1. 2024年9月期第2四半期の業績概要
マイクロアド<9553>の2024年9月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の7,086百万円、営業利益が同41.9%減の411百万円、経常利益が同39.6%減の418百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同35.3%減の329百万円と減収減益だった。主力サービスの1つである「UNIVERSE」は増収増益と好調だったものの、タクシーサイネージ契約更改の影響を受け、デジタルサイネージが減収減益となったことが響いた。
通期業績予想に対する進捗率は、売上高が47.8%、売上総利益が48.0%、営業利益が55.5%、経常利益が56.6%、親会社株主に帰属する当期純利益が58.2%となり、営業利益以下の各利益が想定を上回る推移を見せた。2024年9月期に関しては、期初の時点からタクシーサイネージの契約更改などが減益要因となることを想定していたものの、「UNIVERSE」の業績がデジタルサイネージの落ち込みをカバーした格好だ。
(1) データプロダクト
2024年9月期第2四半期累計のデータプロダクトの売上高は前年同期比3.6%増の3,467百万円、売上総利益は同8.6%減の1,198百万円だった。主力事業である「UNIVERSE」の売上高は同11.3%増の2,975百万円、売上総利益は同3.0%増の1,087百万円と好調だった。一方で、タクシーサイネージの契約更改を受け、デジタルサイネージの売上高が同26.9%減の493百万円、売上総利益が同56.6%減の111百万円と大きく落ち込んだことが利益を押し下げた。
「UNIVERSE」に関しては、KPIである稼働アカウント数が順調に拡大し、増収増益となった。顧客の属性ごとに最適化した営業体制のもと、顧客ニーズを的確にとらえた製品開発や製品提供に注力した。顧客の業務形態に合わせてオンラインでのセミナー開催やマーケティング活動を行うなど、効率的かつ効果的な営業活動に注力したことや、データパートナーとの連携により業種別プロダクトの性能を継続して高めたこと、なども稼働アカウント数の増加に寄与した。特に業績の安定化と顧客基盤の強化を図るという観点から、景況感の影響を受けづらい中小顧客と大手顧客への直販に注力し、中小顧客を中心にBtoB向けの「シラレル」や、地方自治体向けの「まちあげ」の稼働アカウント数が大きく伸びた。加えて、大手直販を中心にEC業種の売上も拡大した。第2四半期単独の顧客属性ごとの売上は、大手顧客直販の売上高が前年同期比46%増、中小顧客が同6%増と成長した。各種営業戦略が順調に進捗し稼働アカウント数が増加するなか、大手顧客の予算拡大により平均顧客単価が回復したことも業績の拡大に寄与した。
PostCookieへの対応も順調に進捗しており、上期においては460件のアカウントにおいて代替施策のテストを実施した。一方、デジタルサイネージに関しては、美容サロン向け新サービス「OCTAVE」の立ち上げに注力したものの、2023年9月期に発生したタクシーサイネージ契約更改の影響が大きかった。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高は前年同期比5.9%減の3,618百万円、売上総利益は同0.5%減の973百万円だった。メディア向けコンサルティングは、売上高が同15.9%増の1,365百万円、売上総利益が同5.4%増の392百万円と好調だった。「MicroAd COMPASS」を通じて、メディア企業に対する広告枠の企画提案や提供する広告サービスの改善などによってトップラインを伸ばした。また、利益率の高い製品の販売が好調に推移したことが利益を押し上げた。一方、海外コンサルティングに関しては、売上高が同21.1%減の1,361百万円、売上総利益が同1.2%増の345百万円だった。売上に関しては、前年同期に一時的な大型案件があった反動により減収となった。利益に関しては、粗利率の高い商品の販売に注力したことにより、前年同四半期比では増益となった。足元では、2024年3月の訪日中国人数が前年同月比496%増となるなど、インバウンド需要が本格的に拡大している。同社はインバウント関連の各種新規サービスを市場に投入しており、期末に向けて旺盛なインバウンド需要が業績に取り込まれることが期待される。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2024年9月期第2四半期には48.9%まで高まっている。今後も同社は「データプロダクト」に注力する方針であり、収益性が高まるものと弊社は予想する。
2. 財務状況と経営指標
2024年9月期第2四半期末時点の財務状況は、総資産は前期末比1,185百万円増加の8,030百万円となった。この内、流動資産は受取手形及び売掛金の増加586百万円などにより、550百万増加した。固定資産は、投資その他の資産の増加513百万円、有形固定資産の増加36百万円などにより635百万円増加した。
負債合計は前期末比857百万円増加の3,972百万円となった。この内、流動負債は短期借入金の増加500百万円、支払手形及び買掛金の増加360百万円などにより、852百万円増加した。固定負債は86百万円となり、前期末から大きな変動はなかった。純資産合計は同328百万円増加の4,057百万円となった。これは主に、利益剰余金が329百万円増加したことなどによる。
経営指標は、流動比率が前期末比22.1ポイント減の143.4%、固定比率が同13.1ポイント増の71.8%となった。依然として健全な数値であり、長短の支払い能力に問題はないと弊社は考える。また、自己資本比率は42.7%と前期末比2.7ポイント低下した。ただ、中長期的には自己資本比率は高まると弊社は推察する。利益率の高いデータプロダクトに注力するなかで当期純利益を積み上げることによって、純資産の厚みが増すためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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