下がっても人より損をしなければよいといった投資態度なのだ。彼らの頭には、株は上がるか下がるかしかないようで、上がるとなると、徹底的に買い、下がるとなると徹底的に売る。


昔、上がる株の基準に、利回り、PER、といろいろな基準を作って株を買い上げ、それでも説明がつかなくなると、Q値なるものまで持ち出して上げを正当化したものだ。しかし、これだけ下がってくると、利回り、PER、PBRでは説明できなくなってきている。それでも恐らく、ここから売ってくるだろう。


本来ここまで下がってくると、見えざる神の手が働いて、株価は反騰するものだが、辺りを見回しても買おうとする人がいない。1,300兆円あるといわれている個人資産は、大部分が60歳以上の人の手にあり、本来リスクを取りにくいマネーだが、それでも郵貯満期の折、一部は投資信託に流れたという。ところが、その後の拙劣な運用ですっかり投資信託を見放し、安い金利の商品に閉じこもってしまった。98年の相場で底値を買った外国人は、当時と違いアメリカ株で痛手を追い、今回は動けないだろう。となると誰が買うのか。


ここまでくると、もはや政策的な株の買い上げ以外に道はないようだ。リスクの取リ手のいない今の市場にこそ、国がリスクを取って市場を安定させることだ。国による株の買い上げの話になると、決まって無責任な評論家から、自由な市場論が出てきて反対を唱える。また、一部の売り方からは、それに同調する声が上がってくる。市場は市場に任せろというのだが、今の株価が本当に自由に形成されているか、余りにも制度的な原因による需給悪化で株価が押し下げられていないか。


株価下落が景気を悪化させる怖さは、つい3ヶ月ほど前まで日本経済の回復を疑わなかったマスコミの論調が、最近の株価下落で一斉に不況突入を言うようになったことをみても明らかだ。資産デフレのつけと、貯蓄好きの国民性から、有効需要を生むために、年間10兆円単位の公共投資をしなければ、デフレの輪から抜け出せないという議論には、それなりの正当性もあろう。ただ、これだけ財政赤字が膨らんでくると、GDPの6割を占める個人消費の縮小を放置して、何時まで公共部門だけで景気を支えていくことができるのだろうか。


ここは株価を上げて、ある意味でバブリーな消費を引き出さなければ、現状を救えない。金融機関にある持合解消株を全部買い上げてもせいぜい5兆円だ。無駄な公共投資を10兆円もやるよりはよっぽど効果のある景気浮揚ではないか。しかも現在の株価で買い上げれば、株価回復によって何兆円かの資産を後世に残せるかもしれない。問題は、今の不人気な政府に、一部マスコミの反対を押し切って、この決断ができるかだ。できなければ、おそらく株価下落で、森内閣は参議院選挙までもたないことは間違いない。

 

 


 

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