―関連企業に好業績見通し多数、6月には新たな銘柄のIPO控え注目度も上昇へ―
5月29日付の日本経済新聞朝刊で、「政府は2025年にも企業が自社株を使って海外企業を買収できるように会社法を改正する」と報じられた。企業が買収する際、自社株を対価として対象会社の株式を譲り受ける「株式交付」は、21年に会社法に新たに設けられた買収手法だが、記事によると、これを海外企業買収の際にも使えるように法制度を見直すという。制度改正により M&A市場が更に活発化することが期待されており、関連銘柄には注目が必要だ。
●株式交付で海外企業に対するM&A活発化か
株式交付とは、会社法によると「株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付すること」とあり、つまりは自社株を対価に対象会社の株式を譲り受けることをいう。M&Aに際しては似た仕組みとして「株式交換」があるが、株式交付は株式交換とは異なり、完全子会社とする必要がないために幅広いM&Aや資本提携に使えることになる。
海外市場に活路を見出す企業にとって、法改正は海外企業を対象とするM&Aをしやすくなるというメリットがある。足もとの円安は、現金での海外企業買収に逆風となっていることもあり、海外企業に対するM&A市場は、法改正により更に活発化する可能性がある。
●事業承継でも注目されるM&A
またM&Aは、中小企業を中心に深刻化する事業承継問題の解決策としても拡大が見込まれている。全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が3割に達する「2025年問題」では、労働力の不足や医療や介護の需給のバランスの崩壊が懸念されているが、25年には平均引退年齢とされる70歳を超える高齢者も4人に1人となる。事業承継問題は喫緊の課題だ。
経済産業省の資料によると、25年に70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万社(日本企業全体の3分の1)で後継者が不在とされる。この問題を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増によって累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしており、課題解決の一つの手法としてもM&Aが注目されている。
●23年のM&A件数は4015件と高水準
足もとの国内M&A市場の動向はどうか。レコフデータ(東京都千代田区)によると、23年の日本企業のM&A件数は4015件と、過去最多を記録した22年の4304件を289件(6.7%)下回り、3年ぶりに減少した。その内訳をみると、日本企業間のM&Aが3071件(前年比8.2%減)、日本企業から海外企業へのM&Aが661件(同5.8%増)、海外企業から日本企業へのM&Aが283件(同15.3%減)で日本企業間、海外から日本は減少したが、日本企業から海外企業のM&Aは拡大している。
23年は3年ぶりに減少したM&A件数だが、24年1~3月では前年同期を2割以上上回って同期間として最多を更新しているという。引き続きM&A市場は活発と見て良いだろう。
●M&A関連銘柄の業績動向
M&A市場の活発化が見込まれる一方、株式市場では関連銘柄の株価は冴えないものが多い。期待が大きかった反動もあるが、足もとで成約金額の伸び悩みなどが懸念されている。ただ、業績は好業績見通しのものが多く、見直し余地は大きいだろう。
日本M&Aセンターホールディングス <2127> [東証P]は中堅・中小企業のM&A仲介大手で、24年3月期連結決算は、営業利益が160億6600万円(前の期比5.0%増)となった。成約件数が1146件(同9.1%増)と過去最高の件数を記録した一方、成功報酬2000万~5000万円規模の成約数が増加し、1件当たりM&A売上高は前の期をやや下回った。25年3月期は成長のための戦略投資を本格化するため増益率は鈍るが、引き続き大型案件受託施策の強化などを実施し、営業利益170億円(前期比5.8%増)を見込む。
M&Aキャピタルパートナーズ <6080> [東証P]は事業承継案件を得意とするM&A仲介会社で、24年9月期第2四半期累計(23年10月~24年3月)連結決算は、営業利益が16億6500万円(前年同期比69.6%減)となった。成約件数は前年同期比21.5%増の96件と上期として過去最高となったものの、うち大型案件が同11.8%減の15件にとどまり、特に前年同期に超大型案件があった反動が響いた。ただ、通期では成約件数220件(前期比28.7%増)と過去最高更新を見込み、うち大型案件も47件(同38.2%増)と大幅増を見込む。営業利益は81億200万円(同8.8%増)の見通しだ。
ストライク <6196> [東証P]は、中小企業の事業承継案件が主体のM&A仲介会社で、24年9月期第2四半期累計(23年10月~24年3月)単独決算は、営業利益が37億600万円(前年同期比82.9%増)となった。案件の成約組数が130組(同25.0%増)となり、期首計画の122組を上回ったほか、大型案件の成約が23組(同76.9%増)に上り、案件単価も上昇した。通期では成約組数270組(前期比30.4%増)を計画し、営業利益70億3700万円(同35.3%増)を見込むが、上期業績が期首計画を上振れたことから、通期業績予想も上振れが期待されている。
オンデック <7360> [東証G]は事業承継案件に強みを持つM&Aアドバイザリー会社で、24年11月期第1四半期(23年12月~24年2月)単独決算は、営業利益が3500万円(前年同期1億1100万円の赤字)と黒字転換した。新規受託件数は14件と前年同期の29件から落ち込んだものの、成約件数が前年同期比4件増の7件に増加したほか、平均報酬単価が前年同期の3000万円から4100万円に増加したことが牽引した。通期では、成約件数42件(前期比55.6%増)、営業利益2億3500万円(前期2億円の赤字)を見込む。
ジャパンM&Aソリューション <9236> [東証G]は主に中小企業を対象としたM&Aアドバイザリー会社。24年10月期第1四半期(23年11月~24年1月)単独決算は、前年同期は上場前で四半期決算が開示されていないため前年同期との比較はできないものの、営業利益は700万円となり、会社側によると70.1%減益となった。第1四半期は通期を通して案件獲得時期となるため、成約実績が少なくなりやすい傾向があるなか、成約延期となった案件が2件あったことが響いた。ただ、上場効果で引き合いが増えているもようで、通期の営業利益2億4500万円(前期比39.1%増)予想は据え置いている。なお、6月12日に決算発表が予定されている。
M&A総研ホールディングス <9552> [東証P]は売り手企業に対して着手金・中間報酬ゼロの完全成功報酬制を導入したM&A仲介会社。24年9月期第2四半期累計(23年10月~24年3月)連結決算は、営業利益が49億3800万円(前年同期比2.2倍)となった。アドバイザー数の拡大で成約件数が123件(同98.4%増)に増え、うち大型案件も14件(同75.0%増)に増加した。受託残高も順調に積み上がっており、通期では255~275件(前期137件)の成約を予想。営業利益は72億円(前期比57.2%増)を見込む。
このほか、6月18日には完全成功報酬制のM&A仲介専門会社であるインテグループ <192A> [東証G]の上場を控えており、M&A関連への関心は高まりそうだ。
株探ニュース
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