3. 中期事業計画の成長戦略
同社グループでは、長期事業計画の達成に向けて、今後3年間の中期事業計画を策定した。ジェネリック医薬品業界では、医療費の適正化に向けて市場の拡大が見込まれる。すなわち、ジェネリック医薬品の使用促進を進めるため、2024年3月14日に開催された「社会保障審議会(医療保険部会)」において、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の金額シェアを2023年度の56.7%から2029年度末までに65%以上とする」新目標が設定された。また、2024年10月1日よりジェネリック医薬品が販売されている先発医薬品である長期収載品に対して選定療養の仕組みが導入され、対象となる医薬品においてはジェネリック医薬品との差額の4分の1は患者負担が増えることになるため、今後はジェネリック医薬品の使用が促進されることが想定される。これらのジェネリック医薬品の促進策により、さらなる市場の拡大が見込まれている。
このような事業環境を前提に、原薬セグメントの中期事業戦略としては、(1) 新規収載品や長期収載品、既存品のシェア拡大等をターゲットとした新規採用活動促進(新しいジェネリック医薬品を取り扱うために、厚生労働省の承認を得る準備活動)、(2) 海外サプライヤーとの関係性強化、(3) 「医薬品専門商社」「モダリティ革命」に向けた対応、(4) 製販のベストパートナーとしての医薬分析センター及び品質保証機能の活用、(5) グループ間のシナジー効果の具体的施策の実施、などを掲げる。そして、成長が見込める新規収載品を中心に新規採用活動を進めるとともに、既存品の新規採用やシェア拡大、長期収載品の増加を目指す。
一方、医薬品セグメントの中期事業戦略では、ESGに配慮し、開発から製造まで開発提案型の受託事業(CDMO)による持続的成長、医薬品倉庫及び製造設備投資により安心・安全な医薬品の安定供給体制の構築を目指す。その実現に向けて、(1) 業務全般にわたるコンプライアンス意識の向上、(2) 開発提案型の受託事業戦略推進、(3) 蔵王工場受託事業の本格展開、(4) グループシナジーの強化による新規開発検討、(5) 人への投資を積極的に行い人材の育成強化並びに登用により医薬品製造販売業を行う責任体質強化、(6) 経営計画に基づく投資計画、修繕計画による安心・安全な医薬品の安定供給、(7) 企業指標を踏まえた適正価格販売、などを掲げる。工場別には、蔵王工場においては、シリンジラインでは、医療現場で高評価な「マキサカルシトール」について市場ニーズに応え安定的にシェア拡大を進めるため、さらなる増産を予定する。また、バイアルラインでは、抗がん剤「ベンダムスチン塩酸塩」を2024年6月より販売開始している。さらに、蔵王第2工場建設に向けて新規受託獲得を推進する。一方、本社工場では、炭酸ランタンは薬価改定により減少見込みで、今後の利益確保が課題である。また、「セファゾリン」等のその他の注射剤の拡販を目指す。
4. 信頼への取り組みとサステナビリティ活動
ジェネリック医薬品業界では、2022年5月頃に睡眠導入剤の混入や不適合錠剤の再加工などの品質不正や法令違反が続出し、製薬会社の行政処分が相次いだ。同社グループでは適正に対応していたが、今後も信頼を確かなものにするために、自己点検や内部監査室と専門家による監査、当局による査察や顧客による監査など、法令遵守、品質管理のチェック体制を維持する方針だ。
同社グループでは、製造管理や品質管理の強化のために、グループ各社間における無通告監査(抜き打ちの立ち入り監査)や、実地調査に赴くことができない海外製造所等へのリモート監査の実施、グループ各社で製造販売承認書と製造実態の齟齬にかかる一斉点検の実施等を継続する。情報公開については医薬品製造販売事業に属するコーアイセイとコーアバイオテックベイの各社Webサイトにて、安定供給に関連する情報を公表している。
また、同社グループはサステナビリティ活動にも注力している。人々の生命・健康に深く関わる企業として、様々な社会課題に真摯に向き合いながら事業活動を推進することで、企業価値を向上させ「持続可能な社会の実現」に貢献することを目指している。社会への関連性と企業活動や事業へのインパクトを考えて、事業や事業課題に関わるマテリアリティ(重要課題)を特定し取り組んでいる。具体的には、E(Enviroment:環境)では、スコープ1、2のGHG排出量(大気中に放出された温室効果ガスの量)を測定し会社公式サイト上で「ESG Data2023」を公開している。S(Social:社会)では、残業の抑制、女性活躍の推進(女性取締役比率27.3%)、管理職研修や経営者向け研修などを実施している。G(Governance:企業統治)では、コンプライアンス研修の実施、指名・報酬諮問委員会活動の推進などに取り組んでいる。近年、欧州を中心に、財務情報だけでなく企業のESGへの取り組みに基づいて投資先を選定するESG投資が増加しており、日本でも同様に急増している。その意味でも、同社グループにおける今後のサステナビリティ活動の進展が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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