1. 2024年6月期業績動向
2024年6月期の業績は、売上高4,665百万円(前期比7.5%増)、営業利益833百万円(同23.7%増)、経常利益831百万円(同29.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益502百万円(同20.0%増)となった。大手コンサルティングファームの採用傾向の変化に適応できたことで、例年収益が鈍化する第4四半期を抱えながらも下期を中心に大きく業績を向上することができた。期初予想に対しては、売上高で457百万円未達となったものの、営業利益で25百万円、経常利益で25百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で15百万円の過達となった。
日本経済は、企業収益や雇用情勢に改善の動きがみられ、緩やかな回復基調で推移した。一方、不安定な国際情勢や資源価格の高騰、世界的な金融引締めに伴う影響などにより、先行きは依然として不透明な状況が続いている。同社の主要顧客が属するコンサルティング業界では、DXが企業の全社的な変革や中長期の戦略に組み込まれるようになったことを反映し、DXコンサルティングの需要が引き続き堅調で、ハイエンド人材に対する需要も底堅く推移した。一方、コロナ禍直後の人材不足を背景に積極採用してきた若手層が充足してきたため、大手コンサルティングファームを中心に、採用ニーズが若手層から不足感のあるプロジェクト管理などを担えるマネージャー以上の人材へとシフトした。同社はこうした採用傾向の変化に対応し営業機能の強化を進め、ハイエンド人材の需要を広く取り込んだことが奏功した。
2024年6月期上期は顧客の採用傾向の変化への対応とスキルシェアの体制強化のため厳しい業績だったが、下期には早速成果となって表れ、通期の売上高は人材紹介とスキルシェアがともに前期を上回った。これに伴い売上総利益が拡大した。販管費は効率化が進み、営業利益は大幅な増加となった。人件費は人員増強で増加したが、顧客需要の変化により期中に自社の採用ターゲットを変更したことで結果として期初の採用計画には届かず、予算に対しては抑制された。加えて上場のタイミングで投下したブランディング広告や上場関連費用もなくなったことから、販管費は売上高の伸びを下回り、販管費率で2.3ポイントの良化となった。期初計画との比較では、顧客需要の変化で上期に苦戦したことで売上高は未達となったが、販管費の抑制や若手層からマネージャー以上の層が増えたことによる単価の上昇により採算が改善し、営業利益は過達となった。
環境変化に対して社内体制を強化
2. サービス別の動向
人材紹介については、コンサルティングファームの若手層に対するニーズが減少した影響により、入社決定人数は前期比微増に留まった。特に2024年6月期第1四半期は厳しい状況だったが、こうした環境変化に適応してマネージャー以上の人材に対するマーケティングを強化したことにより、第2四半期以降はマネージャー以上の決定割合が増加傾向で推移、加えてチーム制を構築できたため事業会社向けも順調に拡大した。平均売上単価は手数料率の高いマネージャー以上の決定割合が高まったことで前期を上回り、売上高は3,161百万円(前期比8.3%増)と増収となった。なお、第4四半期はマーケティング強化施策の効果が強く現れたため、四半期売上高としては過去最高となった。
スキルシェアについては、主要顧客であるコンサルティングファームのニーズが変化するなか、フリーコンサルBizの上期はマッチング率が低下して稼働が減少したが、顧客に対するヒアリングの強化やフォロー体制の整備が奏功して第3四半期以降は復調し、売上高は1,504百万円(前期比5.6%増)と通期で増収となった。特に例年伸び悩む傾向にある第4四半期に稼働人数を伸ばすことができたため、第4四半期の売上高は四半期売上高として過去最高を更新した。このように季節変動をクリアできたのはチーム制など組織力が向上したことが要因と考えられるため、今後は成長軌道への回帰が期待される。なお、コンパスシェアについては着実に前進させるため、サービスプランの充実や協賛活動・業務提携による利用機会の創出など、現役コンサルタントの登録シェア拡大に向けた施策を講じた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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