新興市場は冴えない展開が継続。東証のPBR1倍割れ改善要請や米著名投資家バフェット氏の日本株への追加投資表明などを背景に、海外投資家による日本株への見方が変わるなか、東証プライム市場の主力株への投資が物色の中心となり、新興株は「蚊帳の外」状態が続いた。また、日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(ETF)<1570>などを通じて日経平均の下落に賭けていた個人投資家は多く、日経平均の高値更新が続くなか、含み損の悪化を新興株の売りで相殺しようとする動きも需給面での重しになったようだ。なお、今週の騰落率は、日経平均が+4.83%であったのに対して、マザーズ指数は-0.02%、東証グロース市場指数は+0.12%だった。
個別では、業績絡みのリリースを材料に明暗が素直に株価に反映される形となり、週間上昇率上位にはセキュア<4264>、デジタルメディア<3652>、ビープラッツ<4381>、GENOVA<9341>が入った一方、下落率上位にはアライドアーキテクツ<6081>、リビングPF<7091>、アクリート<4395>などが入った。時価総額上位銘柄ではVTuber関連ビジネスを展開するカバー<5253>が連続大幅増益見通しを発表したことで週間で+23%、同業のANYCOLOR<5032>も+10%と上昇した。宇宙ベンチャーのispace<9348>は今期の大幅増収および赤字幅縮小の見通しを契機に月面着陸失敗後の下落から出直り、週間で+18%となった。
■出遅れ感のある銘柄に着目、6月IPO新たに6社承認
来週の新興市場は強含みか。今週まで東証プライム市場の主力株を中心とした物色がしばらく続いてきた。しかし、日経平均のバブル崩壊後の高値更新に伴う目先の達成感もあり、こうした流れは一服すると考える。
また、今週末にかけて、一時楽観的な見方が広がっていた米連邦政府の債務上限問題を巡る交渉が一時停止されたと伝わっている。リスク回避の為替の円高も誘発されやすい状況を想定すると、これまでの反動で東証プライムの主力株に売りが出やすいことが予想される。
一方で、今週末、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は銀行の貸し出し態度の悪化を通じた信用収縮がもたらす影響を指摘し、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ停止を示唆した。その直前まで各連銀総裁から追加利上げを示唆する発言が相次いでいたことから、新興株にとっては安心材料となる。
加えて、レバレッジ型ETFを通じて日経平均の下落を狙ったポジションを形成していた個人投資家の多くは、これまで日経平均の高値更新により含み損を抱えさせられていたが、こうした状況の解消も期待される。海外投資家の日本株への見方が変わっているなか、これまでよりは下値への耐性がついていると思われ、日経平均の下落はせいぜい29000円台半ばまでと予想されるが、それでも個人の含み損の減少は新興株の支援材料となろう。
個別では、まずカバーのようなマザーズ指数が軟調に推移している中でも高値をとってきている強い銘柄は面白い。また、これまでの物色の流れの反動を想定するならば、チャートにおいて出遅れ感があり、かつ足元で反転の兆しが見られつつあるispace、プロジェクトC<9246>、エクサウィザーズ<4259>、アイドマHD<7373>などに注目したい。なお、今週は6月の新規上場案件が新たに6社承認されている。
<FA>
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