1. 2024年6月期の業績概要
2024年6月期の連結業績は、売上高で前期比0.4%増の22,134百万円、営業利益で同3.1%増の4.382百万円、経常利益で同6.7%増の4,368百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同9.6%増の2,946百万円と、増収増益であった。その結果、営業利益率は同0.5ポイント上昇の19.8%に改善した。2023年6月期決算発表時の計画比では、売上高は3.7%下回ったものの、営業利益及び経常利益はおおむね計画どおり、親会社株主に帰属する当期純利益は6.4%上回った。売上高が計画を下回ったのは、原薬セグメントの減収が影響したことによる。また、親会社株主に帰属する当期純利益が計画を上回ったのは、2024年6月の公募増資により社長及び社長の資産管理会社の株式保有比率が50%を下回ったことで、オーナー系企業に課される留保金課税が対象外となり税負担が減少したことによる。また、減価償却費は前期比4.9%増の726百万円、研究開発費は同17.9%増の132百万円であった。一方、設備投資額は医薬品セグメントの医薬品倉庫や原薬セグメントの大阪分析センター改修工事、危険物倉庫建設等を行ったことから同227.2%増の1,348百万円と前期を大きく上回っており、同社グループが成長方向に向かっていると判断できる。
2024年6月期において日本経済は、経済活動の正常化が進み企業収益や雇用情勢が改善するなかで緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、燃料・資源価格の高騰、欧米諸国の金融引き締め政策による円安の進行等により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いた。円安の影響は原料等の仕入価格が変動するリスクがあるが、原薬セグメントでは、必要に応じ為替予約を行うことや、海外サプライヤーへの価格交渉、得意先への為替連動型の価格設定への切替等を進め、また医薬品セグメントでは、コスト削減や販売価格の見直しに加えて、量産体制を推進し生産量を増大させること等により生産効率の向上を図った。
医薬品セグメントの好調が、原薬セグメントの不振をカバー
2.事業セグメント別動向
(1) 原薬セグメント
原薬セグメント(原薬販売事業)においては、新規品目はシェア拡大や得意先での開発の進捗に合わせた販売数量の増加があり堅調に推移した。しかし、既存品を中心に得意先の方針変更による在庫調整や行政処分等による得意先の販売量減、競合原薬の採用による受注量減等で減収となった。一方、利益率の高い傾向にある新規品目の売上増加に伴い増益となり、利益率も向上した。為替影響は為替予約、サプライヤーとの交渉、為替連動取引等によりヘッジしている。以上から、売上高(セグメント間の内部売上高又は振替高を控除前、以下同)は15,455百万円(前期比3.4%減)であったが、営業利益(セグメント間取引の消去及び全社費用を控除前、以下同)は2,769百万円(同1.5%増)で、売上高・営業利益ともに期初の計画を下回った。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高(内販)1,721百万円を含んでいる。以上の結果、営業利益率は17.9%(同0.9ポイント上昇)となった。
(2) 医薬品セグメント
医薬品セグメント(医薬品製造販売事業)においては、注射剤の主力製品が増産により販売数量を大幅に増やしたことや、同業他社の販売中止等による代替需要により一部の既存品が好調に推移したことで増収となった。また、生産量増加や収率(合成・精製・改修などで、理論的に予想される目的物質の量に対して、実際に得られた量の割合)等生産性の改善等により利益率が向上した一方、第4四半期において一部生産計画の調整が必要になったことや蔵王工場の定期メンテナンスが長引いたこと等により、予定していた製品出荷の遅延や追加コストの発生等があり、他の四半期ほど伸びなかった。以上から、売上高は8,399百万円(前期比6.5%増)、営業利益は1,699百万円(同10.8%増)で、売上高・営業利益はともに期初計画を上回り、原薬セグメントの不振をカバーした。また、営業利益率は20.2%(同0.8ポイント上昇)となった。医薬品セグメントの営業利益率が相対的に高いのは、医薬品の品目を集約していることが一因である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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