日本BS放送<9414>のサステナビリティへの取り組みについては、主に社会課題の解決に貢献する情報発信が挙げられる。様々な視聴者層に向けた教育機会の提供として、多様なコンテンツを制作している。レギュラー番組の「偉人・敗北からの教訓」においては、偉人たちが犯した歴史的な大失敗から、その背景、要因、影響等を読み解き、偉人の人物像を浮き彫りにするとともに、現代を生きる人の教訓とすることができる。絵本の読み聞かせ番組の「今日のえほん」では、未来を切り開くすべての子どもたちのために、心を豊かにする絵本と出会う機会を提供している。京都文化の継承として「京都画報」「京都浪漫 悠久の物語」をレギュラー放送しているほか、毎年テーマを変えながら放送している「桜前線全国キャスターリレー!」や栃木県宇都宮市にて行われるアニメイベント「とちてれ☆アニメフェスタ!」への協賛等は、地方振興につながる施策となっている。そのほか、環境に関する問題提起を内包した番組の放送・配信等、コンテンツをはじめとした情報発信を通して、社会課題の解決に貢献するような施策に取り組んでいる。
子会社である理論社と国土社においては、子どもの本の専門出版社が集まる、良質な児童図書の出版・普及活動を目的とする「児童図書 十社の会」に所属し、出版書籍による教育機会の提供を行っている。
ダイバーシティの推進については、ジェンダー平等として女性社員の活躍に向けた環境整備や、人材の多様化のための中途採用等を強化している。同社によれば、2024年8月期時点での割合は、女性社員は32.7%、女性管理職は22.4%、中途採用者は80%以上となっている。同社では、放送局として魅力あるコンテンツを視聴者に提供するためには、コンテンツの多様性が重要と考えており、人材の多様性が魅力的な多様性のあるコンテンツを生み出すことから、多様性を重視した人材戦略を実践している。この考えはSDGsにも通じるものであり、同社で働く社員にとっても好意的に受け止められているようである。
■株主還元
IR活動を強化、配当性向40%程度を基準とした方針を維持
同社は、BSデジタル放送事業者という高い公共性に照らしつつ、近年の業界を巡る経営環境の変化やネットとの競争激化に対応できる内部留保の充実と財務体質の強化を目指すと同時に、業績に応じて継続的に安定した利益配当を実施する基本方針を掲げてきた。この方針の下、2024年8月期の1株当たり配当金は、期初の配当予想どおり前期比4円増額し30円の期末配当とした。
2023年8月期決算において、一定程度の財務体質の強化が実現できたと判断し、2024年8月期より配当性向40%を基準として株主還元を拡充することを決定した。2024年8月期については、期初予想で配当額30円、配当性向40.5%を計画し、予定どおりの配当額とした結果、計画を超える増益により配当性向は36.7%と40%に届かなかったものの、2023年8月期の33.4%からは水準が引き上げられた。なお2025年8月期は1株当たり配当額30円、配当性向38.0%となる見込みである。
IR活動については、情報開示に係る体制や手段のさらなる整備を図り、株主・投資家とのコミュニケーションを充実させる。2024年8月期には、中間決算説明会と本決算説明会を実施し、証券会社や機関投資家、個人投資家向けの情報を積極的に開示した。投資家との対話で得られた意見については取締役会に定期的に報告し、適宜施策の見直しを行っていく。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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