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健康指導(メタボ検診)などの基準値に問題はないか?

 まず、毎日新聞 2008年3月29日 東京夕刊の記事を引用します。
LDLコレステロール:本当に悪玉? 少な過ぎると死亡率上昇--メタボ基準の一つ
 脳卒中や心筋梗塞(こうそく)の発症の危険性を高める「悪玉」とされるLDLコレステロールは、低いほど死亡率が高まることが、大櫛陽一・東海大教授(医療統計学)らの疫学調査で分かった。LDL値の高さは、4月から始まる特定健診・保健指導(メタボ健診)でも、メタボか否かを判断する基準の一つで、悪玉という位置づけの是非が議論になりそうだ。【大場あい】

 大櫛教授らは、神奈川県伊勢原市で87~06年に2回以上住民健診を受けた約2万6000人を平均8・1年追跡。LDL値ごとに7群に分け、死亡率や死因との関係を調べた。
 全死因合計の「総死亡率」でみると、男女とも、最もLDL値が低い群(血液1デシリットル中79ミリグラム以下)が一番死亡率が高い。男性では年間死亡率が人口10万人あたり約3400人と、死亡率が最も低い群(140~159ミリグラム)の約1・6倍。女性も人口10万人あたり約1900人で、死亡率が最も低い群(120~139ミリグラム)の約1・3倍だった。
 脳卒中や心筋梗塞など心血管疾患による死亡率に限ると、男性では180ミリグラム以上になると死亡率が上昇したが、女性はほとんど関係ない。男女ともLDL値が低いと、がんや呼吸器疾患による死亡が増え、全体の死亡率が高くなった。

 大櫛教授はLDL値の適正範囲を「男性100~180ミリグラム、女性120ミリグラム以上」と提案。メタボ健診の基準では、LDL値が120ミリグラム以上の人は下げることを勧めているが、大櫛教授は「適切な範囲にあるLDL値を下げ過ぎる危険がある。コレステロールは人体に必須の物質で、少ないと免疫機能が低下するため、死亡率が上がるのではないか」と話している。

 → 要するに、大櫛教授説では従来異常とされていた値が正常と判断されるわけです。翔年は先端医学の知見はよく分かりませんが、大櫛教授の説は十分な説得力があるように思います。医療統計学のデータなので、直ちに因果関係をどうこう言うわけにはいかないけれど、LDL値が少ないと癌や呼吸器疾患による死亡が増えるのは、免疫機能が低下するからという推論は十分成り立つと思います。

 両者の見解は全く正反対の知見が含まれています。笑い事じゃありません。分かりやすく数字を整理してみます。

従来のLDL判定基準:       <120mg/dl  → 以下でなければならない。
大櫛教授の判定基準:(男性) 100~180mg/dl   → 大分緩和されている。
          (女性)  120mg/dl<   → 以上でなければならない?

 医学的知見がこれほど分かれているということは、基準値を決めたり、それに基いて医者がああせよ、こうせよと患者に指示することは出来ないんじゃないでしょうか?


 そこへ持ってきて、昨日の読売新聞朝刊トップに『指針作成医9割へ寄付金』、「国公立大、製薬企業から」として、こんな記事が載りました。
 高血圧、メタボリックシンドロームなど主要40疾患の診療指針を作成した国公立大学医学部の医師の約9割が、その病気の治療薬を製造、販売する製薬企業から、寄付金を受領していることが、新聞社が国公立の50大学に情報公開請求したデータでわかったというのです。

 読売新聞社は、医学部のある50国公立大学に、2002~06年度の5年間に医学部臨床系の医師に提供された寄付金の金額、寄付者、受け取った医師(講座)について情報公開請求し、48大学から開示された。福島、奈良両県立医大からは寄付者の企業名などが開示されず、解析できなかった。

 2006年度の場合、48国公立大学の医師や講座に支払われた寄付金の総額は約262億円(寄付講座を除く)で、02年度に比べ15%増えた。このうち製薬企業は約60%を占め、最も多い製薬企業の年間寄付総額は約11億円だった。

 48大学のデータを基に、がん、高血圧、糖尿病、ぜんそくなど主要な病気の指針40種類について、作成に携わった医師延べ276人の寄付金の受領状況を調べた。その結果、87%にあたる240人が、指針ができた年までの3年間に、それぞれの病気の治療薬を製造、販売する企業から、教官または所属講座あての寄付金を受領していた。

 寄付金額は、生活習慣病関連の指針で特に多く、今春から始まる国の特定健診・特定保健指導の基になる「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」(05年作成)の場合、作成委員会メンバーのうち国公立大の医師11人全員に、02~04年の3年間で、高血圧などの治療薬メーカーから計約14億円の寄付があった。

 04年発表の「高血圧治療ガイドライン」には、9人の委員全員に02~04年に計約8億2000万円、07年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」にも、4人の委員いずれにも3年間で計約6億円の寄付が、治療薬メーカーからあった。
→ これはゆゆしき問題と言わねばなりません。医学関係者がメタボ、メタボと声高に叫び、計算式や基準値をつくり、ちょっとでもはみ出した人間は生活習慣病の恐れがあるから、この薬を飲みなさいと処方する。こっそり裏口で企業からお金をもらいながら。一番やってはいけないことに医療のトップが手を染めているのではないでしょうか?
 

 対する日本医学会長高久史麿氏のコメント:「(企業と医師の資金関係は)一般の理解を得るためにも医学会全体が取り組まなければならない重要な問題と考えている。云々」→ トップに立つ人間が「一般の理解を得るために・・・」などと寝ぼけたことを言っている。透明性のルールをつくるなり、寄付に制限をもうけるなり、基準が医学的知見以外の要因によって歪められることがないように、医者自らが律しなくてはならないことであろうに。会長の理解不足はお話になりません。
1件のコメントがあります
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    $!WaTaNaBe!$さん
    2008/4/14 16:42
    こんにちは。

    4月の健康診断で、腹回りを測定されたのですが、85cm未満だったので「メタボでは無い」と告げられました。
    怪しいものです。
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