語源の快楽(24) 濡れ衣を着せられる

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語源の快楽(24) 濡れ衣を着せられる

 この世の中、不完全ではあるけれど、全体として見ればまぁまぁよく出来ていると考えていいと翔年は思っている。でも、時々「何だ、こりゃ!」というようなことが起こりますね。 
 中でも腹立たしいのは、無実の人を罪に陥れるように謀る人が結構いること。最近では検察の幹部の振る舞いに世間は怒りました。怒った市民は他人から無実の罪を負わされる人の無念に、もっと思いを致さなければならないと思います。この感覚が鈍いことは人間として恥ずかしいことでもあるのですから。

 他人の罪をきせられる冤罪のことを「濡れ衣を着せられる」と警喩的に使う。


かきくらしことは降らなむ春雨にぬれぎぬきせて君をとどめむ    古今集
意訳:空を暗くして、同じことなら降ってほしい。それだと、春雨に大雨だと無実の名を負わせて、出て行こうとする君を家に留めよう。
→ なかなかいい歌ですね。こんな濡れ衣なら着せられてみたいお方も多勢いらしゃるのではなかろうか。

目も見えず涙の雨のしぐるれば身の濡衣は干るよしもなし   後撰集
意訳:(あなたに疑いをかけられた悲しみのために)目も見えないほどに涙がしぐれの雨のように降りますので、我が身の濡衣は乾かすすべもございません。
→ 万葉集時代は「濡れ衣」は文字通り濡れた衣の意であったのに、時代が下がって古今集や後撰集時代になると、「ありもしないことをあるようにいわれる」意味になっているようですね。この歌は男が疑われている。

うき事をしのぶる雨の下にして我が濡れ衣はほせど乾かず    後撰集
意訳:(浮気の噂が立って)いやなことを辛抱しているこの雨の下ならぬ天の下にいるゆえに、私の濡れ衣は幾らほしても乾きません。
→ 噂を立てられて困っているのは女。
※あめのした=天の下と雨の下の掛詞


 さて、艶話、浮き名の話題はこのぐらいにして、郵便不正事件は厚生省の不正(これはあったのです)から、検察の不正(証拠品改竄)に焦点が移った。あってはならないことが、一人の不心得者でなく、組織的に行われていたことが嘆かわしい。最高検の厳正な捜査と処分を求めたい。

 この事件に関して次の二つのこともあわせて指摘しておきたい。
1 検察の取調べを受けた人物が、検察の作ったストーリィを認めるよう強要されて署名させられたことをTVで何度も訴えていた。しかし、自分が署名したことによって、無実の他人を罪に陥れたという反省(内省)がこの男には全く感じられなかった。
 このょうな報道の単純な姿勢も問われるべきと思う。

2 郵便不正事件の本筋は、障害者団体向けの割引郵便制度を企業が悪用しDMを格安で送付したことであり、この証明書偽造に厚労省が拘わっていたことです。さらに障害者団体を厚生省の幹部に口利きした国会議員が裏にいたことも事実である。
 次からつぎへと目の前の不正に目を奪われて、国会議員と中央省庁との癒着を忘れてはなりません。この関係には諸悪が巣くっているのだから。
 国民は目を曇らせることなく、絶えずこの癒着を見張っていなければなりません。
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