―能動的サイバー防御や自治体DXなど、法案審議に絡んだ投資テーマをピックアップ―
通常国会が1月24日に召集された。トランプ劇場の裏番組となった感はあるものの、「国策に売りなし」という相場格言があるように、国会で議論される新たな政策は個別株投資の戦略を練るうえで目を離すことができないテーマとなる。提出が見込まれる法案はいずれも、日本の将来に大きな影響力を持つものばかりだ。今回の株探トップ特集では、通常国会の会期中に審議される見通しの法案などを踏まえて、株式市場において注目が集まると予想されるテーマや関連銘柄をピックアップしていく。
●「安全運転」求められる自公政権
自民公明両党が少数与党となった昨年10月の衆院選からまもなく3ヵ月となる。議席数を大きく伸ばした野党の国民民主党との「部分連合」を通じ、石破政権は微妙な均衡を保っているようにみえるが、支持率が浮上する兆しはみえてこない。それよりも、今年夏に予定される参院選の結果次第で、政治情勢が一段と流動化するリスクが警戒されている。短命政権の可能性が横たわるなら、立身出世を是とする霞が関の官僚にとって、石破政権にコミットする意欲が削がれてしまうこととなる。
通常国会の会期末は6月22日。会期の延長がなければ、参院選は7月20日に実施されることが見込まれる。会期中の早い時期には、日米首脳会談が開かれる見通しだ。中国では3月に全人代が開かれ、景気浮揚策に関して何らかのアナウンスが打ち出される可能性がある。G7サミットは6月にカナダで開かれる予定で、同月には東京都議会選の投開票も行われる。
国内では、東京都議会の自民党会派の会計担当者が政治資金パーティーを巡り略式起訴され、石破政権は政治とカネの問題を巡る新たな爆弾を抱えることとなった。慎重な政権運営が求められる以上、「今の状況では石破政権は独自色を出しづらく、かつてのアベノミクス相場のように、政策期待が日本株全体を押し上げることは見込みにくい」(国内証券ストラテジスト)との声が聞かれる。
●「年収の壁」を巡り駆け引き始まる
国民民主は公約に掲げた「103万円の壁の撤廃」において、2025年からの壁の引き上げで与党側と合意した。ところが引き上げ幅について、与党側が25年度の税制改正大綱で123万円への引き上げにとどめる方針を示したことに反発。25年度予算審議において、国民民主は123万円のままでは反対する立場をとっている。予算の成立に向け、自公には日本維新の会を取り込む選択肢がある。維新は教育無償化を求めており、今後の落としどころが注目されることとなるだろう。年金制度改革においても、政党間での駆け引きが繰り広げられるに違いない。
株式市場においては国内の政治要因というよりも、「トランプ砲」で揺れ動く局面がしばらく続く公算が大きい。それでも、個別株投資の戦略を立てるうえで国会での法案審議を無視することは、収益を得るチャンスを放棄するのと同義である。例えば、年収の壁の更なる引き上げが実現に向かう場合、プチ贅沢関連株などにスポットライトが当たるシナリオが存在する。教育無償化に関しては、学校教育向け費用の浮いた分を学習塾に回す世帯が増える可能性があり、その恩恵を受ける銘柄に関心が向かうとみられている。
●ラピダス法案が審議入りの公算
政府側は今通常国会において59本の法案を提出する予定だ。産業政策の文脈で注目が集まっているのが、通称「ラピダス法案」である。北海道で半導体工場を建設するラピダス(東京都千代田区)について、経済産業省傘下の独立行政法人を活用して政府が実質的に同社の株主となることで債務保証などを通じて民間資金を呼び込み、最先端半導体の量産を支援できるようにするための法案だ。
ラピダスの株主には、トヨタ自動車 <7203> [東証P]やソニーグループ <6758> [東証P]、NTT <9432> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、キオクシアホールディングス <285A> [東証P]といった企業が名を連ねる。年明けには米ブロードコム
AI分野では、国際的な潮流に歩調をあわせる形で、不正利用の抑制と産業競争力の強化に向けた法案が提出される見込みだ。規制強化の側面を併せ持つ話とあって、国内企業のAI関連ビジネス全般に明るい材料となるかどうかは不透明感がある。半面、市場の関心はソフトバンクグループ <9984> [東証P]や米オラクル
●投資候補にサイバー防御やオンライン診療関連
投資テーマの観点で、最も注目度が高いといえるのは「能動的サイバー防御」である。サイバー攻撃の被害を防ぐために、通信環境を常に監視し、必要に応じて警察や自衛隊が攻撃元のサーバーにアクセスして無害化する仕組みを導入するための法案が提出される予定だ。実際の提出に先回りする形で、サイバー防衛関連株への物色意欲が高まっている。
関連銘柄の筆頭格であり、純国産製品で業容を拡大するFFRIセキュリティ <3692> [東証G]は、年明け以降のショートカバーを主導とした戻り局面が一巡しつつあるものの、防衛省を含め安全保障関連の需要を着実に取り込んでいる企業とあって、1株利益の増加を伴った中長期的な株高シナリオに期待が膨らむ。サイバーセキュリティクラウド <4493> [東証G]や網屋 <4258> [東証G]は25日移動平均線を上抜け、反騰機運が鮮明となっている。カウリス <153A> [東証G]はマネーロンダリングの防止につながる金融機関向け不正検知サービスを提供。金融庁や警察機関と足並みをそろえて事業を展開する。昨年3月の上場直後の水準から株価は大きく切り下げたが、直近では下値抵抗力をみせるようになった。
医師が不足する過疎地域の公共施設や都市部の駅ナカ施設を、 オンライン診療の拠点として活用できるようにするための法改正に関しても、審議される見通しだ。日本最大級のオンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」を手掛けるメドレー <4480> [東証P]や、処方箋プラットフォームのジェイフロンティア <2934> [東証G]の事業にポジティブな効果をもたらすとみられる。医療ビッグデータ事業を主軸とするJMDC <4483> [東証P]は遠隔画像診断サービスも運営。同社の成長性は海外投資家からも評価されており、株価は年始以降、持ち直しに動いている。
●地方DXや学習塾関連も要マーク
自治体業務においてDX(デジタルトランスフォーメーション)化を加速させようとする機運が一段と高まっている。問題はその財源となるが、公共事業や防災といった目的以外でも地方債の発行を可能にするための地方財政法の改正案も提出される見通しだ。自治体DX関連で名前が挙がるのがチェンジホールディングス <3962> [東証P]である。ふるさと納税事業も手掛けており、地方創生というテーマ性を併せ持つ。昨年秋以降続くレンジ相場を上抜けられるか注視される。
自治体向け基幹業務システムを手掛けるアイネス <9742> [東証P]は、25年3月期の最終利益が5割増となる見通しだ。同社株は旧村上ファンド系のエフィッシモキャピタルマネージメントが9%超を保有している。NSD <9759> [東証P]はシステム開発事業において公共団体からの受注が大きく伸びている。昨年12月には日立製作所 <6501> [東証P]とDXや生成AI分野における業務提携も発表。来期以降の業績拡大シナリオが期待されるにもかかわらず、株価は調整色を強めているが、200日移動平均線近辺において押し目買い需要に支えられている。
港湾施設の耐震化に向けた税額軽減措置の特例の対象地域を、南海トラフ地震などの津波想定地域にとどまらず全国に拡大する方針が、25年度の税制改正大綱において盛り込まれた。これに関連した港湾法の改正案も提出される見通しだ。五洋建設 <1893> [東証P]や東亜建設工業 <1885> [東証P]、東洋建設 <1890> [東証P]といった海上土木大手、海上土木中堅の若築建設 <1888> [東証P]、不動テトラ <1813> [東証P]などが関連銘柄と位置付けられることとなる。太陽光パネルのリサイクル義務化に向けた関連法案が成立した場合は、エヌ・ピー・シー <6255> [東証G]やTREホールディングス <9247> [東証P]の収益拡大に寄与しそうだ。
教育無償化に絡んだところでマークされる 学習塾関連では、個別指導の「森塾」と集団指導の「湘南ゼミナール」、大学受験の「河合塾マナビス」を展開するスプリックス <7030> [東証S]が、今期増収増益予想で配当利回りは4%近くの水準にある。習いごと関連に広げると、スイミングスクールのジェイエスエス <6074> [東証S]は配当利回り4%台。コロナ禍以降の業績は底堅く推移している。「東進ハイスクール」を展開するナガセ <9733> [東証S]は昨年末以降の戻り局面が一服したものの、それでも配当利回りは5%台に上る。
維新の求める教育無償化は、高校授業料について所得を問わず無料にしようとするものだ。立憲民主党を含め野党は公立小中学校の学校給食無償化も求めている。実現した場合は学習塾のみならず、保育園や学童クラブを運営するJPホールディングス <2749> [東証P]など子育て関連銘柄全般が投資候補となるだろう。ほかにも、子ども服の西松屋チェーン <7545> [東証P]は25年2月期最高益予想で需給面では売り長の状況。同じく今期最高益予想の玩具のタカラトミー <7867> [東証P]は年始から調整色を強めており押し目買いの好機にみえる。子ども写真館のスタジオアリス <2305> [東証P]も、業績押し上げ効果への期待が膨らむ余地があると言えそうだ。
株探ニュース
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