2. 事業セグメント別見通し
(1) 経営コンサルティング事業
タナベ経営<9644>の2020年3月期の売上高は前期比2.5%増の5,300百万円、セグメント利益は同1.7%増の1,380百万円を見込む。TCBの推進により、経営コンサルティング、人材開発コンサルティングにおける契約社数を拡大することで増収増益を目指す。営業利益率が若干低下するのは、コンサルタントの増員による人件費増を見込んでいることが主因である。2020年3月期末のコンサルタント人員は、経営コンサルタントと人材開発コンサルタント合わせて、前期末比25名増の201名を計画している。今後の主な事業戦略は以下のとおり。
a) ドメイン・ファンクションコンサルティング戦略
経営コンサルティング契約への導線となる「戦略ドメイン(事業領域・業種)&ファンクション(組織・経営機能)研究会」は、スクラップ&ビルドも含めて研究テーマを現在の30テーマから早期に35テーマに拡大していく方針。研究テーマについては時流に合ったニーズの高いテーマを企画し、開催していく。2020年3月期は新規テーマとして「人材開発」「「成長M&A」実践」の2テーマを立上げている。そして、各研究会の戦略リーダーを育成するとともに、コンサルティングビジネスモデルを確立し、付加価値の高いサービスを全国の顧客に提供していく戦略である。
また、2020年3月期は研究会の海外視察も積極的に行っていく方針である。2019年5月に世界最大のHRイベントで米国視察したほか、6月以降にアグリビジネス(オランダ)、ビジネスモデルイノベーション(フィンランド・エストニア)、観光・ツーリズム(ハワイ)、尖端技術研究会(深セン)等の視察を予定している。
加えて、新たな取り組みとしてアライアンス(提携)による「コンサルティング・テック」の開発にも着手している。具体的には、2019年5月にRPA導入支援サービスを展開するキューアンドエーワークス(株)と業務提携契約を締結し、RPAを活用した業務改善コンサルティング「Robo Working」を共同で開発し、主に中堅、中小企業をターゲットに提供を開始することを発表した。企業の働き方改革や業務効率向上に向けたコンサルティングサービスにおいて、キューアンドエーワークス(株)のRPAツールを導入し、効果的な運用方法等を提案・支援していく。生産性向上や人手不足への対応が経営課題となっている中堅・中小企業は多く、同サービスの潜在的なニーズは大きいと見られる。
b) 人材開発コンサルティング戦略
人材開発コンサルティングでは、「ファーストコールカンパニー(FCC)」を志す企業向けのHRプラットフォームとして、「FCCアカデミー(企業内大学)」の普及拡大を目指す。企業内大学設立を支援する「アカデミーコンサルティング」、デジタル機器を使って場所と時間を選ばない学習環境を提供する「アカデミークラウド」、セミナーやオーダーメイド研修を提供する「リアル」の3つのサービスをワンストップソリューションとして提供することで、導入企業数を拡大していく。人材開発に関するサービスでは、様々な企業がeラーニングやタレントマネジメントシステムを提供しているが、いずれも一部のサービスのみであり、企業の人材開発にトータルで対応できる企業は少なく、同社の強みとなる。
導入社数として、2019年3月末の約80社から、2020年3月末までに約100社へ導入することを目標としている。現在、導入している企業は中堅企業が多いが、今後は大企業への導入も推進していく方針となっている。導入企業にとっては企業内大学を設置することにより人材育成を効率的に強化できるだけでなく、人材採用面においてのPR効果にもつながるといったメリットがある。将来的な構想として、「アカデミークラウド」の導入企業同士が業種別につながるオープンプラットフォームの構築も検討している。
c) M&Aアライアンスコンサルティング戦略
M&Aアライアンスコンサルティングでは、全国の金融機関約100先(支店で約4,500店)とのアライアンス(提携)を通じて、「成長M&Aコンサルティング」「事業承継・成長支援」「SPコンサルティング」等のコンサルティングサービスを提供していくことで、地域の中堅・中小企業(約150万社)の発展及び地域の活性化に取り組んでいく。全国主要10拠点にファームを展開している同社の強みを生かせる分野と言える。このうち「成長M&Aコンサルティング」とは、成長のためのM&Aを志向する同社の顧客企業(買い手)に対して、アライアンス先と連携しながら候補案件を紹介していくサービスとなる。同社の中では顧客企業の成長を実現する経営コンサルティングメニューの1つという位置付けであり、M&A専門のコンサルティング企業のような仲介により成約件数を積極的に伸ばしていくというスタンスではない。
また、新たな顧客基盤の拡大を目的として、スタートアップ企業や後継ぎベンチャー企業に対する支援、並びにこれら企業と同社の顧客(主に中堅企業)とをつなぐ「スタートアップファーストコンサルティング」にも注力していく。資金や協業先を必要としているスタートアップ企業の優れた技術からビジネスを発想し、新たな成長分野を模索している中堅企業との橋渡しを行う。
具体的な取り組みとして、2019年5月にグローバル・ベンチャーキャピタル/アクセラレーター大手のPlug and Play Japan(株)と「Brand & Retail」分野における「エコシステム・パートナーシップ」契約を締結したことを発表した。2019年6月からスタートするPlug and Play Japan(株)の「Brand & Retail」分野のアクセラレーションプログラム※を通じて、スタートアップ企業と同社及び同社の顧客企業との共創に取り組んでいく。
※大手企業がスタートアップ企業との協業・出資を目的に、オープンイノベーションの一環として期間限定で行われるプログラムで、今回は先見的なブランドや小売業者及び消費財と、小売バリューチェーンに影響を与えるスタートアップ企業とを結ぶプログラムとなっている。
(2) SP(セールスプロモーション)コンサルティング事業
2020年3月期の売上高は前期比3.2%増の4,000百万円、セグメント利益は同6.5%増の200百万円となる見通し。TCBの推進による「SPコンサルティング」の契約数増加と、業種やプロモーションテーマという観点で業務プロセスを見直し、専門領域の確立とチームSPコンサルティングを推進できる組織デザインの構築により増収増益を目指す。
また、プロモーション・ブランディング戦略の立案・実行支援において、Webプロモーションを導入することで顧客価値をより一層高めていく取り組みを推進していく。中でも、地域企業のブランディング構築に対するニーズは強く、大阪本社、東京本社、中部本部(名古屋)の事業所を中心に、営業活動を全国へとより一層広げていく計画となっている。なお、ダイアリーの売上については前期比横ばい水準で見込んでいるが、2019年に発行60周年を迎える「ブルーダイアリー」のブランド力をさらに強化していく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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