1. 値上げの影響とインプリケーション
コロナ禍やウクライナ情勢などに端を発し世界的に波及した物価上昇は、国内経済にも大きな影響を及ぼしている。企業はメーカー、流通、サービスを問わず値上げに走り、名目所得は増加に転じたものの実質所得は物価上昇に追いつかず、消費者は財布のヒモを締めているようだ。人手不足もあって、特に外食業界、とりわけラーメン店への影響は大きく、ラーメン店の倒産・廃業件数が増えている模様である。10%以上の値上げをしても物価上昇に追いつかないばかりか客数を落とし、さらなる値上げをしたくても日常食であるがゆえに「1,000円の壁」に突き当たる。この結果、利益の出づらくなる個人店が増え、加えてコロナ禍の「ゼロゼロ融資の返済」にも追われ、倒産が増加しているということのようだ。他の業態でも、回転寿司やファストフードほか10%を超える値上げとなった店では、客数を落としているところが多いようだ。
一方同社は、コロナ禍~物価上昇という厳しい事業環境のなかでも、出店や新ブランド開発など積極的な事業展開を推進するとともに利益追求の経営姿勢を貫き、客数を増やしつつ好業績を続けている。業績の詳細は後述するが、同社は値上げを原価上昇分に限定しているため値上げ率が数%に過ぎず、大きく値上げした店に対し、味・品質・サービスといった点でコストパフォーマンスが相対的に大きく向上、これが客数増加の要因になったと理解できる。一方、重要テーマに沿った取り組みを進めることで一層筋肉体質となり、売上総利益率の低下や人手不足を吸収、好業績を続けることができたのである。実際、「山岡家」(丸千代山岡家<3399>)や「丸源」(物語コーポレーション<3097>)といった、値上げを小幅に留めたラーメンチェーンの業績も相対的に順調のようだ。
このことのインプリケーションとして、長年個人店中心だった日常食としてのラーメン業界も、チェーンストアへの集約が進んでいくことを示唆しているかもしれない。ラーメン業界は、ここ30年デフレを前提に旨くて安いビジネスモデルを組んできた。しかし、今後インフレが続くとすると、原価上昇を吸収できないビジネスは破綻することが懸念される。これに対して、原価上昇を吸収できる仕組みがチェーンストアシステムである。チェーンストアシステムのことをデフレの元凶と言う人もいるが、もともと戦後の傾斜生産方式のなか、消費者の生活を近代化することを目的とした「流通革命」を推進する仕組みであって、高度経済成長を消費側からけん引した。つまり、デフレ期に価格を引き下げることで消費者の生活を守ったチェーンストアシステムが、インフレ期には原価上昇を吸収して日常食を守ることになると考えられる。そうなると、ホテルの味やサービスを消費者の身近なものにした「すかいらーく」から「サイゼリヤ」などへ至る譜系や、高価な素材を日常食として提供した回転寿司の勃興により街の立ち寿司が激減した流れなどと符合する。したがって今回の物価上昇を機に、ラーメン業界の日常食の担い手が、個人店からチェーンストア中心にシフトしていくことになるかもしれないということだ。いずれにしろ同社にとって追い風と言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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