2. セグメント別概況
(1) エンタープライズソリューション
売上高は8,181百万円(前年同期比27.6%増)、営業利益は1,060百万円(同35.2%増)、営業利益率は13.0%(同0.7ポイント上昇)となった。売上高の前年同期比増加額は1,767百万円となり、全社の増加額2,655百万円の約3分の2を占めた。売上高については、小売業向け開発とシステム機器販売が好調に推移し、金融業向けのシステム開発も増加したことで増収となった。営業利益については、増収に伴う売上総利益の増加に加え、収益性の高い案件の貢献により増益となった。計画比では、売上高は12.1%上回り、営業利益も26.2%と大きく上回った。また、受注高は8,140百万円(同5.8%増)と堅調であった。
売上高の内訳を見ると、ビジネスソリューションの売上高は2,652百万円(前年同期比13.2%増)であった。製造業・物流業向けパッケージ提供により堅調に推移し、小売業向けも主要顧客のIT投資需要を確実に捉え、店舗系システム関連開発を中心に増加した。また、金融・公共ソリューションの売上高は3,797百万円(同14.5%増)となった。金融・保険業向けはカード決済分野の業務が大きく伸長し、補助金案件の反動減を心配した官公庁・団体向けは、既存顧客を中心にインフラ構築案件なども取り込み堅調だった。さらに、システム機器販売の売上高は1,730百万円(同129.1%増)の大幅増収であった。特に小売業向けPOS関連の機器販売が、前年同期の倍以上に売れて好調であった。
(2) サービスソリューション
売上高は6,079百万円(前年同期比2.3%増)、営業利益は216百万円(同58.6%増)、営業利益率は3.6%(同1.3 ポイント上昇)となった。売上高については、クラウド・インフラサービス分野の構築案件が堅調に推移し小幅増収となった。営業利益については、プロジェクト管理の強化により収益性が改善し増益となった。計画比では、売上高は案件を着実に積み上げて2.4%上回った。ただ、営業利益は回復基調であるものの、第1四半期に前年度の不採算案件の影響が残ったことで16.8%の未達であった。既述のとおり、同セグメントは2020年3月期より独立したセグメントであり、事業拡大に向けた体制強化、新サービス展開のための先行投資などが影響し、他セグメントと比較し営業利益率が相対的に低い。事業が軌道に乗り同社全体の業績に貢献するには、もう少し時間がかかるようだ。一方、受注高は6,424百万円(同5.7%減)となったが、これは前年同期の数字が良かったことの反動である。
売上高の内訳を見ると、クラウド・インフラサービスの売上高は4,675百万円(前年同期比2.4%増)となった。クラウドは、クラウド構築関連が堅調に推移し増加した。インフラ・その他サービスは、データマネジメント分野が好調に推移し拡大傾向が続いている。デジタルソリューションの売上高は1,404百万円(同2.0%増)となった。IoT・AIはAI分野など先行投資的な活動は推進しつつも、IoT分野をはじめとする基盤事業の安定化に注力した。さらに、WEB・ECはECサイト構築案件を中心とした案件拡大により堅調に推移した。
(3) エンベデッドソリューション
売上高は5,066百万円(前年同期比9.1%増)、営業利益は732百万円(同5.9%増)、営業利益率は14.5%(同0.4ポイント低下)となった。売上高は50億円台に乗り、利益率も高水準を維持した。売上高については、オートモーティブ・モビリティ分野とモバイル分野を中心に堅調に推移した。また、利益については、増収に伴う売上総利益の増加により増益となった。計画比では売上高が4.7%、営業利益は12.7%それぞれ上回った。既存顧客の深耕により生産性が向上し、引き続き高い利益率を維持しているが、これは既述のとおり技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないためと考えられる。なお、受注高については5,351百万円(同13.4%増)と堅調である。
売上高の内訳を見ると、同社の得意分野であるオートモーティブはIVI※1など既存領域は減少傾向ながら、ADAS※2をはじめとする他分野への展開が好調に推移した。モバイルは金融系モバイルアプリ及びサービス開発が増加した。設備機器は放送設備関連開発や決済端末関連開発などが伸長した。通信では5G関連は一巡したがネットワーク機器開発関連が好調に推移した。
※1 In-Vehicle Infotainment systemの略で、次世代の車載情報通信システムのこと。
※2 Advanced driver-assistance systemsの略で先進運転支援システムのこと。車の衝突検知や位置判定などドライバーの運転操作を支援するシステムの総称。
(4) デバイスソリューション
売上高は4,455百万円(前年同期比7.9%増)、営業利益は704百万円(同10.6%増)、営業利益率は15.8%(同0.4ポイント上昇)となった。売上高は、半導体設計・開発分野が堅調に推移し増収となった。利益については、増収に伴う売上総利益の増加により増益となった。計画比では売上高が0.8%、営業利益が8.4%上回り、利益率は15%後半に上昇した。エンベデッドソリューション同様、既存顧客の深耕により生産性が向上して営業利益率が上昇したほか、技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないこともあり、引き続き高い利益率を維持している。同社は汎用的な分野ではなく個別分野で強いが、取引先が固まっている分野であるため、主要顧客との関係を深掘りして業績を伸ばしている。受注高は4,572百万円(同0.7%増)と横ばいに留まり、今後の半導体関連の動向を注視する考えだ。
売上高の内訳を見ると、半導体設計分野の高い需要が続き主要顧客との取引が増加して好調に推移し、得意領域であるLSI設計・開発・評価業務が堅調に推移し拡大したものの、LiteASICビジネスは半導体の在庫調整により需要が減少した。また、業界全体の慢性的な人材不足対策として、海外活用やパートナー連携を拡大している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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