今週の新興市場は下落。主要各国中央銀行による利上げ長期化機運の高まりに加え、週末の間に台頭したロシア情勢を巡る地政学リスクの台頭も背景に、先行き不透明感が強まるなか週前半は下落が続いた。一方、週後半は日経平均が33000円を回復するなか、新興株も持ち直した。また、欧州中央銀行(ECB)フォーラムの討論会で欧米中銀総裁らの発言が無難なものに終わった一方、日本銀行の植田和男総裁が金融緩和継続を主張したことも支援材料になった。ただ週前半の下落を埋めることはできなかった。なお、今週の騰落率は、日経平均が+1.24%だったのに対し、マザーズ指数は-1.72%、東証グロース市場指数は-1.55%だった。
個別では、時価総額上位20銘柄のうち週間で上昇したのは4銘柄に限られ、全般が売り優勢となった。うち上昇した1銘柄であるAnyMind Group<5027>は目立った材料はなかったが、前週から勢いづいている株価に対し、値動きの良さに着目した買いが入ったもようで、週間で+29.7%と上昇し、週間上昇率ランキングで2位に入った。上昇率上位にはほかフルッタフルッタ<2586>、ELEMENTS<5246>、スマートドライブ<5137>、Waqoo<4937>などが入った。いずれも特段の材料はなかったが、値動きの良さなどテクニカル要因での買いが活発化したようだ。
一方、下落率上位にはリアルゲイト<5532>、アイデミー<5577>、Globee<5575>など直近の新規株式公開(IPO)銘柄がいくつか入った。6月以降のIPO銘柄の公開価格比での初値騰落率は概ね好調ではあるが、今週は公開価格割れの銘柄も散見されるなど、次第に投資家の選別する動きが見られている。初値形成後においても買われる銘柄と売られる銘柄の二極化が鮮明になってきている。
■コアPCEの鈍化で目先の安心感、IPO3銘柄
来週の新興市場は強含みか。今週末に発表された米5月個人消費支出(PCE)コアデフレーターは前年同月比で市場予想を小幅ながら下回った。米経済指標の上振れやパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の追加利上げ発言を背景に、米10年債利回りは29日、3.84%と3月上旬以来の高値を記録。金利先高観が気がかりになっていたが、目先の安心感から新興株の支援材料になりそうだ。マザーズ指数も25日移動平均線までの調整を経て足元でリバウンド基調を強めつつあり、テクニカル的にも来週は続伸が期待できそうだ。
一方、米雇用統計が発表されるため、週末にかけては手仕舞い売りなどに注意したい。ただ、来週は米中の経済指標のほか、週末には安川電機<6506>の決算、上場投資信託(ETF)運用会社の分配金捻出に伴う換金売りなど材料が多いため、東証プライムの主力銘柄については積極的な買いが手控えられると想定される。このため、週半ばまでは幕間繋ぎの物色で新興株に優位な地合いが予想される。
来週も新規株式公開(IPO)が3社あるが、航空機エンジン部品などの製造を手掛けるAeroEdge<7409>、人工知能(AI)を用いた計画最適化システムの開発を手掛けるグリッド<5582>の2社が特に注目されそうだ。
個別では幕間繋ぎの物色が想定されるなか、テーマ性や好業績を強みに初値形成後も値動きが堅調なABEJA<5574>、W TOKYO<9159>、ARアドバンストテクノロジ<5578>、売りに一巡感がみられるアイデミー<5577>などの直近IPOに注目したい。
<FA>
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